見出し画像

ホーム

「黄色い点字ブロックの内側で、お待ちください。」

給水所の蛇口から出た水が私に話しかけてくる。
イライラとした胃と仲良くするには、まだ何かが足りないらしい。   
かそけきものを寄越せとのたまう。

かそけきもの?

はるか昔の記憶の断片は、川沿いの曼珠沙華を美しいと思っていいのか、不気味と思うべきなのか、それすら自分では決められなかった苦味を呼び起こす。

からまった糸はずるずると、横で舟を漕ぐ学ランの同級生の横顔や、冷蔵庫の裏の埃の塊を、ワンコインでみた学生の劇を思い出させる。

あの、何留かしてそうな濃い役者(学生)がお気に入りだった。元気にしているかな。

唐草模様の柵の奥には若鮎が列をなしていて、求肥の内臓を大事に大事に守っている。

通り雨の後の匂いと湿った風が、私の足を鈍らせる。

とろとろにとけて、固まって求肥になる。冷やしすぎて硬くならないように気をつける。

いっそ寒天のようにホロホロと口の中でほどけたいのか、

いや、やはりまだ私はヒトガタをとっているので、ヒトたらんとせねばなるまいて。

私はほんとうは求肥なのに。

それはホラにもほどがある。

私は私がすごいと思っていることをバレないように日々心がけているのだが、
私は私よりすごい人を沢山知ってもいるし、
すごいけれど偉そうな人は嫌いなので、
自分が自分を嫌いにならないためにはどう自分を評価したらいいのか、しょっちゅう迷子になる。

私は路傍の石、とか分かったようなことを言って

路傍の石の内容は何一つ覚えていないし、
そもそも作者も覚えていないけれど、

とりあえず良かった記憶がうっすらあることに満足する。

偉すぎて子どものプレッシャーになっても良くないよね、なんて考えたり、

ビジネスクラスでノルウェーかフィンランドに行けないかな、なんて思ったりする。

その前に自分用のお土産のチョコリキュールを味わうのがよかろう。

かそけきもの。
それは、手のひらサイズのチョコリキュール。

「ロープが上がります。」


いいなと思ったら応援しよう!

みみずくの耳 なんと!いいんですか!? ありがとうございます😊 あなたにいいことがありますように✨