見出し画像

到達率99%、普及率19%——日本のA2P-SMS市場はなぜ静かに巨大化しているのか

出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「ミックITリポート 2025年12月号」


A2P-SMSとは

A2P-SMS(Application to Person SMS)とは、企業・法人のアプリケーションから個人ユーザーへSMSを配信するサービスである。BtoC企業を中心に、公共機関・自治体・公益事業体も送信主体となる。到達率・開封率が99%と極めて高く、携帯電話番号を使うため本人認証の信頼性も高い。本人認証・業務連絡・事前通知・督促・プロモーションなど多岐にわたる用途で社会インフラとして定着している。


市場規模と成長率

  • 2024年度実績:配信数 約51億1,461万通(前年比+21.2%)、売上高 約248億円(+15.3%)

  • 2025年度見込み:配信数 約64億3,000万通(+25.7%)、売上高 約298億円(+20.1%)

  • 2025〜2030年度CAGR予測:配信数 +24.5%、売上高 +18.2%(国内法人のみ)

  • 成長期の終わり(2028年度):配信数 約96億通、売上高 約426億円(2023年度比でそれぞれ3.1倍・2.3倍)

  • 成熟期への移行(2029年度):配信数100億通超、売上高 約500億円

市場は2012〜2019年度を「導入期」、2020〜2028年度を「成長期」、2029年度以降を「成熟期」と位置づけており、成熟期まで約17年という息の長い成長市場である。


普及率とイノベーター理論

2023年度の法人普及率は15.8%で、イノベーター理論におけるイノベーター層(2.5%)とアーリーアダプター層(13.5%)の合計16%にほぼ一致する。2024年度は19.0%に拡大し、アーリーマジョリティ層(先行追随者)への移行が始まったタイミングである。2028年度には41.3%、2030年度には57.2%に達すると予測される。


価格動向

アーリーマジョリティ層獲得に向けた低価格化が2022年度から始まり、2023年度に本格化した。

| 年度 | 独立系アグリゲーター平均単価(国内法人) |
|------|--------------------------------------|
| 2021年度 | 7.08円 |
| 2022年度 | 6.88円 |
| 2023年度 | 6.31円 |
| 2024年度 | 5.71円 |
| 2025年度(見込) | 5.35円 |
| 2030年度(予測) | 4.02円 |

単価低下は続くものの、各社は付加価値サービス(RCS、CPaaS、効果測定)の拡充で差別化を図っている。


用途別動向(2024年度、独立系アグリゲーター国内法人)

| 用途 | 配信数シェア | 前年比増加率 |
|------|------------|------------|
| 本人認証 | 33.6% | +36.4% |
| 業務連絡 | 33.8% | +24.9% |
| 督促 | 14.0% | +23.4% |
| 事前通知 | 8.5% | +24.3% |
| プロモーション | 7.5% | +43.0% |
| 決済 | 1.5% | +26.8% |
| 調査・アンケート | 1.1% | +7.6% |

業務連絡は人材紹介・派遣業界の活況を背景に成長。プロモーション用途は最も高い伸び率を示した。一方、本人認証はパスキー認証(指紋・顔認証等)への移行により、長期的にはウエイト低下が見込まれる。


主要プレイヤー

市場はキャリア4社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル)に直収接続する8社の独立系アグリゲーター、およびキャリア系アグリゲーター3社(KDDI Message Cast・SoftBank Message Link・Rakuten CPaaS SMS API)で構成される。


★ メディア4u:国内法人配信数シェア5年連続1位の圧倒的トップ企業

配信数・売上のシェア優位性

メディア4uは、国内法人配信数において2021〜2025年度の5年連続シェア1位を維持しており、その地位は他社を大きく引き離している。

  • 2022年度・2023年度は国内法人シェアが30%超と際立った存在感を示した

  • 国内法人・海外法人を合わせた総市場の配信数シェアも2023〜2024年度で1位

  • 売上高シェアは国内法人のみ・全体ともにほぼ5年連続2位で安定(1位はNTTコム オンライン

2024年度実績

  • 国内法人配信数:約11億3,000万通(前年比+24.4%)

  • 売上高:約55.7億円(+14.7%)

  • 業務系3用途(業務連絡・事前通知・督促)の合計配信数シェアは2019年度から5年間、約40%でトップ

    • 業務連絡シェア:39.9%(1位)

    • 事前通知シェア:32.8%(1位)

    • 督促シェア:49.8%(1位)

強みの源泉

1. 業務系3用途の圧倒的な安定性
人材紹介・派遣、コールセンター、不動産・家賃保証、金融(生損保・銀行)など、年間1,000万通以上の大口顧客を多数抱える。配信数が非常に安定しているのが最大の特長である。

2. 積極的なAPI連携とアプリ連携
SalesforceのMarketing Cloud・Service Cloudとの連携、kintoneプラグイン(2024年度で約3,000万通)、Zendesk、Genesys Cloud、Claris Connectなど主要SaaS・業務アプリとのエコシステム構築が配信数拡大を牽引している。

3. 代販(代理店)戦略
代販比率が年々上昇しており、特定業種に強い代理店ネットワークを通じた新規顧客開拓が継続的な成長を支えている。

4. 低価格戦略によるアーリーマジョリティ層への先行対応
Big4の中で最も低い販売単価を設定し、価格感度の高いアーリーマジョリティ層(中堅企業)の取り込みで先行している。

5. 2025年度:CPaaS展開による付加価値強化
グローバルCPaaSベンダーのInfobip社と提携し、SMS・メール・Voiceを統合した「NTT CPaaS」を2025年1月から提供開始。SMS単体売りからソリューション販売への転換を進めている。

課題と展望

  • 配信単価が4強の中で最も低く、売上の伸びが配信数の伸びを下回る傾向が続く

  • 2025年度は配信数+13.3%、売上高+10.4%の見込みで、インサイドセールス強化と提案力向上により単価維持を図る方針

  • 大量配信を行う大手向けではなく、大幅なディスカウントなく同社の提案価値に納得する中堅以下の顧客層の獲得を推進


市場全体のまとめ

日本のA2P-SMS市場は、参入障壁(キャリア直収承認)により競合プレイヤーが少なく、2029年度まで二桁成長が続く見通しの優良市場である。単価低下という課題がある一方で、RCS・CPaaS・効果測定といった付加価値サービスへの進化が次の成長エンジンとなっている。その中でメディア4uは、業務系用途の圧倒的なシェアと豊富なAPI連携エコシステムにより、国内法人市場のデファクトスタンダードとしての地位を確立している。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー