よわよわ作家とつよつよ編集さん 8
8 イラストレーターさんを探して
かつてこんなに真剣に、pixiv(※イラストの多い投稿サイト)を観覧したことがあっただろうか――。
自分の原稿をやりつつ、時間があるかぎり、パソコンに張り付きました。
もちろん、pixivだけではなく、skeb、ココナラ、スキマ、X(旧Twitter)、その他のサイトも探します。
……でもね。
ふだんから「この人に表紙を描いてもらいたいな~」なんて(畏れ多くも)考えながら、イラストを鑑賞しているわけじゃないですからね?
急に言われても、思い浮かばないんですよ。誰それの絵が良いです! なんて。
あまりにも見る絵が多いのです。
ちょっと気になる方がいたときは、絵師さんのHPやブログも見るのでなかなか時間もかかります。
思ったんですが、私のような絵心のない人間が、他人様のイラストを見て何がわかるの、って思いません?
そうです。八割くらいはわからないのです。
せいぜいわかるのは、その絵が「好きか嫌いか」くらいで……どれだけ技術があるかとか、センスがあるかとか、イラストとして良いかどうかなんて、「ある一定以上の巧さの」絵師様の絵は、ほとんど判別がつかないのですよ。
つまり、「見る目がない」。
絵心のない、審美眼のない新米小説家が、イラストレーターさんを選んでいるのです。
罪深き所業ではないでしょうか……。
そんなこんなで、時間も経つのに比例して体力も削れていきます。
とうとう睡眠に影響が出はじめたので、やむなく、次のような基準を定めることにしました。
・自分の作品イメージに合う絵柄。(かわいい+キレイ+ポップ)
・老若男女、特に年頃の男の子をかっこよく描いている。
・背景や小物がおしゃれ。服装のアレンジがカッコイイ。
・(できれば)同性のイラストレーターさん。
2Pみつき「すごい上から目線じゃない……? 君、新人のくせにこんなこと書いてさぁ。作家生命、早々に終わりにしたいの?」
1Pみつき「す、すみませんですうううう――――――(スライディング土下座+おでこ地面)」
技術の高い絵師さまに対して基準とか何様だよって、自分でも思うのですが、「描いてくれるだけでありがたいので、誰でもいいです」とは言えません……作品のために。(追加で土下座。※ただし、最初から担当さんに「この絵師さんに決まりました」と言われたら、余計なことは言わずに了承するつもりでした)
しぼり出した数名の絵師様リストを、担当さんに提出します。
メールを送信。肩の荷が下りた~~とホッとしたところで、今度は別の不安が出てきたことを思い出しました。
それは――。
みつき「あれ……? 私の希望が通ったとしても、今から絵師さんに依頼して、三ヶ月で表紙ができあがるのかな……?」
そうです。出版日程どおりにいけば、本の発行は今から三ヶ月後。
ただし、有名な絵師さんであればあるほどスケジュールは後々まで決まっているはず……。今の時点で依頼をして、すぐに着手できる方なんているんでしょうか。
はたして、三ヶ月で表紙と装丁までいけるのかな? と、ちょっと嫌な予感を抱きつつ、返事を待つことになりました。
+++
本の発行日は、(こちらとしては)なるべく日程をずらさないでほしかったし、むしろ最速で出していただけたらありがたいなぁと思っていました。
その理由としてはいろいろあるんですが、いちばん大きなものとしては、心の『安心・安定』が欲しかったから……でしょうか。
だって、早く出ればそれだけ気持ちに区切りが付いて、次のステップにいけますよね?
あと、余計な不安にさいなまれる日々も、最小限にできるんです。
※※※余計な不安の具体例※※※
①「(編集部から)受賞まちがいでした」
②「賞はあげたけど、書籍化はなくなりました」
③「出版社の事情で、このお話はなかったことに……」
※※※※※※※※※※※※※※※
2Pみつき「ちょっと(笑)、思考おかしい」
1Pみつき「私も、そう思う(笑)……ただ、いつも考えてるわけじゃないよ。ふとした拍子に、わいて出るんだよ。この手の不安……」
そう、今どき(昔から?)何が起こるのかわからないこの業界。
自分に罪の覚えがなくても、何気ない日常で運悪く何かのトラブルに巻き込まれ、受賞取り消しなんてこともないとは言い切れません。
米田さんから返信がきました。
気づくのと同時にメールを開け、内容を確認します。最初の挨拶を飛ばし、ざっと目を走らせたところ。
米田さん『……ここにきてたいへん申し訳ないのですが、書籍化の話は流れそうです。理由としては、先日の編集会議の結果、みつきさんの作品が書籍化レベルに達していないということで……略』
みつき「ぴぎゃあああ――――――……っ(CV:養豚場の豚)」
夢でした。ほんと、夢に見ました。
寝起き最悪の状態で、ベッドからはいずり出て、メールの返信をチェックします。
やはり、米田さんからメールが来ていました。
米田さん『先日は希望の絵師さま方を紹介していただき、ありがとうございました。(略)
一点確認させていただきたいことがあります。(略)いずれの絵師さまでも現在の予定に合わせたスケジュールを取ることが難しく……ゆえにクオリティ重視のほうが、読者の反応や売上が期待できるので、予定日を遅らせたほうかいいと考えています。いかがでしょうか?
作品の改稿を素晴らしいペースでしていただきながら、とても心苦しいのですが、ご理解くださると嬉しく思います』
ぴえん(泣)
みつき「やっぱり、延びたかあ……」
ボク、野比のび太!と明るく叫んではみたものの、米田さんからのメールの内容が変わるはずもありません。
どう表情を作っていいのかわからない。
このまま夢の通りになりそうな気もしてきます。
出版社では日程がずれるのはよくあることなんだろうと思い、もちろん米田さんが一人でどうこうできる問題でもないだろうと思い、哀しみと笑いの半々くらいの気持ちで了承の返信メールにとりかかります。
みつき「いや、でも、待てよ……。私の希望を通してくれるつもりなら、なんでもっと早く聞いてくれなかったのかな?」
受賞から半年。もし、事前にそうしてくれていたら、予定通りにいけたのに? という思いがわいてきました。
2Pみつき「やっぱり後回しか、忘れられていたんじゃ……?」
1Pみつき「うるさいです! 2Pみつき、うるさいです! すぐそうやって悪い方向に考えるんだからもー!」
思考をふり払い、もう一度、最初に戻って考えます。
たしかにおかしい。
これまで余裕のあるペースで来てるのに、ここにきていきなり絵師さんの希望を聞くとか、米田さんらしくない。
『そうでしたか。残念ですが仕方ないですよね。』――という最終的な答えの用意はあるにせよ、モヤモヤを残してしまっていいのかな? という思いも同時にわいてきます。
1Pみつき「聞いちゃってもいいのかなぁ? なんでも聞いてって最初に言ってくれてたし……でも仕事の段取りまで口出して理由を聞くのって、ヤな感じの人だよね?」
2Pみつき「そうだね。人によっては、『お前、仕事ちゃんとやってんのか?』って言われているように感じるだろうね。ふつうの会社でいえば、新入社員が上司の仕事に文句を言うようなものだね。あるいは、無知ゆえのハズレにハズレた恥ずかしい質問になるやも」
そう。
ビジネスだからこそ人付き合いは神経を使う……。
担当さんは友人でもなければ仲良しフォロワーさんでもない。あくまで仕事を一緒にやってくれる取引先のえらい人です。
ひとつ、ふつうの会社と違うところは、一緒に創ってるものが私の作品という点でしょうか。それが微妙に関係のバランスをおかしくしている理由であり、つかみづらい点なのでしょう。
もしこの件で「この人、めんどくさいね」って思われたら、この先、信頼関係を構築するのは難しいかもしれない。
やりにくい上に、たいして筆力のない新米作家を、むこうが大事にする義務や義理はないのです……。
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