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「自分にしかできない仕事」はありません。

つねに、「自分にしかできない仕事がしたい」と思いながら仕事をしている。大変贅沢な悩みである。社会人として一人前すぎる。

…がしかし、わたしは仕事が嫌いである。

こんなにはっきり断言するのもどうかと思うが、「明日から仕事しなくていいですよ〜」と言われたら、よろこんで24時間布団から出ずノンストップで漫画を読みつづける怠惰の極みのような人間だ。

就活期なんぞ、あまりに働きたくなさすぎて就活を途中で辞めたぐらいだ。このまま永遠にモラトリアムのなかでぬくぬくしていたい。ヤダヤダ、社会になんて出たくな〜い!!!!と本気で思っていたので、カラオケのデンモクを使ってアニソンシンガーオーディションを受けるなどの現実逃避をしていた。(そしてなんだかんだ最終審査まで進んだ)

本当に本当に働きたくなかった。だから、大学生のときからインターンに行く同級生たちを見て、「いずれ社会で馬車馬のように働かねばならないのに、わざわざ先取りするなんてアホなんか?」と思っていたし、アルバイトも「デスクに座りお菓子を食べながら800字程度のテキトーな記事を量産する」という、できるだけイージーなものを選んでいた。

しかし、就活をサボっていることがバレ、「就職しないと家から追い出すよ」と母から脅しを受けたことをきっかけに、しぶしぶ就職する羽目になってしまった。働かざるもの食うべからず。なんとも世知辛い世の中である。

一方で少し働いてみたことで、わたしの気持ちも変わってきた。「どうせ働かなくちゃいけないのなら、ちょっとでも興味のあることがしたい」「どうせなら苦しくないものがいい」「自分だからできる仕事がいい」というふうに。

そうやって、できるだけ興味のあるほうへ、自分がラクなほうへ、そして自分だからできるものへ、とズルズル流れてきた結果、辿り着いたのがフリーランスのライターである。

書くことは嫌いじゃない。もちろん寝たり漫画を読んだりしているほうが圧倒的に好きではあるが、ほかの仕事よりも書くことはラクにできるので性に合っている。

そして、どこにも所属していないというのは気楽である。誰に監視されるでもなく、指図を受けるでもなく、仕事をあまり受けたくないときは調整できるし、興味があれば手を挙げることができるし、気分でどうとでもなる。あらあら〜あなた、理想的な働き方をしてるじゃないの。ってまわりから言われるし、自分でもそう思う。我ながらよくここまで頑張ったじゃない?

とはいえ、長いあいだ社会人をやっていて思うのは、結局仕事は大変だ、ということである。レベルの高い取材が終わったあとには、「エーンこれどうやって記事にすればいいのぉ〜!」と頭を抱えているし、企画が全然通らなくてつねに月の目標本数と戦っているし、初挑戦の広報の仕事はチンプンカンプンで毎回自己肯定感を下げているし、月末は請求書の発行やら送付やらに追われている。「こんなん、できるかぁ!」と匙を投げることもある。

めっちゃめちゃめちゃ大変である。「遊ぶように働こう」なんて夢のまた夢だ。もちろん、自分の好きなサウナを取材したり、「お花見してみた!」の体験記事を書いたりと、部分的に「遊ぶように」働いてはいると思うが、わたしは「これは仕事」というマインドでやっているので、必要な写真やコメントはきっちり押さえていくし、気分的には全然遊んではいない。

しかし、悲しいことにこれだけ大変な思いをして仕事をしていても、ライターの仕事は代替可能である。

どうしても取材に行けないとき、「代わりに他のライターさん紹介しますね!」と言って、結果的にクライアントから「紹介してくれた◯◯さん、すごくよかったです」と言われたときなどは、自分から紹介したくせに「わたしじゃなくてもええやん」なんて一丁前に思ったりもするし、ゴリゴリビジネス系の記事依頼が来たときなどは「これをなぜ知識ゼロのわたしに…!?」と思ったりもする。

すべての仕事は代替可能。きっとわたしじゃなくてもいい。自分にしかできない仕事なんてない。

しかし、わたしは思い込みたいのだ。「これは自分にしかできない」と。

新規の仕事依頼が来て、打ち合わせ日程を決めて、いざ話を聞くとき。「だから自分に頼んでるんだな」の納得感がほしい。「あなたにお願いしたい」と他者評価がほしい。それで、「これは自分にしかできない」と使命感を持って臨みたい。だって、ただでさえ働くことが好きじゃないんだもん。「自分にしかできない」って思い込まなきゃやってらんねぇよ!

でも、実際にそう思いながら仕事に取り組んでみると、不思議と本当に「これは自分にしかできないかも」と思えてくる。取材が終わって、原稿を納品して、「いしかわさんにお願いしてよかった」と言われたとき、褒められたとき、仕事嫌いなわたしは初めて「仕事をしてよかった」と思えるのだ。

何度も言うけど仕事はめちゃめちゃ大変だ。ミーティングに出たくなくてギリギリまで布団をかぶっていることもあるし、できるだけ工数を減らしたくて「これはやらなくてもいいですかね!?」と交渉したりもする。いまもソッと寝かせている原稿があり、締切は今日だと言うのに開くのが怖い。

それでもよいしょ、と自分を奮い立たせて机に向かう。なんやかんやこの仕事は、自分にしかできないと信じているから。

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いしかわゆき(ゆぴ) | ライター・エッセイスト サポートは牛乳ぷりん貯金しましゅ

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