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『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社文庫)を読む。
母から長年にわたり精神的・身体的な支配を受けて育った娘が、医学部進学への強い期待のなか、9年に及ぶ浪人生活の末に母を殺害した事件を描くノンフィクションです。
母の価値観や言葉は次第に娘の内面に入り込み、「こうあるべき」という声となって自我を縛っていきます。その関係の歪みが、やがて母殺しを生み出してしまいました。
本書で印象的なのは父親の存在です。娘は殺害の事実を隠していたにもかかわらず、父は拘置所に面会に訪れます。理由を問われると、「家族だから」と語ります。その一言は、母娘の「呪縛」とは異なる、もう一つの家族のかたちを浮かび上がらせます。
そのうえで父は、「自分と俺は家族だから」と続けます。娘を「自分」と呼ぶその距離感のある言葉に、家族でありながらも一人の人間として向き合おうとする姿勢がにじみます。
家族とは何かを考えさせられる一冊です。
