魂の琴線に触れる記事の数々に圧倒される。エンタメ系ライターのハシマさんを紹介
エンタメ系の記事を書いてみたい。けれど自分には書けないかもしれない。でも、やっぱり挑戦してみたい。そしたら、彼に少し近づけるのか。それとも、存在をより遠くに感じるのか——わからない。だからこそ、自分がどこまで書けるのか。試してみたい。
広いネットの海の中から、自分がそこまで魅せられる記事と出会えるのは奇跡だ。業界の末端に生息している私がそんなことを言うのも、烏滸がましいかもしれないが。そんな私にも今、「書きました」の告知を見ると、必ず記事を拝読しているライターさんがいる。
素敵な記事の書き手は、エンタメ系ライターのハシマトシヒロさん。
中学生の頃、リー・リンチェイ(現ジェット・リー)に憧れて空手を始める。大学生の頃、映画好きが高じて俳優を志すが挫折。現在はサラリーマン兼総合武道「空道」指導者兼ライター。
リアルサウンド映画部で彼の記事を拝読し、いつか同じ場所で書きたいと思った。
↑ハシマさんの極真空手時代と、横浜流星さんの空手エピソードが上手く重なっている記事で、個人的に大好き
実は面談でも、憧れのライターさんとして彼の名前を出したほどである。
ハシマさんの記事の凄みは、格闘技経験から培ってきた視点がドラマ・映画の記事内でフルに発揮されている点だろうか。
ハシマさんは、noteでも「武道家シネマ塾」というマガジンの中で、武闘家としての視点でさまざまな切り口で執筆しているのだが、そのエッセイがどれも実に面白く、読み応えがある。
「武道家シネマ塾」のコンセプトは、「武道家ライターがアクション映画を偏った視点で語る」というものである
ハシマさんは、映画を見ていいなと思ったら、すぐに次の席を予約するほど大の映画好き。
無事観終わり映画館を出た僕は、スマホで次回の座席予約をした。どうしても、もう一回観たくなったのだ。
私自身、映画を観た後はすでにぐったりしている(集中して見過ぎてしまうのもあるが)ので、しばらく脳を休めたいと思ってしまう。
だから、映画を見終えた後で、すぐにスマホで次の座席予約をしてしまうという姿勢に、彼のエンタメに対する並々ならぬ情熱を感じた。
横浜流星さん主演映画「正体」のレビュー記事には、原作者自身の葛藤や迷いが作品にどう影響するのかといった問題についても紹介している。
そして、その葛藤・迷いを表現する言葉に「しこり」という表現で解説している。
この3文字のインパクトはなかなかのもので、レビュー全体のスパイスにもなっている気がした。
↑ハシマさんの記事を読むと、横浜流星さんの作品をもう一度視聴したくなる。別目線で堪能したくなる。不思議だ。
記事の中では、原作愛のない身勝手な原作「改悪」は問題であることに触れた上で、「作者から見てもなお、幸福な原作改変がある」というお話が書かれていた。
原作改変と聞くと、ネガティブなイメージを持つ人も少なくない。もちろん私も、昨今のニュースなどに触れたりする中で、その言葉に対してあまりいいイメージは持っていなかった。
けれど「幸福な原作改変」と聞いた瞬間、なんで素敵な言葉なのだろうと思い、私は目を丸くした。
「幸福な」という言葉がもたらすポジティブな要素にも驚いた。たった3文字なのに、なんてパワフルな言葉なのだろう。
その他にも、「これは上手いなぁ」と思う表現の数々が続き、舌を巻いた。文章を読み進むにつれて、目からポロポロと鱗の破片が1枚、2枚と落ちてゆく。
そんな時、思わず気の利いた返しには「何があるだろうか」と考えてしまいたくなる。けれど、なかなかいい言葉が思い浮かばない。「上手い」ではなく「座布団一枚!」とか……うーん。ちょっと違うか。我ながら、語彙の乏しさに頭を抱えてしまう。困ったものだ。
目新しい表現に触れる度に、いつも狼狽えてしまう私はライターとして、まだまだ発展途上国である。もっともっと、語彙を増やしていかないと。そして、いろんな方々が紡ぐ文章にも触れていきたい。
◇
作品の指揮を取るのは、いつだって原作者である。
私は今まで、ずっとそう捉えていた。けれど、ハシマさんの記事を読み「はたしてそうだろうか」と、思わず自分自身に問題提起をしてしまった。
そんな風に、自分の思考に「問い」を与える記事に出会えるって、そうそうない。記事そのものにパワーがないと、人は一旦停止をして考えようとはしてくれない。ハシマさんの記事には、足を止めたくなるパワーがある気がする。
少なくとも、私は立ち止まり「自分は、ちゃんとエンタメ作品を楽しめているだろうか?」と考えてしまった。それは、彼が紡ぐ言葉の一つ一つに重みや深さがあるからだろうか。一文一文の密度も高く、一記事読み終えた後にはぐるりと視点が変わるような真新しさもある。
私はついつい、受け身の姿勢で作品を楽しもうとしてしまう。その方が楽だし、作品の世界へすんなり没頭できるからだ。だから私は、いつまで経っても思考が浅いのだろうか。
——もしかしたら。
この発想をいくつ持てるか。そして、目線をどれだけ柔軟に切り替えることができるか。この視点を持つことが、おそらくレビューを書く上で大事なのだろう。そしてその視点を増やすためには、意識を持つだけではなかなか難しい部分もある。
身も蓋もない話にはなってしまうけれども。結局のところ、その人自身が「どれだけ豊富な経験を培ってきたか」にも影響されていくような気もする。
もっと目線の幅を広げたい。そして、いろんな表現で言葉を紡ぎたい。ハシマさんの記事を読んで、改めてそう心に誓った。
レビューの中では、ハシマさんが求める横浜流星像についても触れている。
我々が観たい横浜流星は、イキイキと戦う横浜流星ではない。そもそもそれは、単なる“素”の横浜流星だ。我々が本当に観たいのは、顔を歪めて泣いている横浜流星だ。
横浜流星は今をときめく人気俳優の1人。この記事を読むまでは、正直そんな彼に何かを求めてはいけないと思っていた。
けれど、本当にその役者の「演技」が好きならば……。もっとこんな表情を見たいとか、求めてみてもいいのかもしれない。
私はきっと、これまで受動的に作品を楽しみすぎていたのだ。作品は目の前にあって、私もいつも楽しませてくれる存在だ。けれど、時には口に合わないこともある。
「この作品は、私に合わないかも」
そう思うと、私はいつも作品を見続けることを諦めていた。けれど、そこで「なぜ、そう思うのか」をもっと深掘りしていくと、違う楽しみ方ができるのではないだろうか。もっと自分の意思や願いを込めて、エンターティメントに触れてみてもいいのかもしれない。
そもそも作品から受け取る答えは、人によって異なるもの。エンターテイメント系の記事を読む人たちの中には、執筆者から見えた景色を知りたい人だっているのかもしれないし……。
自分の目から見たフィルターを通して、もっと作品に触れてみたい。楽しんでみたい。そう思い始めると、胸がワクワクした。
素晴らしい記事は、思考に変化を与えてくれる。もちろん、完全に考え方や人生を変えてくれる訳ではないけれど。文章は、そもそも魔法なんかじゃない。でも、少しでもそこから目線を変えられたり、考え方にいい変化を与えることができるのならば……
それって奇跡ではないだろうか。
◇
彼の記事になぜ魅せられるのか。おそらく私自身が、中学時代に剣道部だったことや、社会人になってからは、8年間よさこいや踊りに明け暮れていたからかもしれない。
恋愛系のドラマや映画を見ていても、なぜか姿勢や身のこなし方、筋肉の動きが気になってしまう。
NHKの大河ドラマ『べらぼう』だと、横浜流星さんや小芝風花さんの身のこなし方や姿勢が綺麗だなぁと思っていた。
横浜さんは空手、小芝さんはフィギュア経験者。「だから」という訳ではないかもしれないが、あのしなやかさはすぐに出せるものではなく、長年培われてきたものだなぁとも感じていた。
ハシマさんの記事を読み、アスリート目線でエンタメを楽しめる記事があると知れたのは、目から鱗だった。
スポーツはハマると面白い。その一方で狂気も孕んでいる。最初は楽しいからという理由で始めた人の目からも、次第に「それだけじゃダメだ」という目つきへと変貌していく。
大きなコンテストで受賞したい。評価されたい。もっともっと。そんな彼らは目つきと共に、筋肉にも畝りが生まれていく。これは文学コンテストといった公募の世界でも、同じことが言えるだろうか。
スポーツの場合、チーム戦になるとそうもいかない。楽しいだけじゃだめなのか。あの人は変わってしまった。本当はどの意見も間違いなんかじゃない。けれど、チームの意見がまとまらなくなると結果を出すのが難しくなる。
そんな時、言葉の並べ方。人柄。賢さ。そして、少し言い方は悪いが人を動かすために欠かせない洗脳力——団体の主(監督、顧問、リーダーなど)に「人を説得させる力」が必要になっていく。スポーツの世界は、人が集うほど複雑になり、上を目指すほど槍のような目つきをした人が増えていく。狂気が宿っていくのだ。
ハシマさんの記事は冷静な分析力の中に、スポーツの道へ足を運んだ人ならではの熱と、狂気がある。今をときめく俳優の横浜流星さんに佇むアスリートならではの狂気を感じ取れたのも、ハシマさんならではの視点だと感じた。
そんな戦いは、普通の人間にはできない。
やっぱり、狂っていなければ。
◇
ハシマさんは役者の狂気を掬い上げるのが上手い。そして自身のエピソードを作品の中へ、自然な流れで落とし込むのも見事である。
ライターという仕事は、「自分を出すな。黒子に徹しろ」と囁かれることが多い。けれどそれは、あくまで立場によって異なるものだ。
ライターといえども、仕事内容は玉石混交。仕事によって、時には自分を出す必要が求められることもある。
とくにインフルエンサー的な要素をもつライターの場合、自分の言葉により一層「強い価値」が出てくるのかもしれない。(※そういったタイプの場合、「顔出し」「トーク」「セミナー登壇」などなど、ライター以外の仕事が多いが)
筆者は最近、自分を仕事に出せない仕事の方が多い。だからこそ、いざそれが求められた時に躊躇してしまいそうな気もしている。
「ライターだから○○だ」ではなく、求められたら臨機応変に表現できる人。そんな風になれたらいいなと、いろんな方々の作品を読むにつれ、改めて感じている。
人の狂い方は人それぞれだが、私は静かな狂気の宿った文章が好みだ。読んでいてゾクゾクするから。ハシマさんの記事を読むにつれ、自分も私ならではの狂気と、視点を——時間がかかっても構わないから、少しずつ見つけていきたいと思えた。
【完】
(あとがき)
ここ最近、私のフォロワーさんの中で書く仕事を志す方が(ライターに限らずではありますが)増えてきた気がするので、私の中の推しライターを紹介してみました。
その企画を実施するなら、ハシマさんは絶対に第1回目と決めていました。(もしかしたら、一回で終わってしまうかもしれないけれども)
noteでは、独自目線や熱量のある記事を推奨している方が多めです。おそらく、書籍出版を目指す方が少なくないからかもしれません。
そのジャンルで思い浮かんだのは、コラム、小説、エッセイ、シナリオ(漫画やドラマなど)、オモコロやクレスタのような面白系、レビュー(商品やドラマ、映画など色々)、グルメ、旅行、インフルエンサータイプ、コラムニストとして活躍されている方という感じでしょうか。
ハシマさんはエンタメ系の仕事が多いので、ライターの仕事に多いSEO、商品やサービスの紹介(近いのはここかも知れないけど、少し違う気もしている)、インタビュー、取材といった仕事とはまた違うタイプではありますが……どの作品も魂がこもっていて好きです。
私の中では、それらを自分の中に落とし込み、きちんと飲み込んだ上で良作を紡いでいる方の中でも、第一線で活動されている方といえば、彼が一番先に思い浮かびました。
またいつか、気まぐれで素敵ライターさんを紹介したくなったら、誰かに声をかけるかもしれません。オンラインインタビューをしても面白そう。その時はよろしくお願いします。
