創作ノート 二|束縛を教えてくれた男を書いたあとに、十年前なら書けなかった理由
この話は、十年前の私には書けなかった。
「今どこ。」
「誰といるの。」
そう聞かれるたびに、
愛されてると思っていた。
一分を過ぎたら、電話越しに怒られた。
謝った。
悪いことをした気がしていた。
十年前の私がこの話を書いたら、
たぶん最後にこう書いていた。
「今思えば、あれは重かったけど、
若さゆえの一途さだったのかもしれない。」
そうやって、ちゃんと美談にできた。
でも今は、それができない。
美談にした瞬間、あの怒り方も、
一分のルールも、全部正当化してしまう。
十年前の私は、
まだあの彼を悪く言えなかった。
たぶん、悪く言ったら、初めての恋そのものを
否定する気がしていたから。
でも今は分かる。
彼を悪く言うことと、初めての恋を大事に思うことは、別に矛盾しない。
だから今回、書きながら一度も、
「若さゆえ」とか「一途さ」とか、
そういう言葉を使わなかった。
使わなかったことに、
自分でちょっと驚いた。
きっと、あの頃の私が読んだら、
「そんな言い方しないで」
と言うと思う。
でも、あの頃の私を守るために、
彼を美化するのはもうやめた。
これは、十年経って初めて書けた話だった。

▶︎元になった作品はこちらです
私が出会った愛すべき男たち|束縛というものを教えてくれた男
