「私なんて」と思っていた私が気づいた : 番外編|彼のOSも、誰かに作られた
プロローグ: 彼は優しい
彼は、優しい。
感情を持っていないわけじゃない。
ただ、ずっと消してきただけだ。
自分の気持ちを話すことは、
“恥ずかしい”ことだと教えられた。
だからそれが、普通になった。
第一章: 忘れた。
彼との話し合いはとても難しい。
「その時、どう思ったの?」
彼は少し間を置いて、
こう言った。
「忘れた。」
嘘をついてるわけじゃない。
本当に、無自覚に消えてしまってるのだ。
感情を問われるたびに、
彼は縮こまって隠れてしまう。
第二章: 乾いたままだった
最初は、責め立てた。
「なんで覚えてないの?
やましいことでもあるの?」
感情で溢れる私には、
到底理解できなかった。
彼にとって忘れることは、
息をするのと同じこと。
当たり前なことなんだと、気付いた。
私の器は溢れ出すのに、
彼の器は乾いたままだった。
三章: そっと蓋をした
それでも私は、
彼の器に注ごうとした。
でも彼はそっと蓋をして、
私を中に入れてはくれない。
何度も試みて、
伝わらない思いに、悶々としたが、
この気持ちを手放した。
エピローグ: 注ぎ続けようと決めた
これは彼の歪んだ器のせいだ。
間違った前提のせいだ。
彼に気持ちを重ねるのを、やめた。
わたしの新しい気持ちで
上書きしようと決めた。
そして少しずつ、
彼が気持ちを口にできるように、
彼の器に大事なものを
注ぎ続けようと決めた。
▶ この話の前提
「私のOSは母が作った」
▶ 同じシリーズ
「私なんてと思っていた頃の話」マガジン
