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10DANCEの感想

10DANCEをBL的恋愛目線でのみ語るのは余りにも勿体ない。

 私がこのnoteを書こうと思ったきっかけは、10DANCEに関するコラムを読んで非常にモヤモヤしたから。
 最初から最後までただただ恋愛目線でのみ語られる解釈に違和感しかなかった。
 端的に言って、彼らが世界規模の大会で競い合うアスリートであるという視点をまるっきり無視するのはどうにも解せない。

 ちなみに私は原作漫画読んでなくて、竹内涼真さんも町田啓太さんも本当に素晴らしい役者さんだと知っているけど、今推しているのは別の人なので10DANCEに関してほぼほぼ真っ新初見の作品。

 物語はラテンダンサー鈴木信也がスタンダードの帝王杉木信也に猛反発するところから始まる。
 鈴木の目の前に突然現れたいけ好かない男、杉木信也。
 ジャンルは違えど同じ社交ダンス界にいれば何かと比べられるだろうし、ダンスを一目見れば分かる圧倒的な杉木の実力に、鈴木のプライドもビンビンに刺激されるのはどうしようもない。
 そんな杉木が面と向かって大変わかり易く挑発して来たのだから、そら「喧嘩売ってんの?」にしかならないよ。

 個人的には杉木がこういうやり方をする人だとは意外だな、という印象。
 町田啓太さん演じる杉木信也から立ち昇るオーラはまさに帝王の風格。
 けれど、そういう真性の負けず嫌いは総じて安易な挑発なんてしないはず。
 勝負所は慎重に厳選し、ピンポイントで会心の一撃を狙うものだろう。
 もちろんその一撃の為に周到に準備を重ねるだろうけど、表面上はあくまでも優雅に余裕を持った姿であればこそ、だしね。

 だから鈴木信也に対して、誰の目からも分かるアクションを杉木の方から仕掛けたっていうのは要チェックポイントなんだろうな、と思いつつ視聴。
 鈴木が挑発に乗ってどんどん杉木との距離を詰めていくシーンの2人。
 気の強い男同士がギュンギュンに睨み合う表情は個人的に大好物過ぎでしたありがとうございます。

 とにかく最初から最後まで、10DANCEのダンスシーンはそれはそれは扇状的だ。
 竹内涼真さんのしなやかな上半身に度肝を抜かれ、町田啓太さんの造形美は圧巻の一言。
 肌に触れて呼吸を合わせ、お互いの筋肉の動きが滑らかに連動し、2人を包む空気がフッと溶け合う瞬間が息を飲むほどめちゃくちゃエロティック!

「ワルツの起源は求愛」

「ラテンは剥き出しのエロチズム」

 そう2人が言うぐらいだから、ダンスシーンにエロスと恋愛感を受け取るのは当たり前。
 きっとそういうものだし、そう感じさせてこそのトップダンサーなのだろう。
 このエロスをここまで濃厚に醸し出せるお2人に脱帽。

 だけどさ、実際に踊っている2人が踊っている最中に恋愛的な駆け引きで動いてるわけないよね?

 象徴的な場面は鈴木を女役にしてのダンス。
 あのシーンについて、鈴木が杉木の支配に快感を得たとか、杉木が鈴木を思い通りに扱って優越感を感じてるとか、なんだよそれ余りにも薄っぺら過ぎないか!?
 だって鈴木も杉木も当たり前にゴリッゴリなプロダンサーだよ!?

 女役ポジションに入る事で実感した杉木の技術の高さや、知り得なかった感覚を体験した心の震え、実際に2人のステップや呼吸が重なっていく高揚、それら諸々が反発していた杉木によって誘発された悔しさと、己の未熟さを突きつけられた敗北感。

 何か色々そういうプロアスリート同士にしか分からない感覚とか感情とかが、あの短いワルツの間に爆発的に起こったんじゃないだろうか。
 それら全てをひっくるめて「快感」の一言で表す事も出来なくはないけど、あの時点での鈴木にはそこまで消化し切れてないだろうと思う。
 鈴木のあのなんとも言えない表情をただの恋愛的な揺らぎとしか捉えないはめちゃくちゃ勿体ない。

 男性として女性を悦ばせてきたのに急に女役をやらされ支配された鈴木の中に新しい感情の扉が……とか、そんなちっぽけな話じゃ絶対ないだろ10DANCEは!!

 数ヶ月という短い練習期間に死ぬ気で社交ダンスの魂をその身に降ろした竹内涼真さんと町田啓太さんに敬意を持って、彼ら2人が表現した鈴木と杉木の関係を表層の恋愛ムーブで終わらせたくないなって思った。
 もっともっと深く、あの作品を堪能したい。

 杉木にしたって、鈴木を思い通りに支配した優越感、だなんて単純な感情だとはとても思えない。
 杉木のパートナーの房子は
「自分は落ちこぼれで、ただ杉木先生のリードについていくだけ」
と言っていて、要は杉木のパートナーとしてちょっと力不足であるというフリなんだなと私は解釈した。
 つまり、杉木はパートナーの技量に対して常に何かしらのフラストレーションを抱えながらダンスをしているのではないかと推察する。
 そういう感情を抱えた杉木が、単純に鈴木を支配する優越感で悦に入るとは到底思えない。

「大変綺麗に立てました」

「どうですか?お姫様になれましたか?」

 言われた鈴木は揶揄だと受け取ったかもしれないけれど、杉木はもっと色々な意味を込めたんじゃないかって気がする。
 そもそも杉木の言葉数は少ない。
 いつも端的な口調で、世辞も軽口も気軽に言うタイプじゃない。

 初めて鈴木をリードして踊ったワルツが思っていた以上に満足できるダンスだった。

 そんな気持ちが踊る最中の杉木の表情や存外に優しい声色に滲み出ている気がする。
 でもその満足感は杉木が鈴木を男性的に支配し思う様に操っただけで得られるものじゃないはずだ。
 だって、支配するだけでいいなら従順に杉木に寄り添う房子とも満足いくダンスが出来ているはずだから。

相手が鈴木だったから出来たダンス。
相手が杉木だったから掻き乱された感情。

 そういう、ダンス人生を揺るがす唯一無二の存在に出会ってしまった話だろ10DANCEは!!

 もちろんBL作品だという大前提は重々承知している。
 私はBL作品も大好きだし2人の関係が恋愛に傾く様を否定しているわけではない。むしろ大いに恋愛して欲しい。
 でも!ダンス描写を恋愛のスパイス扱いするのは納得いかない!
 私は社交ダンスについて何も知らない素人だし、特に何かのプロだという事でも全くない。
 ただ、2人にとってダンスは人生を賭して取り組んでいるものだという重さを尊重したいだけなんだ。

 ダンス中じゃないと思うんだよ2人の感情の揺らぎは。
 むしろ2人の心は踊っていない時にこそ動いてるだろって。
 でもそこをミスリードさせる台詞が意図的に散りばめられてるのも確か。

「恋してる人みたい」

「疑似恋愛だな」

「同性にも欲情することはある」

 杉木と踊る度に感じる言いようのないもどかしさを鈴木が仲間たちに吐露すると、誰もがそれは「恋」だと吹き込む。
 鈴木のダンサーとしての鋭く繊細な感性がしれっと恋愛感情にすり替えられちゃうのだ。
 見る側に「なるほど鈴木は杉木のダンスで恋をしたのか」と納得させ、同時に鈴木自身にも徐々に暗示がかかって行く。
 それが誰の意図かって言ったら作者の意図で、謂わば神の意志であるならばもちろん2人の恋の行方は前のめりで見守って行きたい。

ダンスから恋へ

 鈴木は非常に感受性の強い人だと思う。
 タブレットでちょいと競技姿を見ただけなのに杉木が「苦しそう」だと見抜き、ホールドしただけで伝わる杉木の熱量を明確に言語化出来るほど精度が高い。
 その強い感受性はダンスの向こう側にある杉木の生きづらさも高感度でバンバン受け取る。

 パートナー帰宅後も一晩中黙々と練習する杉木を見る表情、テーブルマナーに縛られた食事に反発する態度、幼少期から何かしらの畏れがあったと匂わす杉木を見上げる目線。
 ずっと何か言いたげな、もどかしそうな顔をしてるんだよね。

 鈴木の感受性については、鈴木信也を演じた竹内涼真さんの言葉からも伺える。
 10DANCEの公開に伴い、竹内涼真さんと町田啓太さんの対談インタビュー記事がSNSにも沢山流れてきた。
 どの媒体だったか忘れたけれど、竹内さんが

「僕は練習のシーンで杉木先生が「休もう」というところが好きです。そこを何度もリピートしてその度に泣きそうになる」

 というようなコメントをしていたんですよ。
 「休もう」というたった4文字の言葉から、鈴木がどれだけ敏感に杉木の張り詰めた感情を受け取ったのか。
 遠ざかる杉木の背中を見つめる鈴木の佇まいだけで、もうビンビンに伝わってきましたとも。
 そしてそのシーンを何度も反芻し、あの時と変わらず湧き上がってくる思いを抱きしめて泣く竹内涼真さんが愛し過ぎて胸がギュッとなりました尊いっ…!

 私的に2人の距離感が動いたなと思ったのは、練習終わりにお互いのルーツをポツリポツリと語る時のシーン。
 フロアとロフトでその立ち位置はやけに遠く離れてるけど、相手の話を聞き入る2人の空気感はとても穏やかで。

「空は青いですか?」

 と問いかけてくる杉木に

「ハハッ。青いよ〜」

 と答える鈴木。

 この杉木の「空は青いか」という台詞が1番好きだ。
 杉木にしては珍しく、何の気負いもない無邪気な問いかけ。
 少し自嘲気味に語られるキューバの話を聞きながら、杉木は澄み渡る深い青空の下で自由に情熱的に踊る鈴木の姿に想いを馳せているのかなって想像するとめちゃくちゃエモかった。
 目が合えばフッと笑い合う2人の表情の柔らかさは、お互いの気持ちの変化を感じさせたよね。

 2人の関係が決定的に動くのはもちろん地下鉄でのキス。
 想像以上にアグレッシブなキスシーンでしたねありがとうございます!

 もうとにかくキス!キスキスキス!
 いやいやめっちゃキスするやん!
 というかそれなんのキス!?

 と、なりそうになるのでその手前の夜の街角からのやり取りはより丁寧に鑑賞したい。

 これまでストーリーの主軸は鈴木視点で進んでいる。
 杉木に対する反発とダンスが思う様に踊れない苛立ち、杉木に感じる息苦しさともどかしさ。
 鈴木にそれだけの心理的流れがある一方で、杉木の心情はほぼ出てこない。
 はっきりしているのはダンスへの情熱。
 そして、孤独であるという事。
 鈴木がパートナーのアキやコミュニティの仲間たちと気安く話す場面はあっても、杉木が誰かと親しくしているシーンはない。
 育ての親であるマーサからは容赦のない叱咤を受け、ダンスパートナーの房子とすら直接言葉を交わす描写がないという徹底ぶり。
 画面上で杉木とコミュニケーションを取っているのは鈴木だけなのだ。

 イルミネーション輝く夜の街角でふとビルの窓に映った自分に気が付き、つい軽く一歩二歩ステップを踏んでしまったが最後いつの間にか夢中で基礎練習を繰り返しちゃってる杉木。

「踊らないと死んじゃう病気?」

 鈴木は視聴者を代表してこの問いかけをしてくれたと思うが、杉木の返答は相変わらず簡素だ。

「あなたは?」

 こう返された鈴木の苦い顔よ。
 この苦さはパートナーを帰しても鏡の前で独り黙々と練習する杉木に

「全力じゃないでしょ?」

 と言われた時と同じ苦さじゃないだろうか。

 イルミネーションも街の喧騒も目に留めず、パートナーの房子すら置き去りにして、ただひたすら深く深く己のダンスの世界に潜っていく杉木。
 その深さが増せば増すほど杉木にかかる重圧や息苦しさは濃度を高め、もちろん鈴木はその苦しさを高感度で感じ取っている。

「利用するつもりが利用され、振り回されて焦らされる」

 鈴木と杉木は10DANCE出場に向けお互いの専門ジャンルを教え合っているけれど、それはあくまでも練習であり本番の競技では当然ながらライバル関係になる。
 杉木の挑発から始まった共同練習。
 当初の鈴木は鼻息荒く「杉木の技術をあっさり盗んでラテンダンスでは杉木を圧倒し見返してやる!」ぐらいには思っていただろう。
 もしくは「杉木はきっとそういうつもりで自分に声を掛けてきたに違いない。上等だぜ返り討ちだ!」という感じだろうか。
 ところが喧嘩を売ってきたのは杉木の方なのに、蓋を開けてみれば鈴木が呆れるほど一心不乱にダンスに打ち込む姿があるばかり。
 誰にも心開かず、頑ななまでに独りで。

「俺ってアイツにとってなんなんだ」

 鈴木の心の底から湧き出た疑問はすぐに仲間たちに茶化されてしまったけれど、この物語の核心はきっとここだ。

 杉木にとっての鈴木信也とは何なのか。

 ショットバーで3年前の出来事を語る杉木はずいぶんと弱々しい。
 競技を優先し房子のメンタルを犠牲にした杉木は、そんな自分自身を軽蔑するように履き捨てる。

「ハッ、紳士とは程遠い。死神のような男だ」

 仮に杉木がダンスで相手を支配し優越感を感じる男だったとしたら、そんな風に自分を罵倒する言葉は出てこないはずだ。
 グラスを持つ手が若干震えている様子を見る限り、杉木にとっても浅からぬ傷になっているんじゃないだろうか。
 そしてこの一件からパートナーと対等な関係を築けないジレンマに陥り、杉木の孤独をより決定的なものにしてしまったのだろう。
 杉木の懺悔にも近い言葉を黙って聞く鈴木の表情は、これまでにないほど硬い。何なら痛そうですらある。

(どうしてそんな事を聞いてしまったのか)

 鈴木の独白は、杉木に自分を罵倒する言葉を言わせてしまったことへの後悔なんじゃないか。
 持ち前の感受性で杉木のジレンマを真正面から受信してしまった鈴木の苦悶の表情たるや……本当に……色気が凄いっ……!
 それに鈴木は雑な言葉と仕草で乱暴な雰囲気をあえて出しているけれど、本当はとても繊細で優しい人だと思う。
 ただ、その優しさの表現が絶望的に下手なだけで。

「つまんねぇ」

 この言葉が杉木にどう刺さったのかの描写がない為、見る側はただ想像するしかない。
 今まで鈴木にどんな言葉を投げかけられても少しも揺らぎはしなかった帝王の顔色や目の光が、この瞬間急激に変化する。

 いやもうここの町田啓太さんの演技、本当に震えますね……
 杉木の表情筋はほとんど動いてないのに、腹の底から何かがグワッと吹き出してきたのが手に取るよう分かってゾクゾクが止まりません……

 杉木の中でぎゅうぎゅうに抑圧されていたあらゆるるものがついに決壊した瞬間。
 無我夢中で鈴木を追いかけ、地下鉄内で詰め寄って逃げられないよう頸を掴んで。

 つって、今まで散々鈴木に「惚れたなお前」煽りをしてたのに恋しちゃってたの杉木の方なんかーーい!!!
 えっいつからよ!?って言うならそんなんもう最初からだよ!って?
 つまりは冒頭のやっすい挑発は帝王杉木信也一世一代の大勝負だったって事ですかっ!?
 ナニソレ可愛い過ぎてしんどい!
 さっき鈴木に「優しさ下手かよ!」って思ったばかりだけど、杉木先生も恋のアプローチだいぶ下手ですね!?

 しかも走り出しから顔面距離10センチまで一足飛びの勢いで詰め寄っておきながら、この後に及んで

「嫌ならやめても」

 とか言っちゃうのずるいよ杉木!!
 そら鈴木の答えは噛み付かんばかりなキスになっちゃうに決まってんじゃん!
 杉木の本心が掴めなくてずっと戸惑っていた鈴木だけど、詰め寄ってきた杉木の縋り付く様な目を見た瞬間バチバチにスイッチ入っちゃったの分かるよそりゃそうなる。

「俺がブラックプールの死神を倒し杉木を死神の呪いから開放する!」


えっと?

鈴木が恋をして可愛いヒロインになっちゃった、って誰がいいました?


いやいやこのマインド完全に正義の味方のヤツだろ!
そうだよ竹内涼真はいつだって俺たちのヒーローなんだよ!

 おっと、少々特撮を齧っているものでつい…
 とにかく、鈴木がバーでポツリと溢した疑問の返答は期せずして杉木本人の口からもたらされる。

「やっぱり、貴方は僕の憧れです」

 杉木〜〜、それ先に言おう?
 しかも鈴木が電車降りてから言うとかツンデレレベルそうとう高いな!大好物過ぎて床の上ゴロンゴロン転がりましたありがとうございます!!!

そして舞台はイギリスへ

 やるべき事が明確になって、きっと内心気合い入りまくりで乗り込んだブラックプール。
 そこで鈴木が目にしたのは、想像以上に理不尽な冷笑に晒される杉木の姿だった。
 ボールルームの世界王者は紳士とはほど遠い今カレマウントで悦に入り、観客たちは報われない当て馬役を杉木に押し付け、極め付けは悪趣味なサプライズ。
 当然ながら鈴木は大荒れ。
 杉木に対するこの扱いにはもはや感受性云々以前の話だけど、人種差別や競技界内の闇みたいなものが存在するのも現実なのだろう。

 とはいえ、己を抑圧する杉木の生き辛さは見ての通りだけど、感受性が強すぎる鈴木も相当生き辛い人だよなぁ。
 杉木の為に怒りたいのに、その怒りをぶつける矛先がない。
 杉木とジュリオの間に割って入ってみても好き勝手な論調で杉木を冷笑する観客に食ってかかってみても何の足しにもなりはしない。
 鈴木みたいなヒーローマインドタイプが精神的に1番堪えるのは、虐げられた悔しさでも1番になれない敗北感でもなく「目の前に自分がいるのに何もしてやれない」という無力感だと思うんだよね。
 それなのに、悪趣味な趣向のダンスで杉木が見せたのは今まで見た事もないほど柔らかく笑う表情だった。
 2人を見つめる鈴木の姿が痛々しいったらない。
 自分にはあんな顔見せた事ないのに、とか思っているんだろうか。
 それともあの表情をさせたのが自分ではないのは何故なんだ、とかだろうか。
 とにかく鈴木の精神状態は最高潮に乱れているのに、ここはイギリスだからいつもみたいに仲間と飲み明かす事もかわい子ちゃんたちとワンナイトで盛り上がる事も出来ない。
 当の杉木はどれほど八つ当たりしても揺らぎもしない。
 あの地下鉄での情熱は幻だったのかと思うほどの鉄面皮で完全に心を閉ざしてしまっている。

 何でだよ、ってなるよなそりゃさ。
 あの時みたいに俺の前では曝け出せよって。

 そこの捌け口が当たり前みたいにセックスになっちゃうところがまさに鈴木だよねと思うし、この鈴木の激情に絡めとられず全力で弾き返しちゃうところも杉木が杉木たる所以というか。

 そうじゃないのよ鈴木。
 杉木が掴みたい藁は共に沈む道連れじゃない。
 ブラックプールの死神を倒す、足元に羽の生えた天使なんだよ。
 だから鈴木が死神を倒すまで、杉木はちゃんと死神でいなくちゃいけない。
 今ここで一線を超えてしまって、死神の仮面を壊される訳にはいかないから。

 こうして恋の矢印は鈴木から杉木へかと思いきや杉木から鈴木へだったのに、いつの間にか鈴木から杉木へという無限ループに突入し、舞台は日本へと戻る。

 イギリスでの経験を糧に鈴木とアキのギアがもう一段階がツンと上がり、練習に余念がない2人。
 世界デビューが一つの区切りとなったのか、杉木ペアとの共同練習は行われていないようだ。
 あの頃の杉木の様に、ただ独り鏡に向かい練習を繰り返す鈴木。
 そしてふと、鏡の中に杉木の姿を探してしまう。

 さぁ今こそ、満を持して言おう。

 惚れたなお前。

 ここまでになれば鈴木自身もはっきりと自覚しているはずだ。
 最初の頃と顔付きが全然違う。
 むしろこの顔付きの違いってなんでこんなにはっきりと違うように出来るんだろう?役者さんって本当に凄い。

 そして恋の自覚をした鈴木の出した決断は

「もう二度と競技以外では会わない」

だった。

「俺たちがやっているのはダンスだ」

 覚悟が決まった鈴木の表情が最高にカッコいい。

 ダンスから恋へ
 そして恋からダンスへ

 10DANCEのこの骨太なストーリー本当に最高です!

 国内で行われたアジアワールドカップ。
 ここでもまた業界内の利権やしがらみがチラつき、鈴木の覚悟とは裏腹に誰かに敷かれたレールに従うしかない。
 もちろん鈴木にそのレールは見えていないだろうが、世界大会の経験豊富な杉木にはもしかしたら見えていたのかもしれないし、杉木にも見えてないかもしれない。
 とりあえずポツリと溢された杉木の独り言が尊い。

「近くにいるのに遠いな」

 杉木の側にいる時の房子ちゃんは全くと言っていいほど言葉を発しない。
 それでもその目線一つで杉木にちゃんと寄り添っている事を表現してる。
 何気なく見えるけどそれって本当に凄い。
 10DANCEの俳優陣は全員凄いにも程がある。

 そしていよいよラストダンス。
 私は全く社交ダンスについて知らないから、デモンストレーションとはいえ公式の場で杉木が鈴木をダンスに誘うくだりがどれほどの意味を持つのか分からない。
 というかこんだけ長々書いてきたけどラストダンスはもう言葉にならない。
 とにかく2人のキレが凄い。
 ダンスの事全然知らないから凄い事しか分からない。
 何度でも言う。ダンス凄い。
 そして夢見るみたいな杉木の表情尊い。尊すぎる。
 ここにブラックプールの死神はいない。
 足に羽根の生えた天使が2人。
 キスも尊い。
 地下鉄やホテルの奪い合うキスとは違う、優しい両思いのキスありがとうございます。
 最後の最後に町田啓太さんのあの笑い皺が拝めて本望です。

「10ダンス決勝で会おう」

 10ダンス決勝っていつですかーー!?
 続きありますよねーーー!?
 ねーーーー!?

 お願いしますよNetflixさーーーーーーーーん!!!!!


というわけで、僭越ながら超個人的な10DANCE感想でした。
最後までお付き合いくださった方、ありがとうございました。

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