【不思議な話】予知
不思議な話に聞こえるかもしれませんが、私にとってはそれが「当たり前」の日常でした。
私がまだ幼い子供だった頃の話です。
視えていた「結末」
当時の私には、少し先の未来が断片的に視えるという不思議な力がありました。それは予言なんて大層なものではなく、ただテレビのチャンネルを切り替えるように、数分後の光景がふっと頭の中に流れ込んでくる感覚です。
特に鮮明だったのが、週末に家族が居間で観ていた競馬でした。

ゲートが開く前、ファンファーレが鳴り響く中、画面に映る馬たちの姿を見た瞬間に「あ、この子が一番になる」と、なぜか確信を持って分かってしまうのです。実況の声や解説者の予想なんて関係ありません。私の中では、すでにレースの決着はついていました。
家族との時間
横では祖父と父が、競馬新聞を広げてあーだこーだと頭を悩ませていました。そんな二人を見て、私は子供特有の無邪気さで、そっと「正解」を教えてあげるんです。
「おじいちゃん、次はこの緑の帽子の馬が勝つよ」
「お父さん、さっきの馬じゃなくて、こっちの馬が一番だよ」
最初は「子供の言うことだから」と笑っていた二人も、私の言う通りに馬が次々とゴール板を駆け抜けていくのを見て、次第に顔色を変えていきました。
私にとっては、大好きな家族に喜んでもらいたかっただけの小さな贈り物。けれど、的中が続くにつれて居間の空気は少しずつ、驚きと不思議な高揚感に包まれていったのを覚えています。
あれは一体何だったのか
成長するにつれて、その力はいつの間にか静かに消えていきました。今となっては、あの一瞬先の未来がなぜ視えていたのか、科学的な理由は分かりません。
ただ、今でもふとした瞬間に、テレビの前で目を丸くしていた祖父と父の驚いた顔を思い出します。あれは、幼い私にだけ許されていた、ほんの少し先の「未来への窓」だったのかもしれません。
