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55年前の万博会場で、岡本太郎に呪われる

 芸術は爆発だ。

 かの有名な芸術家、岡本太郎の名言である。彼が日本万国博覧会(大阪万博)のシンボルとして今から55年前に設計した太陽の塔には、もう一つの名言が記されている。

 それは「芸術は呪術である」というもの。

芸術は呪術だ

 その言葉は館内をすべて閲覧したのち、下り階段のところにひっそりと記されている。

 確かに、呪いの空間だった。

 壁一面真っ赤に染まった空間に聳え立つ巨大な樹木は、呪儀にも見えた。館内に一歩入った瞬間から、その世界で見たものを2度と忘れることができないほど、強烈なインパクトがある。

 もしかすると、彼の本当に伝えたいメッセージだったのかもしれない。誰かの脳裏から離れなくなるほど記憶に残るものを作るのが、本物の芸術なのだ、と。

 太陽の塔は万博公園の中にひっそりと佇んでいる。

大きい

 55年前は、ここに世界中から多くの人が集まり——今はほんの少し場所を変えて日本国内で万博が開催されていると考えると、実に感慨深い。

 館内は入館料を支払うことで、内部観覧が可能だ。

 館内は建築基準法の基準に則り、一度に入場できる人数に制限があるので、前日までの事前予約制(先着順)となっている。(※4才未満の乳幼児や無料対象の方も予約が必要)

↑予約は上記サイトから予約可能。太陽の塔入館料(大人720円、小中学生310円)の他に、別途、自然文化園・日本庭園共通入園料(大人260円、小中学生80円)が必要。

公式サイトより

 館内で撮影可能な場所は、撮影機材の落下の恐れがない塔内部1階にある「地底の太陽ゾーン及び生命の樹の1階展示フロア」のみとなっている。理由は、カメラやスマートフォンが落下すると危険なため。

 そのような理由から、上層階へ向かう際には、スマートフォンやカメラ等の撮影機材は、カバン等に収納する必要がある。

 ただし、受付でストラップ付き透明のスマホケースを500円でレンタルした場合に限り、上層階でも撮影が可能だ。(※SNS投稿の承諾済)

現在、太陽の塔では落下防止などの危険を考慮し、塔内1階部分のみ撮影可能としておりますが、見学ルートで安全に撮影をお楽しみいただけるように、塔内撮影専用のスマホケースのレンタルを開始することといたしました。

お客様が個人でお持ちのスマートホンをケースに入れて、塔内での撮影をお楽しみいただけます。

公式サイトより

「せっかくだから、上の階も撮影したいよね!」

 夫は館内に入るなり、目を爛々とさせて語った。夫は普段なら「無駄なお金は、ビタ一文たりとも使いたくない」タイプ。旅行になると、不思議と財布の紐が緩むらしい。

 もし、館内にある造形物をなるべく撮影したいのであれば、受付でスマホケースをレンタルする方法がおすすめ。現在入館者がまず先に足を踏み入れるのは、塔の第4の顔「地底の太陽」がある、地下の展示室だ。

 展示室には、直径約3メートル、幅約11メートルの巨大な黄金の仮面が黄色、碧などチカチカと点灯くるライトに照らされ、ぽっかり浮かび上がっている。

黄色になったり……
真っ青にもなる
碧いライトの時は、顔が真っ白に

 仮面はライトの光に合わせて色が変化する。黄色から、白い顔になった瞬間「人の多面性」を感じて、背筋がゾッとする。

——人間と、そして外から見える世界には裏の世界がある。

 ひとつじゃない。色んな顔が眠っているのだと。それらもすべてひっくるめて、その人であり、世界なのだ、と。無言の仮面からそう語りかけられた気がした。

 「地底の太陽」のある空間は、サブリミナル効果のありそうな音楽も流れており、儀式のようにも感じられた。ここから岡本太郎氏のエンタメは始まっているのだろうか。

 地底の太陽を閲覧した後は、あたり一面が真っ赤に染まった壁に覆われる塔内へ。

 塔内に入ると、頂点に向かって聳え立つオブジェ「生命の樹(き)」の迫力に圧倒される。

ライトに照らされた樹木

 生命の樹は天井に向かって勢いよく伸びていた。樹の高さは、約41メートルほど。幹が太めに作られているので、その大きさにまず驚く。

 樹木の周りには、小さな樹が複数あり、中央に聳える幹の「子どもたち」のようにも見えた。

一階は、レンタルスマホケースがなくても撮影可能

 樹の先は先端が丸く、放射状に伸びている。目の前にいると、その小さな樹が大きく広げた手のひらにも見え、ぐわっと掴まれて引き摺り込まれそうになる。

 生命の樹は6つのフロアで構成され、5つの階段(145段)で登りながら鑑賞していく。

 階段を登るのが厳しい場合は、エレベータも利用できる。(※子どもを抱っこしての移動は危ないので不可)

 その場合は、エレベータの停止階である1階・中層階・最上階の3フロアの鑑賞のみとなる。すべての造形物を閲覧したい場合は、できれば階段の利用が望ましい。

 5色の樹は五大陸を表したとされ、原生生物(クラゲ、亀、ゴリラなど)からクロマニョン人までの生物模型が上に行くにつれて進化するように設置されている。

生命の樹
下から見る景色も圧巻

 木の上には、「普段は、動物園で過ごしているのでは?」と錯覚するほどに大きな像、ゴリラの姿もある。地球上に住む生命達の歴史を、木の上になぞる。生物のサイズは、なるべく原寸大で——あえてミニサイズにしないことに岡本太郎氏のこだわりも感じる。

 一体、どうしたらそんな大胆な発想が思いつくのか。天才なんて言葉で片づけてはいけないのは承知の上で、その独創的な発想と「創造を必ず形にしてみせる」という情熱、行動力は肉体レベルに備わった「才」の要素もあると思う。

 尋常ではないエネルギーがなければ、こんなに複雑で壮大な創造を形にしようとは思わないから。

 私は体力に自信がない。階段を登るとすぐ足元がふらつく。にも関わらず、塔内の階段はぐんぐん登りたいと感じた。

 4歳の娘も、いつもなら階段を登るのをすぐ諦めるのに。手すりを持って、懸命に足を一歩踏み出しているのに驚く。

階段の道のりは長く、険しいけれど。ぐんぐん進む。

 人の行動を促すほど、空間から発せられるエネルギーがとにかく強いのだ。

 上階に足を運ぶと、太陽の塔の「腕の部分」の内部を閲覧できる。赤や紫のライトに照らされた骨組み部分は先端まで伸びている。

吸い込まれそう
右腕、左腕がある

 ぼんやり眺めていると、その先にある宇宙へと吸い込まれてしまいそうだ。

 それは爆発を超えた先にある、呪いだった。

 一目見るなり、その世界に圧倒され、引き込まれて魅せられる。説明を見なくても、その場所に足を踏み入れるだけで、また訪れたい。そう思える作品を創造し、本当に作るって凄いパワーだと思った。

 伝えたいことはひとつじゃない。世の中も人も表裏があり、一辺倒なんかじゃないから。色んな顔があるけれど、全部、全部。自分のパワーにしてしまえばいい。そして、ここぞという時にドカーンと爆発させちゃおう。

 岡本太郎氏がそう言った訳じゃないが、彼から発せられる強烈なエネルギーとメッセージが、その空間にしっかりと根づいていた。きっと人によって、授かるエネルギーもメッセージも変わるはず。ぜひ、足を運んで彼からの強烈なパワーを体感してほしい。

 脳から、細胞から。ぐわんぐわんと刺激され、生きるパワーも、創作意欲も。絶対に高まること間違いなしだから。

 塔の形をした芸術は55年経過した今も残り、その場に訪れる人々を魅了……どころか背中からぐわーっと押された気がした。

 こんな文章を書きたいし、視野を。いや、世界をもっと広げて創造したいと思えた。誰かの創造を知ることで、自分の世界が大きく広がる。芸術って凄い。

 今度は娘がもっと大きくなったら。またこの階段を一緒に登りたい。その頃には、娘の足腰もうんと強靭になり、お互いに余裕を持って登れるはず。

 その頃には、岡本太郎氏が創造し紡ぐ世界を、もっと堪能できるのではないだろうか。もっともっと。

 小さな娘の手をそっと握り、私は日常の階段を今日も一歩上っていく。

【完】

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