【8億円の契約】「あそこの町と同じだから」は通用しない?ホフマン輪窯の入札に見る矛盾。
【本記事は、令和5年4月発行の議会報告「ミルクおやじレポート」の深掘り解説です】
今回は、深谷市の重要文化財「ホフマン輪窯(わがま)6号窯」の保存修理工事についてお話しします。 文化財を守ることは、もちろん大切です。しかし、そのために使われる8億円もの税金の「契約の決め方」に、私は大きな疑問を感じました。
市は入札を行わず、特定の1社と契約する「随意契約(ずいいけいやく)」を選びました。 その理由として挙げられたのが、栃木県の「野木町(のぎまち)煉瓦窯」の前例です。 しかし、よく調べると、この理屈には大きな矛盾が隠れていました。
1. わずか1万円差の「出来レース」?
まず、この契約の異常さを示す数字を見てください。
設計金額(市が計算した予定価格):8億113万円
契約金額(業者との契約価格):8億102万円
その差は、わずか1万円。 8億円規模の工事で、ここまでピタリと価格が一致することは、競争がない環境ならではの現象です。
地方自治法では本来、随意契約は「130万円以内」などの少額案件に限られています 。 しかし市は、「全国で1例しかない特殊な工事である」ことを理由に、特例としてこの随意契約を進めました 。
2. 「野木町の前例」というブーメラン
市側が随意契約(1社特命)の根拠としたのが、栃木県野木町の「野木町煉瓦窯」の修復工事です。 「野木町と同様の特殊な工事だから、その実績がある業者にお願いするしかない」という理屈です。
しかし、私はここで一つの矛盾を指摘しました。
矛盾①:野木町は「入札」で決めていた
市が「前例」とした野木町煉瓦窯の工事。 実はこれ、入札(競争)によって業者が決定されていたのです 。
もし「この世でたった1社しかできない特殊技術」なのであれば、野木町の時点でも最初から随意契約になっていたはずです。野木町が入札を行ったということは、「仕様書さえしっかりしていれば、競争は可能である」と判断された証拠です。
「野木町と同じようにやる」と言うなら、契約方法も野木町と同じように「入札」にすべきではないでしょうか?
矛盾②:「1回やった」が「永久パスポート」になる危うさ
今回、随意契約の根拠とされたのは、野木町での「1回の施工実績」です。 これを理由に競争を排除してしまうと、どうなるでしょうか。
最初の1回を取った業者が、未来永劫その仕事を独占できる。
他の技術ある業者が参入し、経験を積むチャンスが永遠に失われる。
これでは競争原理が働かず、価格は高止まりし続けます(今回の「1万円差」がそれを物語っています)。 実績があることは評価すべきですが、それを理由に他社を門前払いする特権にしてはいけません。
3. 深谷市の過去とも矛盾する
さらに言えば、深谷市自身も過去にホフマン輪窯の工事を6回行っており、そのうち4回は一般競争入札を行っています 。
過去には入札を行い、実際に他社が応札したり、最低制限価格を下回るほどの競争があったりしました 。 それなのに、今回に限って「特殊だから随意契約」とするのは、過去に自分たちが行ってきた入札行政を否定することになりかねません。
4. 結論:透明性こそが信頼の鍵
私は、誤解を招かないためにも、原則通り「入札」を行うべきだったと考え、議会で反対の意を示しました 。
8億円もの血税を使う以上、「特定の1社しかできない」という客観的で逃れようのない証明がない限り、公平な競争の場を設けるべきです。 「前例」を都合よく解釈するのではなく、その中身までしっかり検証する。それが、税金を預かる側の責任だと私は考えます。
出典:令和5年4月発行 ミルクおやじレポートより
