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【長編小説】真夏の死角 49 東北帝国とユダヤ人によるアジア支配計画

 荒唐無稽にも聞こえかねない僕の話を続けるにあたって、君にはなぜこの世界の仕組が確立され、その仕組がいかに今の日本、そして世界の政治と経済を動かしているのか、その仕組の根幹部分の誕生から説明しないといけないね。これは、よくある陰謀論ではなく、紛れもない事実なのだがそれは、これから語ることのリアリティでおのずから分かってもらえると思う。

 話が大掛かりなものになるので、最初に一つだけ分かりやすい真実を伝えておこう。

 それは、澤田明宏の投げたあの連続四球の最後の一球は、この世界システムが日本を飲むこんでしまう悪魔のシナリオを崩壊させた渾身の一球だったということだ。

 これについては、僕のこれからの話からいずれ明らかになるだろう。

 金融の常識として、大量の紙幣を刷ればそれはインフレを加速させるよね。だから、一見すると偽札づくりは儲かるように見えて、実は円の力をどんどん削いでいく行為に他ならない。ちょうど、麻薬中毒患者が注射器の針を自分に当てれば当てるほど表面的には元気になるのだが、それと同時に肉体の内部ではは取り返しのつかない崩壊が進行する。

 しかし、東北帝国が作り出した贋金を政府に担保させる仕組みは、無限に紙幣を製造してもハイパーインフレーションは決して引き起こさないのだ。

 なぜか。その仕組は戦争経済のからくりにあるんだ。

 当時、日本は欧米列強のアジアでの植民地をほとんど支配下においていた。満州事変からわずか半年の間で、日本はヨーロッパが200年かかって築き上げた利権をほぼ手中にしたんだ。それがどういうことを意味するか分かるか。実は大東亜共栄圏確立の本当の目的は現地住民、現地国土の支配などではなかったのだ。そんなものは、あの愚鈍な東條英機を始めとして日本政府、軍部上層部で誰一人として考えてはいなかった。

 日本が大東亜共栄圏を作り上げようとした本当の目的は、物的資源のない日本が国際金融市場で資金を調達し、国債先物取引市場で原油を調達する、未来永劫エネルギー資源に枯渇しないシステムを作り上げようとしたことだ。

 考えてもごらんよ。その昔今から3000年前、アナトリア半島で漁師だった人間が、たまには肉も食べてみたいと思った時に貨幣が生まれたよね。それまでは食べ切れるだけ捕獲していた魚を余分にとって、それを肉と交換する。そこに貨幣が生まれたんだ。

 つまり、貨幣を持っていれば漁師は放牧をしなくても、猟で獣を捕獲しなくても肉を食べることができる。これと同じ経済の根本原理はもちろんエネルギーについても未来永劫言えることなんだ。日本が原油を押さえていないということはたしかに問題であるけど、それが太平洋戦争の動機だとしたらそんなばかげた話はないよね。

 中国、東南アジアでは原油はほとんど産出されない。よくある無知蒙昧な戦後の歴史学者が言うように、日本がABCD包囲網に困ってエネルギー資源確保のために太平洋戦争を行わざるを得なかったというのは噴飯ものの妄想以外の何物でもない。もし、エネルギー資源の物的確保が目的ならば、日本は中近東諸国に対して国家の命運を賭けた戦争を仕掛けるのが当然だ。中国大陸や東南アジアを欧米列強から奪取しても、あんな貧しい地域を手に入れて天然資源や人的利権など何もない。

 現物利権がほしいのなら、大日本帝国陸海空軍のすべての実力を中近東に注ぎ、イランやサウジアラビアをイギリスとアメリカから奪取すればよい。アジアをわずか半年支配した当時の日本の陸海空軍なら、アラビア半島をまるごと占領下に置くことなどせいぜい2ヶ月もあればできただろう。

 それをしなかったのは当然だ。僕たちが生きている現実世界の実効支配など無意味な労力だからだ。この世界を牛耳るのに真に必要なのは、メタバース仮想世界の支配権を手に入れることだ。

 アジア地域を手に入れれば、アジア現地法人の欧米列強の金融システムが手に入る。これが満州国設立、大東亜共栄圏の確立、太平洋戦争遂行の本当の目的だったんだ。

 そして、その目的は完全に達成された。

 日本の当時の版図の中には、国際金融システムのがすべて入っている。あの時点の日本は、国際グローバル金融システムの最先端にいたんだよ。それは今君が生きている平成令和の日本が再び経済システムの課題としているグローバリズム経済の遥か200年は先を行くシステムだった。漁師が肉を貨幣で手に入れるように、日本は中東の原油を無尽蔵に手に入れる体制は実はすでに確立されたんだ。

 欧米が日本の本当の目的に気がついたのはそれが成立した後だった。そこで、欧米列強は日本に本当の意味で戦慄的脅威を抱き、大日本帝国を本土攻撃までやって無条件降伏に至らしめるまで壊滅させたんだよ。この大日本帝国と東北帝国とで築いたシステムそのものを壊す必要があった。これが本土爆撃、原爆投下、無条件降伏の真実だ。

 東北帝国はもちろん、その金融システムを確立する最先端にいた。大量の偽札はもちろん日本では使わない。そんなことをしたら、一気に日本はハイパーインフレーションに陥って、物価は1000倍くらいになって、米価は1杯の茶碗分で今の貨幣価値でいう200万くらいになっていただろう。

 東北帝国の偽日本紙幣はすべて、海外の植民地で使用されることを目的に作ったのだ。例えばどこでもいい。イギリスから奪い取ったシンガポールで偽日本紙幣を使ってロンドンのシティ経由で、中近東の主要な原油をすべて押さえることが可能だ。繰り返すが、シンガポールの国土や国民には何の魅力も感じない。ただ、大英帝国と当時最大の勢力を誇っていたロンドンのシティを手に入れること。つまりは、巨大なマネーロンダリングの拠点として大英帝国直轄領だったシンガポールが必要だったんだ。

 日本の偽札はこうして、世界中の本物の資源や本物の貨幣と交換され、余った富はすべて東北銀行に蓄財される。戦時下という特殊な状況が偽札を国家規模でマネロンするというビジネスモデルを可能にしたんだ。

 しかし、これが絵空事で終わらなかった理由は、この日本の国際金融システムの裏支配を、ユダヤ財閥が陰で支援してくれたからだ。

 1931年に満州事変が勃発した。

 石原莞爾は日本を満州事変から本格的な軍事国家へと導いた戦犯だとされている。これはとんでもない誤解だ。石原莞爾がやったことは、東北財閥と一緒に進めた国際金融システム確立の仕事だったんだよ。満州事変など、彼の国際金融システム確立の仕事との割合で言えば、わずか1%程度のことだった。

 満州事変が勃発した年に、フランシス・リンドレーが中日イギリス大使として着任した。そして、翌年にはジョゼフ・グリューが中日アメリカ大使として着任している。リンドレーはロスチャイルド一族の中でも巨大な影響力を駆使できる人物だ。そして、グリューは戦後アメリカ経済を支配することになるモルガン一族のトップだった。両方とも裏で第二次世界大戦を主導したユダヤ人であり、石原莞爾の親友だった。

 もちろん満州事変は石原莞爾がユダヤ財閥と綿密な世界支配についての青写真を書ききった上での行動だったんだ。だから、表向き日本政府はナチス第三帝国と外交上の軍事同盟を結びながら、裏ではユダヤ人の世界支配計画を東洋で一手にささえていたんだ。

 東北帝国では、僕がユダヤ財閥との窓口で、前にも書いたように悠理がゲッペルスを窓口としたヒトラー直結の表側の外交窓口だった。悠理が果たした役割は、まだ他にもある。

 戦後、上智大学を始めとしてミッション系大学の再編が行われたんだが、そこでは、バチカンを始めとして、イエズス会、真言会、日本基督教団メソジスト派、キリスト教改革派・長老教会、ルーテル教会、バプテスト教会、福音派、聖公会といったところの利権が複雑に絡みあった。

 これを今の形にしたのが悠理だ。

 ここにユダヤ教系の学校がひとつもないことが、君には異様だと思えないだろうか。これだけミッション系大学が普通に日本でも設立されているのに、日本ではユダヤ系のミッション系大学が一つもないよね。

 そして、澤田明宏があの最後の四球を出さなければ、上智大学や立教、立命館を始めとしたミッション系大学はすべて、廃校になっていた可能性がきわめて高い。日本のミッション系大学がすべて、ユダヤ系の学校になるかどうか、そんな計画があの時裏で進行していたんだ。

 東北の地に新設予定だった澤田明宏が内定していた大学は、日本で初めての本格的なユダヤ人系ミッションスクールだった。もう分かるね。そこがユダヤ財閥の日本支配の拠点となるはずだったんだ。

 もちろんその目的は第二次世界大戦時に果たせなかった、ユダヤの真の目的だ。ユダヤ教を広めることが第一の目的ではない。大日本帝国と手を組むことによってアジアを支配しようとしたユダヤの目的はいろいろな事情で壊滅した。しかしその野望は一度たりとも放棄されたことはない。ユダヤ財閥は、日本のミッション系大学をすべて支配することから、土地、人、金、のすべてを手に入れようと動き始めていた。

 話がとても大きくなってしまった。

 君はきっと混乱していることだと思う。

 しかし、すべては明らかになる。

 この一つ一つがゆるぎのない真実であり、すべての真実を知った時、澤田明宏が何者であったのか、君から聞かせてもらった澤田君に思いを寄せるあの美姫ちゃんは何を知ることになるのか。

 君はまだきみが知らないある視点から、そのすべてを知ることになるだろう。その視点が切り結ばれるその極点で再び、君と再び会えると思う。それまでは、本当にすまない。それまでは、僕のこの手紙を読むことによって決して自分勝手に動いたりしないことを切に願う。


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