銀河鉄道ソラの旅第一話 いつかの願いを叶える列車
プロローグ
いつの頃からか――
この宇宙を飛ぶ汽車は存在していた。
それはどの文明よりも静かに、
どの神話よりも確かに、銀河を越えて走り続けている。
チケットは、その惑星に住む者の最も純粋な感情の願いに応じて生まれる。
形にならなかった祈り。
胸の奥で消えかけた想い。
それらは紙片となり、
この汽車の燃料となる。
汽車はチケットを座標にし、
願いの主のもとへ向かう。
対価として――
その者の願いを叶えるために。
人々は自然と、
この汽車を「銀河鉄道」と呼ぶようになっていた。
第一章
中学2年となった僕、ヒロは、春休みに田舎へ帰省していた。
都会とは違う、ゆっくりとした時間。
少し冷たい春風と、咲き始めた桜。
そんな穏やかな日だった。
その時。
線路の向こうに、小さな影が見えた。
車両に轢かれそうな猫。
考えるより先に、身体が動いていた。
「気をつけろよ お前 」
腕を伸ばし、ぎりぎりのところで猫を抱き上げる。
「にゃ〜ん」
猫は驚きながらも、僕の顔を見上げた。
そして、お礼を言うように軽く頭を下げると、そのまま去っていった。
なんだよ、律儀なやつだな。
名前も知らない。ただの“猫”。
その時は、それで十分だった。
その日の夜。
銭湯の帰り道。
昼間に助けた猫が、再び僕の前に現れた。
口に何かをくわえている。
近づいてきて、受け取れと言うように顔を差し出してきた。
「なんだ、お前 コレを僕にくれるのか?」
拾い上げると、それは一枚のチケットだった。
見たこともない紙質。
そこに書かれている文字。
銀河鉄道ソラの旅 1日体験ツアー?
なんじゃ こりゃ? 裏に時間も場所も 書いてるし ここから近い駅じゃないか」
いたずらにしては妙に具体的だ。
「お前も行ってみるか?」
「にゃ〜ん」
猫は当然のように鳴く。
まるで決まっていたかのように。
そうして、僕らは、指定された駅へやってきた
だが――
「だれもいない?」
不思議と、いつも人がいる時間のこの駅には、誰もいなかった。
風だけが通り抜ける。
「おかしい 誰もいないなんて」
その時だった。
遠くから、低く重たい汽笛の音が響いた。
「……うっそだろ⁉」
空から。
本当に、空から。
汽車が汽笛を鳴らしながら、ゆっくりと降りてくる。
鉄と光でできた、美しい車体。
ホームに静かに着地する。
扉が開いた。
そして――
「…なっ なんだ めっちゃ美人が 降りて来たぞ」
彼女は、風と共に立っていた。
腰まで届く銀色の髪は、光を受けるたびに淡く青を帯びる。毛先へと溶けるその色彩は、まるで夜明け前の空を閉じ込めたようだった。柔らかく広がる髪は、静かな湖面の波紋のように揺れ、彼女の存在そのものがこの世界のものではないかのような錯覚を与える。
大きな翡翠色の瞳は、透き通るほど澄んでいる。
だがその奥には、年齢に似合わぬ静けさと、言葉にならない何かを抱え込んだ影があった。
紺色のブレザーは金の縁取りが施され、端正な仕立てが彼女の佇まいを引き締めている。胸元には深い青のリボン。白いフリルのスカートは軽やかに広がり、動くたびに小さく揺れた。黒い手袋と太ももまでのニーソックスが、その可憐さにどこか凛とした印象を添えている。
肩から斜めに掛けられた小さな革のバッグは、彼女が“旅の途中”であることを物語っていた。
「あっあの 車掌さんですか?
チケットってこれでいいんですか?」
彼女は穏やかに微笑む。
「ハイ、銀河鉄道空の旅1日体験ツアー
チケットですね。拝見しました。」
「マジで銀河鉄道だ!」
夢じゃない。
これは、本物だ。
「お客さま まもなく列車が発車します
鉄道の中へいらして下さい」
「はっはい!わかりました」
足が震えている。
でも、止まらない。
列車に乗り込む。
「うわぁ すげぇ 中も メチャクチャ
雰囲気ある!」
木の温もりを感じる内装。
優しい灯り。
まるで昔の高級列車のようだ。
「銀河鉄道 ソラの旅 発車します」
次の瞬間。
列車が浮き上がる。
「とっ 飛んだ!」
「にゃ〜ん!」
窓の外に広がる夜空。
星々が近い。
「ほぇ〜飛行機の窓から夜空を眺めてる気分だ」
アナウンスが響く。
「お客様方 これより他の車両への移動も可能です
快適なソラの旅をお楽しみください」
よし。
「車内を見てみようぜ …」
「にゃ〜ん!」
僕とこいつは、一緒に車内を移動し始めた
一体、何車両あるんだろう。
「あれ? 向こうにいるのは車掌さん
じゃないか?」
近づく。
「あの車掌さんですよね。この列車は何処までいくんですか?色々詳しく教えてください」
彼女は一礼する。
「地球のお客様ですね
私は 車掌の精霊 ソラ この鉄道の運転手兼
皆様のガイドも務めさせて頂いております!」
「精霊のお姉さん⁉
えっ、じゃあ誰が……この列車を運転して
大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。この列車には最新鋭の人工知能が組み込まれており、行く先さえ指名すれば
自動で向かってくれるのです。
今回は地球を飛びだち、未来の火星の
様子を空から眺めて戻るルートになります。」
未来?
火星?
「未来の火星⁉と言う事は過去にも
行けるんですか」
「はい。現在の火星は人が生きる事も旅行にも適してないため 時間軸を越えての案内になります。
この列車は現在 過去 未来 天国から地獄まで時空や銀河を越えて、様々な惑星に住む違う文化を持つ方々や死者の方を 閻魔さまの場所までお連れする事もあるんですよ」
「僕は まだ死んでませんよ!」
「ええ、存じております。基本 生者の方と死者の
方を一緒に乗せる事はありません。」
「ほぇ〜」
なんだよ、この列車。
規模が違いすぎる。
「良ければ、他の惑星からいらしたお客様とも
話されて見ますか? 違う文化の話をされるのも楽しいと思いますよ」
「他の人がいるんですか⁉」
「ええ、この1個先の車両になります」
「ありがとうございます。ちょっと
行ってみます」
扉を開く。
「ん?」
「おっ」
「あら?」
様々な姿。
様々な文化。
「こんばんわ 地球から来たヒロです
みなさん何処から やってきたんですか?」
違う惑星から、
違う理由で集まった乗客たち。
そして、僕は気づく。
この一日は、ただの体験ツアーで終わるはずがなかった。
僕の銀河鉄道の――
短くて、
けれど長い一日の旅が、静かに始まったのだ。
第一話 いつかの願いを叶える列車 END
── この続きは、銀河鉄道の車窓で。
▶ 本編はこちら
https://youtu.be/P8SscjjjvmM
