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【エッセイ】朦朧とするほど汗だくだったあの日
数年前。父が亡くなった連絡がきたのは 8月31日の朝だった。 6時に母から落ち着いた静かな声で電話がかかってきた。予期していたことだった。
私はすぐに身支度して市内の実家に向かった。父は希望通り家で亡くなったのだ。
それは父の頑張りでもあり、母の大変な頑張りによって 叶ったことだった。その点では父と母に尊敬の気持ちを持っている。
しかしその後のとても慌ただしい長い 暑い一日の中で母を恨みに恨んだ。母は家中に隙間なく物を溜め込むタイプだったため、父が亡くなった後の様々なことに対応するためにはまず 片付けをしなくてはならなかったのだ。
泣いたり悲しんだりする暇はなかった。妹と二人でとにかく片付けた。朦朧とする暑い日だった。涙の代わりに私から出る水分は汗だ。もともと汗かきの私はあの日どれほどの汗をかいただろう。
今はかなり片付いた和室に置かれた、小さな小さな可愛い仏壇で父の笑顔の写真を見ていると、時々あの恐ろしい暑い一日が脳裏を過るがもう過去のことだ。あの苦しい一日は「今」からどんどん遠ざかっていく。
手放そう。
済んだことは手放していこう。
