【保存版】2026年音楽トレンド: 世界の音楽メディアをスキャンして見えた、次世代のスター18組と3つの潮流、そして分断
はじめに
音楽のトレンドサイクルは年々、いや月単位、週単位で加速しています。 TikTokでの一瞬のバイラル、AIによる無限に近い楽曲生成、そして次々と現れては消えるマイクロジャンルのリバイバル。
かつては数年単位で動いていた「時代感」が、今や月単位、週単位で塗り替えられています。何が「本物」で、何が一過性なのかを見極めるのは、プロのキュレーターでさえ困難な時代になっているのではないでしょうか。
そこで今回、私はある実験をしました。
BBC(イギリスの公共放送)、The FADER(アメリカの先鋭カルチャー誌)、Hypebae(グローバルなライフスタイルメディア)、音楽ナタリー(日本の現場視点)といった主要音楽(やその他)メディアのリストに加え、Hypebot、Epidemic Sound、LANDRといった音楽テック企業による「2026年の音楽を占うレポート」を、片っ端からAIに読み込ませて、一緒に未来を深掘りしてみた、のです。
膨大なリストとデータをAIと共に横断的に分析・対話すると、そこには単なる「流行りそうなアーティスト」の羅列ではなく、2026年の音楽シーンを形作る「3つの潮流」が浮かび上がってきました。
この記事では、それらのキーワードを軸に、今年、そして来年以降に重要になっていきそうなアーティスト18組を紹介します。音楽ファンとしてのディスカバリーガイドとしてはもちろん、ビジネスやクリエイティブのヒントとしてもお読みいただけると幸いです。
🎧 プレイリスト:Waves of 2026
本稿で紹介するアーティストを中心に、「2026年のバイブス」として抽出した楽曲を編纂した特製プレイリストを公開しました。テキストを読む前に、あるいは読みながら、「音」で未来の輪郭を体験してみてください。
2026年を象徴する「3つのキーワード」
個別のアーティスト紹介に入る前に、世界が今どこに向かっているのか、AIとの分析で抽出された3つの全体像を整理します。
これらは独立しているのではなく、相互に深く関連し合いながら、新しい音楽カルチャーの地層を形成しています。
A. Hyper-Human (超・人間回帰:不完全さという贅沢)

AI技術の爆発的進化により、誰もが「完璧なメロディ」を数秒で作れるようになりました。しかし、完璧さが供給過多になった結果、強烈な揺り戻し(反動)が起きています。
Hypebotなどの予測でも指摘されている通り、「声のわずかな揺らぎ」「生楽器の指の摩擦音」「あえてクリックに合わせないリズム」といった、AIには模倣しきれない「Raw Creativity(生の創造性)」が、2026年において最も価値のある資産となっています。
これは単なるアコースティックへの回帰ではなく、デジタル全盛の時代にあえて「ノイズ」をラグジュアリーとして提示する、極めて現代的なものの見方だと思います。
B. Post-Genre & Collage (ジャンル溶解と再構築の美学)

Z世代以下のリスナーにとって、「ロック」や「ヒップホップ」という既存の棚分けはもはや意味をなしません。 彼ら/彼女らの耳はアルゴリズムによって極限まで多様化しており、EmoとAfrobeatsが隣り合い、JazzとDrillがシームレスに融合しています。
例えば2026年は、かつてSoundCloud上のサブカルチャーだった「PluggnB」がメインストリームに完全に定着した年として記憶されるでしょう。既存の文脈を自由に解体し、コラージュすることで生まれる「心地よい違和感」こそが、新しいヒットの方程式となっています。
C. Glocal Sounds (ローカルの逆襲:ボーダーレス化の極致)

英語圏のポップスだけが「世界標準」である時代は、名実ともに終焉を迎えました。 中東のアラビック・ポップ、ベトナムのバイラル・ヒット、そして日本のシューゲイザー。
これまで「ワールドミュージック」として一括りにされていたローカルな響きが、無理に英語へ翻訳されることなく、オリジナルの言語のまま世界中で熱狂的に消費されています。非英語圏のサンプルパック需要は前年比で激増しており、地域固有のグルーヴがグローバルチャートの核となる「Glocal(グローカル)」な時代が到来しています。
それでは、目次をはさんで、具体的にアーティストをご紹介していきます。
注目アーティスト厳選ガイド
ここからは、上記のトレンドを体現する重要アーティストをピックアップして紹介します。
Amazonにも特設ページを作りました。
本記事で紹介するいくつかの作品をピックしています。
A.【Human Touch】圧倒的な「声」と「物語」
テクノロジー全盛の今だからこそ求められる、画面越しでも体温や息遣いを感じさせるような「生身の歌声」を持つアーティストたちです。
Skye Newman (UK)
Source: BBC Sound of 2026 (Winner) / Rolling Stone UK / Sony Music UK
Origin: South London
【概要と視点】今年のBBC「Sound of 2026」の勝者です。過去にアデルやサム・スミスを輩出したこの賞の勝者らしく、彼女の最大の武器はギミックなしの「圧倒的なボーカル」です。 サウスロンドンの団地(Council Estate)で育ったという背景を持ち、自身のトラウマや痛みを包み隠さず綴る歌詞が多くの共感を呼んでいます。
Rolling Stone UKのインタビューで彼女は、歌うこと、そしてスタジオにいる時間を「唯一の安全地帯(Safe Space)」と語っています。その切実さが、整音されたポップスにはない重みを歌声に与えています。
デビューシングルの時点で全英トップ20入りを果たすなど、数字の面でも既に結果を出しており、ルイス・キャパルディのツアーサポートで培ったライブの実力も本物。「AIには描けない物語」を歌える人が、やはり最後は勝つのだと思わされます。
Dove Ellis (Ireland)
Source: The FADER, The Independent, Spotify
Origin: Galway, Ireland (現在はマンチェスター拠点)
【概要と視点】The FADERが「捉えどころのない(elusive)インディーロック・シンガー」と評する、20代前半のシンガーソングライター。
カメラを避ける内向的な性格で知られていますが、その音楽はジェフ・バックリィにも例えられる「独特な声」と、70年代のインディーロックを彷彿とさせる親密でドリーミーな響きを特徴としています。 2025年末にデビューアルバム『Blizzard』をリリースし、Geeseのツアーサポートも務めました。The Independentは、彼の音楽を「パンクとチェンバー・ポップ(室内楽ポップ)の中間」に位置する抽象的なソングライティングと評し、Perfume GeniusやGeeseと比較しています。静寂と爆音を行き来するダイナミズムと、少し外したような(off-kilter)独特な歌唱法が、聴く者に強烈な「人間味」と印象を残します。
Jacob Alon (UK)
Source: Official Charts
Origin: Fife, Scotland
【概要と視点】スコットランドのファイフ出身。BBC Introducingの「Artist Of The Year」をスコットランド人として初めて受賞した実力派シンガー。
デビューアルバム『In Limerence』は権威あるマーキュリー・プライズのショートリストに選出されたほか、BRITs 2026の「Critics' Choice(批評家賞)」にもノミネートされるなど、批評家筋からの評価が極めて高いそう。
Official Chartsの独占インタビューでは、すでに2ndアルバムの制作を開始していることを明かしています。繊細な歌声と内省的な作品世界で、2026年の音楽賞レースの中心人物になると目されています。
Sofia Isella (US)
Source: The FADER, Affino, Strategic Analysis
Origin: Los Angeles, US / Queensland, Australia
【概要と視点】 ロサンゼルスで育ち、現在はオーストラリアを拠点とするシンガーソングライター兼ヴァイオリニスト。The FADERは彼女を、ビリー・アイリッシュやキキ・ロックウェル(Kiki Rockwell)に通じる「ダークでウィットに富んだ世界観」を持ちながら、それを「女性のエンパワーメント」という強いメッセージに昇華していると評しています。
最大の特徴は、クラシック音楽の素養(ヴァイオリン)をポップ・パフォーマンスに融合させている点です。TikTokではカルト的な熱狂を生み出しており、単なるバイラルヒットにとどまらず、その演劇的で身体性を伴うステージングが、デジタル時代における「本物の体験(Human Touch)」を求めるZ世代リスナーに深く刺さっています。
Absolutely (UK)
Source: The FADER, The Independent, Affino
Origin: UK
【概要と視点】 本名はAbby-Lynn Keen。ポップスターRayeの実妹ですが、メディアは「間もなく彼女自身の名で知られるようになる」とその実力を高く評価しています。
R&B、ポップ、EDMの要素を融合させたサウンドと、The FADERが「パワフルなボーカリスト」と評する圧倒的な歌唱力が武器。息混じりのファルセットから甘美なメリスマ(装飾歌唱)までを自在に操るその催眠的な声は、姉譲りでありながら独自の「夢のような世界(Paracosm)」を構築しています。RayeやReneé Rappのアリーナツアーのサポートにも抜擢。
Sienna Spiro (UK)
Source: Hypebae
Origin: London
【概要と視点】 感度の高いファッション・カルチャーメディア「Hypebae」などが強くプッシュする、20歳のシンガーソングライター。 彼女の特徴は「映画のような(Cinematic)ソングライティング」です。TikTokでのバイラルヒットがきっかけではありますが、彼女が一発屋で終わらないのは、そのバラードが持つ普遍的な強度ゆえでしょう。
派手なプロダクションで着飾るのではなく、ピアノと声だけで空間を支配できる稀有な存在。BGMとして消費される音楽が多い中で、彼女の音楽は「聴くこと」を強制する力を持っています。
夜、一人で静かに過ごす時間に寄り添うような、深い没入感のある歌声は、情報過多で疲弊した現代人の心に深く刺さります。
B. 【Post-Genre】ジャンルをコラージュする新世代
「なぜその音を混ぜた?」と思わず耳を疑うような、新しい違和感と中毒性を作り出すクリエイターたちです。
Jim Legxacy (UK)
Source: BBC Sound of 2026 (2nd) / The FADER
Origin: Lewisham
【概要と視点】 私が個人的にとてもクリエイティブだと感じるのが、BBCで2位にランクインした彼です。ラッパーであり、自らビートメイクもこなすプロデューサー。 彼の手法はまさに「異文化のコラージュ」です。アフロビーツ特有の跳ねるリズムの上に、なぜか2000年代のエモ(Emo)バンドのような哀愁あるギターリフを乗せ、さらにUKラップのフロウを重ねるスタイル。この「文脈の衝突」こそが彼の真骨頂です。
特定のジャンルに縛られず、Spotifyであらゆる時代の音楽を並列に聴いてきた「ストリーミング・ネイティブ世代」の感性をそのまま音にしたような存在。既存の定型的な音楽に飽き足らないリスナーにとっては、今一番刺激的なアーティストでしょう。
Geese (US)
Source: BBC / Hypebae
Origin: Brooklyn
【概要と視点】 「Z世代にとってのThe Strokes」とも評されるブルックリン出身のバンド。 ポストパンクの鋭いエネルギーを持ちながら、どこか脱力していて掴みどころがないのが魅力。
Epidemic Sound等のトレンド予測でも「ロックは死んでいない、眠っていただけだ(Rock wasn’t dead — it was sleeping)」と言及されていますが、彼らは単なる過去の焼き直し(懐古主義)ではありません。 現代的な感性と皮肉でロックを再構築し、デジタルネイティブ世代があえて鳴らす「生のバンドサウンド」として提示しています。
ライブパフォーマンスの熱狂が口コミで広がっている点も、バンドとしての地肩の強さを証明しています。身体性を伴うロックの復権は、バーチャルな体験へのアンチテーゼとして今後さらに加速するはずです。
sombr (US)
Source: BBC, Clash Magazine, Rolling Stone UK, Strategic Analysis
Origin: New York City, US
【概要と視点】ニューヨーク出身のシンガーソングライターで、BBC「Sound of 2026」で第3位に選出されました。本名のイニシャル「SMB」に由来する名前で活動し、2021年にわずか16歳でデビューしています。
2022年に楽曲「Caroline」がバイラルヒットしてレコード契約を獲得し、2025年にリリースされたデビューアルバム『I Barely Know Her』は、その年を代表するアルバムの一つと評されるほどの成功を収めました。
BBCの選評では、彼の音楽を「広がりがあり、テクスチャーが豊かで洗練されている(expansive, textured and slick)」と称賛しています。時代を超越したボーカルと鋭く共感を呼ぶ歌詞が特徴で、デジタルネイティブ世代(Z世代)の孤独や内面世界を美しく切り取る「ダーク・ポップ」の旗手として、2026年のグラミー賞「Best New Artist」候補にも名前が挙がっているのだそう。
The Deep (South Korea)
Source: The FADER
Origin: South Korea
【概要と視点】 韓国といえばK-Popですが、彼女はその巨大な産業のシステムの外側から出てきたインディペンデントな存在。 「Baddie(悪カワイイ)」なビジュアルとアティチュードで、Hyperpop(ハイパーポップ)やUKガラージ、ドラムンベースといったダンスミュージックを乗りこなします。
NewJeans以降のY2Kムードを、よりアンダーグラウンドでエッジの効いた解釈で表現しており、アジアのクラブシーンを牽引するアイコンになりそう。 メインストリームのK-Popとは異なる文脈で、欧米のダンスミュージック・シーンとも共振する「アジアの新しいクール」を体現しています。
Adéla (Slovakia)
Source: Spotify "Artists to Watch 2026", Hypebae, Affino
Origin: Slovakia (スロバキア)
【概要と視点】スロバキア出身、「ハイパーポップ・プリンセス」の異名を持つシンガーです。 もともとは世界的なガールズグループ KATSEYE (HYBE × Geffen)のオーディションで不合格となりましたが、その挫折をバネにソロとしてのキャリアを爆発させました。
Hypebaeは彼女を、かつてのハイパーポップ黄金期を彷彿とさせる「挑発的なダンス、大胆な歌詞、強烈なビジュアル(ピンクの髪がトレードマーク)」を持つアーティストと評しています。 「セックス・セルズ(性的なものは売れる)」という言葉をあえてサブバーシブ(破壊的・反抗的)なモットーとして掲げ、東欧発のWebカルチャーとグローバルなポップスを融合させた中毒性のあるサウンドを展開しています。
デミ・ロヴァートのツアーサポートにも抜擢されるなど、ニッチな存在からメインストリームへと駆け上がりつつあります。
Royel Otis (Australia)
Source: BBC Sound of 2026 (5th), Clash Magazine, Strategic Analysis
Origin: Sydney, Australia
【概要と視点】シドニー出身のインディー・ポップ・デュオです。
BBC「Sound of 2026」で第5位に選出され、Clash Magazineなどの主要メディアでも高く評価されています。
TikTokでのバイラルヒット(映画『Saltburn』に関連したソフィー・エリス・ベクスターのカバーなど)をきっかけに世界的な注目を集めました。しかし、単なるネット上の流行にとどまらず、2025年リリースの2ndアルバム『Hickey』の成功や、人気ドラマ『The Summer I Turned Pretty』の女優ローラ・タンをMVに起用するなど、Z世代のポップカルチャーと巧みにリンクしながらファン層を拡大しています。
ポスト・ジャンル時代の軽快さと、バンドサウンドの身体性を両立させており、上述のGeeseと並んで「ロック復権」の象徴として世界中のフェスティバルで活躍しています。
尚、2026年2月16日には、豊洲PITにて来日公演を予定しています。
C. 【Glocal & Asia】世界が注目する「アジア・中東」の熱量
かつて「ワールドミュージック」と一括りにされていたエリアが、今やトレンドの発信源です。日本を含むアジアや中東のローカルシーンは、世界で最もホットな市場の一つです。
kurayamisaka (Japan)
Source: 音楽ナタリー「今年コレがバズるぞ!2026」(1位)
Origin: Tokyo
【概要と視点】 日本の音楽関係者254人が選ぶランキングで堂々の1位を獲得した、東京拠点の5人組バンド。 ジャンルとしては「シューゲイザー」ですが、実は海外メディア(GuardianやEnvato等)のトレンドレポートでも「Shoegaze」や「Nostalgia(ノスタルジア)」は2026年の最重要ワードとして挙がっています。
轟音ギターの壁(ウォール・オブ・サウンド)と、J-Pop的な良質なメロディの融合。これは日本のインディーロックが、言葉の壁を超えて海外の「シューゲイザー復権」トレンドと完全にリンクした稀有な例です。
日本語の歌詞のまま、世界中の「Dreamy」や「Shoegaze」系プレイリストに入り込むポテンシャルを秘めた、2026年の台風の目になる予感がします。
HANA
Source: officialGF, Strategic Analysis of the Global Music Ecosystem 2026
Origin: Japan
【概要と視点】ラッパー/シンガーの Chanmina(ちゃんみな) がプロデュースを手がける、7人組のガールズグループ。 Chanminaが主催したオーディション番組『No No Girls』から誕生。
このオーディションは「身長、体重、国籍の制限なし」という、従来のアイドル産業の基準を覆す画期的なもので、純粋な「才能と個性」のみで選抜されたメンバーで構成されています。
プロデューサーであるChanmina自身のルーツでもある「日韓のミックス」というアイデンティティを肯定し、「ありのままの姿で愛されていい」「女性が自信を持って踊ることは素晴らしい」といった、自律したエンパワーメントのメッセージを強く発信しています。既存のアイドルの枠に収まらない、強烈な「個」と「自信」を持った、2026年を象徴するブレイクアウト・スターと目されています。
Vũ (Vietnam)
Source: Vietnam Digital Music Landscape Report 2024-2025
Origin: Vietnam
【概要と視点】現地では 「インディーの貴公子(Prince of Indie)」 と称されるシンガーソングライターです。 かつてはニッチだったインディー・シーンをメインストリームへと押し上げた立役者であり、自身のコンサート「Museum of Regret(Bao Tang Cua Nuoi Tiec)」ではハノイとホーチミンで計22,000人を動員するほどの絶大な支持を得ています。
特筆すべきは、その「Glocal」な成功。2024年には香港のバンド Dear Jane とコラボレーションした楽曲「Nhung Loi Hua Bo Quen」が、Spotifyのグローバルチャートで60位、香港チャートで31位を記録しました。物語性の高いメランコリックなバラードで、言葉の壁を越えてアジア全域のリスナーと感情的な繋がり(Human Touch)を築いています。
Tul8te (Egypt)
Source: Arab News
Origin: Egypt
【概要と視点】 今、中東エリアで最も議論を呼び、熱狂を生んでいる覆面アーティストです。 正体不明というミステリアスさに加え、中東特有の旋律と現代的なヒップホップ/ポップスを融合させたサウンドが強烈な中毒性を生んでいます。
かつてナイジェリアのAfrobeatsが世界を席巻したように、次はアラビック・ポップがメインストリームに入ってくる可能性を強く感じさせます。 地域性を隠すのではなく、それを武器にグローバルへ打って出る「Glocal」トレンドの象徴と言えるでしょう。
Young Cister (Chile)
Source: Spotify "Artists to Watch 2026", Strategic Analysis of the Global Music Ecosystem 2026
Origin: Chile
【概要と視点】チリのアーバン・ポップシーンを牽引する存在で、Spotifyの2026年注目リスト(ラテン部門)に選出されています。
Bad Bunny以降、カリブ海を中心に世界的な覇権を握るラテン音楽ですが、その熱狂は南米チリにも飛び火し、次なるスターを生み出しています。彼のスタイルはレゲトンをルーツに持ちつつも、よりメロディアスで洗練されたサウンドプロダクションが特徴。
その音楽は地域的なヒットの枠を超え、グローバルなプレイリストにも採用され始めており、ラテン音楽の新たな震源地としてチリを世界に印象づける重要なアーティストです。
Sabrina
Source: The iMullar
Origin: Yaoundé, Cameroon
【概要と視点】 カメルーンのヤウンデ出身で、「ハイエナジーなアフロポップ・パワーハウス」と評されるアーティスト。 現代的なアフロビーツとカメルーンの伝統的なメロディを融合させ、思わず踊りたくなるようなアンセムを生み出すスタイルが特徴的。
バイリンガルな多才さを持ち、汎アフリカ的な魅力を放っています。 2025年のアルバム『FREELY』では、ドリーミーなプロダクションと、緻密な振り付けを取り入れたハイコンセプトなライブパフォーマンスで評価を確立しました。
Ayra StarrやTiwa Savageのファンにも推奨されており、グローバルなスターダムにのし上がる主要な候補者と目されています。
編集後記:アルゴリズムの「外」と、地図なき音楽世界の歩き方
アルゴリズムより「文脈」を
膨大なデータをAIと共に読み解いて強く感じたのは、「データの民主化と、本物への回帰*という大きな揺り戻しです。
AIや配信ツールのおかげで、誰もが楽曲を発表できるようになりました。しかし、コンテンツが無限に増え、AIが「それっぽい曲」を量産できるようになったからこそ、Skye Newmanのような「圧倒的な人間力(ボーカル)」や、Jim Legxacyのような「文脈の面白さ」、kurayamisakaのような「バンドの熱量」といった、データ化しにくい部分が逆に高い価値を持ち始めています。
ストリーミングサービスのアルゴリズムにおすすめされるまま聴くのも楽ですが、こうして「なぜ今、この音が鳴っているのか?」という背景や文脈を知ってから聴くと、音楽はもっと立体的で面白くなります。
2026年は、テクノロジーと人間味が衝突し合いながら、新しい「クラシック」が生まれる刺激的な年になりそうです。皆さんの「推し」は見つかりましたか?
「データの民主化と、本物への回帰」
膨大なデータをAIと共に読み解いて最初に強く感じたのは、この大きな揺り戻しでした。AIや配信ツールのおかげで、誰もが楽曲を発表できるようになりました。
しかし、コンテンツが無限に増え、AIが「それっぽい曲」を量産できるようになったからこそ、Skye Newmanのような「圧倒的な人間力(ボーカル)」や、Jim Legxacyのような「文脈の面白さ」、kurayamisakaのような「バンドの熱量」といった、データ化しにくい部分が価値を強めています。
「グローバル」という言葉の限界と幻滅
しかし、世界中のレポートを精査する中で、ある種の「幻滅」も感じました。それは「結局のところ、US・UKの声が大きすぎる」という事実です。
「グローカルな音楽シーン」という美しい言葉とは裏腹に、BBC(英)やThe FADER(米)が選ぶアーティストが依然としてまだまだ「世界の正解」として扱われ、Spotifyのグローバルチャートやグラミー賞も、その重力圏から完全には逃れられていません。そして、Spotifyアルゴリズムに沿って音楽を聴いている限り、私たちもこの引力から自由になることはできません。
同様に、日本のメディアに目を向けても日本のアーティストを中心に扱うメディアと、グローバルな音楽を扱うメディアには未だに大きな分断があります(音楽は国境を簡単に超えるにもかかわらず)。
「分断」されているのは音楽ではなく「メディア」
• 日本の『音楽ナタリー』は日本のロックを
• ガーナの『iMullar』はアフリカのビートを
• ヨーロッパの『Xceed』は電子音楽を
それぞれが熱心に語りますが、それらを縦横無尽に、破壊的にキュレーションする「真のグローバルメディア」は存在しません。今回のリサーチでも、それぞれの国のレポートをAIで無理やり繋ぎ合わせることでしか、世界地図を描くことはできませんでした。(その世界地図ですら、いびつで、限界があります)
誰が「文脈」を編むのか
現状、こうした壁を越えてボトムアップ的にキュレーションを行っているのは、Submithubのようなプラットフォームがかろうじて機能している程度ではないでしょうか。※Submithub: アーティスト自身が投稿した曲がピアレビューでランキング化される機能がある
既存の巨大メディアも、アルゴリズムも、まだこの「分断」を解決できていません。だからこそ、私たちリスナー一人ひとりが、アルゴリズムにおすすめされるまま聴く安楽さを捨て、自らの足で分断されたメディアの境界線をまたいでいく必要があります。
「なぜ今、この音が鳴っているのか?」という背景や文脈を知り、異なる点と点を自分の感性で繋ぎ合わせること。それこそが、2026年の音楽を「立体的」に楽しむ唯一の方法かもしれません。
テクノロジーと人間味、そして大きな声とローカルの熱狂が衝突し合う2026年。その混沌の中で、あなただけの「推し」を見つける旅に出かけてみてください。今回のプレイリストがその一助になれば幸いです。
今回参照したソースメディアについて
情報の信頼性を担保するために、今回リサーチ(およびAIとの解析)に使用した主なメディアを紹介しておきます。
それぞれのメディアに「推し」の傾向があるのも面白い点です。限界はありますが、これらのメディアを定点観測するだけでも、一定程度世界の流れが見えてきます。
1: グローバルメインストリーム指標
BBC Radio 1 "Sound of 2026": 新人発掘の世界的最高権威。Skye Newmanの優勝を含む全ロングリストを分析。(https://www.bbc.com/mediacentre/2025/radio-1-sound-of-2026)
Official Charts (UK): 「Ones To Watch 2026」リストを参照。(https://www.officialcharts.com/chart-news/official-charts-ones-to-watch-2026/)
Rolling Stone UK: アーティストへの独占インタビューおよび2026年グラミー予測記事。(https://www.rollingstone.co.uk)
The Independent / The Guardian: 2026年の注目バンドおよびソロアーティストTOP10。(https://www.independent.co.uk / https://www.theguardian.com/uk/music)
Clash Magazine: 次世代の波(Next Wave)と新人賞結果の速報。(https://www.clashmusic.com)bbc
Spotify Editorial: 「Artists to Watch 2026」および各ジャンル別(Latin, Pop, R&B, Rock)公式プレイリスト。(https://open.spotify.com/editorial / https://artiststowatch.spotify.com)bbc
2: 先鋭カルチャー・ライフスタイルメディア
The FADER: 2026年の注目アーティスト(Feng, Dove Ellis等)およびエッジな才能の深掘り。(https://www.thefader.com/2025/12/22/artists-to-watch-2026-feng-dove-ellis-sofia-isella-and-more)
Hypebae: ファッション・カルチャー視点での次世代女性アイコン選出。(https://hypebae.com)
Xceed: 2026年に注目すべきエレクトロニック・ミュージック・アーティスト10選。(https://xceed.me)
Get In Her Ears (GIHE): 女性・ノンバイナリーのアーティストに焦点を当てた2026年予測。(https://getinherears.com)
3: 音楽テック・産業予測レポート
Hypebot: 音楽配信、マーケティング、AI等の2026年音楽業界予測ラウンドアップ。(https://www.hypebot.com)
Epidemic Sound: 2026年の6つの主要トレンド(PluggnB、オーガニックサウンド等)。(https://www.epidemicsound.com/blog)
LANDR: サンプルパックの利用データから見る2026年制作トレンド予測。(https://blog.landr.com)
Synchtank: 音楽とメディアの未来、同期(Sync)ライセンスのトレンド分析。(https://www.synchtank.com/blog)
Octiive: 音楽産業の構造変化に関する2026年予測。(https://www.octiive.com/blog)
Envato: ハイブリッドサウンド、ノスタルジア、AI統合に関する制作トレンド。(https://envato.com/blog / https://elements.envato.com/blog)bbc
4: 地域別・ジャンル特化型メディア
音楽ナタリー (Japan): 音楽関係者254人が選んだ「今年コレがバズるぞ!2026」。(https://natalie.mu/music)
Buzzrhythm 02 (バズリズム02): 日本のテレビ番組によるブレイク予測ランキング。(https://www.ntv.co.jp/buzzrhythm)
Asian Tones: アジア系コミュニティ10団体(Asian Nation, ESEA Music等)による「Ones To Watch 2026」。(https://asiantones.com)
LiFTED Asia: アジアのヒップホップ・R&Bシーンにおける2026年予測。(https://liftedasia.com)
Arab News (Middle East): 中東から世界へ進出するアラブのシンガー6選。(https://www.arabnews.com)
The iMullar (Africa): アフリカの新興才能を網羅した「Ones To Watch 2026」。(https://www.theimullar.com)
Zikoko! (Africa): アフロビーツの世界的覇権と未来に関する分析。(https://www.zikoko.com)
Vietnam Digital Music Landscape: RMIT大学およびユニバーサルミュージックによるベトナム市場分析。(https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5331358)
5: コミュニティ・専門ブログ
Hype Machine: 多数の音楽ブログを統合したトレンド・インデックスの分析。(https://hypem.com)
official GF blog: 日本のインディー・ロックシーンにおける独自のリサーチ。(https://goodfreaks.net/blog)
Stefan's Naturally Aspirated Blog (Affino): 音楽ビジネスとAIの長期予測。(https://www.affino.com/blog/steffan/naturally-aspirated)
Reddit (r/japanesemusic, r/kpop, r/Music): リスナーによるバイラル予測およびコミュニティでの議論。(https://www.reddit.com/r/japanesemusic / https://www.reddit.com/r/kpop / https://www.reddit.com/r/Music)
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