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緑に輝く宝石をたべる|34歳、離婚後のマッチングアプリ日記

秋の和食が大好きだ。栗に秋刀魚、きのこ、とお目当ての食材は数あれど「きょう食べれたらいいな〜」と、お店に行く前から楽しみにしていたのは「銀杏」である。

学生時代アルバイトをしていたBAR「アフターザレイン」で、冬になると塩炒り銀杏がメニューに加わる。パチンパチンと銀杏用の殻割り器でヒビを入れ、カウンターの卓上コンロに置かれた塩入りのフライパンで熱を加える。

もう食べられるかどうか、一粒たべておいしくできていれば、お客さんのカウンターに殻容れと一緒に出す。

そうしているうちにすっかり大好きになってしまった。殻を剥き、薄皮をはがした銀杏はまるで宝石のように輝いている。

好き過ぎて一時期家でも銀杏を炒って日本酒とよろしくやっていたが、銀杏はいうてナッツである。量を食べすぎるとニキビができ、腸内環境が荒れる。

家で食べるのはやめる代わりに、お店にあったら頼んでいいルールとした。

マッチングアプリで出会った人と2回目のデート。好きなエリアと食の趣味が合うのはとても楽しい。昔わたしが住んでいたお気に入りのエリアに行きたいと言ったら、なんと時期は違えど元ご近所さんだった。やっぱいいよね〜この辺り。

お店の入り口の看板に「銀杏」の二文字があるのを見逃さなかった。

大将の前のカウンター席に座り、次々とお皿に置かれる料理を眺める。

あけびの天ぷらにいちじくの風呂吹き大根。果実のひと皿が次々に盛り付けられていく。

ひとりでつくる調理場が大好きだ。
料理をつくる人の腕が4本くらいに見えて、なんの無駄もない動線と、喋りながら手を動かす様はいつも美しいなと思ってみてしまう。

金の百合の根とむかご

百合の根とむかごがあったので頼んだ。自家製のカラスミがかけられていた。
ホクホクとした素朴な百合の根とむかご。これだけで十分おいしいのに、そこにカラスミがかけられる。東京だ。きらびやかで輝いている。
百合の根は上品なフライドポテトみたい。ひとつも悪いところがないフライドポテト。自分じゃ上手に扱える気がしない、高貴な存在。

対してむかごは多少雑に扱っても美味しく食べられる気がする。今度むかごご飯を炊こうかな。

メニューを見ているだけで、あぁ今年はあれを作ってないな、これを食べてないなと思う。
新生姜の炊き込みご飯があるのを見て、今月どこかで作ろうと決めた。

帆立の貝殻の上で、帆立と木の子と雲丹が焼かれていた。なんともいえない色気を感じるのは武田久美子のせいだと思う。

器も全部すきだった

なかでも一番美味しかったのは先付ででてきた「焼き胡麻豆腐」。
外はカリッと中はもちっと。温かさとともに胡麻の香ばしい香りと柚子胡椒が鼻の中を通る。目を閉じて深呼吸した。先付でこれがでるのは正直ずるい。

そしてお目当ての銀杏は、緑色に輝く宝石だった。
美味し過ぎて気づいたらほとんどひとりで食べたんじゃないかと不安になる。

不安といえば、マッチングアプリをしていて「みんなどうしてるんだろう?」と思ったのが、その人が本当に実存するのかという問題だ。みんな疑問に思わないのだろうか。経歴詐称とか、所属の詐称とか、やろうと思えばできるじゃない?

ネットで検索したら名前がヒットするのが当たり前だと思っていたが、世の中そうではないらしい。何人か会ったけど「Twitterやってない」と言った人もいたし、検索して名前が出るのは銀杏を一緒にたべた人だけだった。

そして我々は各所SNSでフレンドになった。共通の友人が何人かいた。なんだか嬉しかった。

離婚ハイの私は今やらねば一生やらぬ気がすると、「やったことがないから」という理由でマッチングアプリをやった。なのにいい人に出会えて幸せだなと思う。

noteも読んでくれていて2回目のごはんで、すでにわたしの病気のことまで把握していた。

ドライアイでしぱしぱした目をしていたのだろう。「ココカラファインが近くにあるから目薬を買いに行こうか」と薬局に連れて行ってくれた。そのやさしさだけで「え、すき」となった。欲しかったやさしさに触れていた。

好きとか嫌いとかは心理的・身体的(主に脳)反応であるものの、信頼できるかは行動をみるしかない。それはとてつもなく時間のかかることだ。

ただ若い頃と違って一気に恋愛を進めなくていい余裕が大人にはある。互いに「仮の場」で様子を見ることはむしろ健全ではなかろうか。

「信頼」を時間の中で見守ること。信頼は行動の積み重ねでしか測れません。焦らず、相手の小さな行為を観察し、自分がどのように反応するのかを丁寧に感じ取ってみたい。

2度目の離婚を経てトラウマ治療をし、新しいバージョンにアップデートされた私は、言わば赤ちゃんのようなものだ。ゼロから関係を学んでいる途中。試行錯誤を許し、甘えや不安も自然なものとして受け入れていく。

だから、恋愛のならし保育が必要だと思う。正社員だって半年は試用期間があるじゃない? 恋愛だって試用期間が必要だと思う。インターン制度がほしい。

突然の「え、すきかも?」に困惑し、動揺が隠せない私はピルを飲んでいるにも関わらず生理がきた。子宮よ、子宮。しっかりしてくれい。

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