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🌙きっと、アルピニストより、私は忙しい。

子供のころから、どうも爪を噛みがちだ。
指の爪の白いところが1ミリでも超えると気になってしまい、夜ウトウトしていると、知らぬうちに噛んでいる。

また、ストレスが溜まると、めっちゃ噛んでしまう。
母や夫と喧嘩した時なんかネズミのようだ。

でも、まさか、爪を噛む時、私は実は幸せを感じているのか?
さっそく、爪を噛んでみた。
全く幸せとは言えない。
おいしくもなかった。



夫が最近ある登山家とお話する機会があった。
凍傷で指をなくしているガチのアルピニストだ。

夫はその人に一つ質問をした。

登山する時に必ず持っていくグッズはなんですか?

ナイフか?
薬か?
チョコレート?
ライター?
どんなものが、このアルピニストの登山を支えるのだろうか?

登山家はこう答えた。

歯磨きセットと爪切りです
自分の体を大事にしなければなりません。

ほー!歯磨きセットと爪切り!

予想外だった。

確かに数ヶ月もかけて山登りをするのだから、歯の健康管理は大切だ。虫歯になったり、歯槽膿漏になったりして、歯で食いしばれなくなったら、全力を発揮できず、岩壁を登れないだろう。

爪切り。これに関しては、別になくても良いのでは?と思ってしまった。だって正直爪って噛めるし、石や木で擦り磨けるじゃん?
私なら、爪切りがなくても、爪は伸ばさずやっていけそう…と思ったり。

でも、よく考えてみたら、確かにそうだ。
登山家に爪切りは必要だ!
足の爪はさすがに噛めない。

もし足の爪が伸びて、靴のつま先に抵触するようになったらすごく不快だし、万が一爪がもげたら、それこそ山登りなんかできなくなってしまう。
だから、爪切りがなければ、アルピニストにとって最悪命取りになり得る。

私はたまに爪を噛む。
爪切りがすぐそばにあるはずなのに、口元に手を伸ばす。
まさか、爪を噛むことで、スイスのアルプストレックの練習をしているのか?
ハッとして、手を口にやった。

たしかに、人生のアルプスを今謳歌していると思う。

我が家の氷河を登るために、早朝から包丁をドンドンとまな板に落としている。
アルピニストのザックのように、ほとんどの子供の荷物や世話を一身に背負っている。
耳をそばだてて天候を確認するように、ニュースと次女と長女の要求を同時進行で聞き分ける。
一日に何度となく、テント周りのおもちゃやゴミや食べかすを片付けている。
山でポイ捨ては厳禁なのに、最近の若い者は・・・

どうだろう、きっと、アルピニストより、私は忙しいのだ。

たしかに、我が家の山岳はまだまだ険しい。
だから、ちゃんとこまめに爪を切らねばならない。
でも、爪切りではなく、なぜか爪を噛んでしまう。

気づけば、足の爪だけは3ミリぐらい伸びていた。
足の爪を噛んでみようかと一瞬考えたが、
ヒマラヤの仙人みたいだから、やめた。

やはり、まずは、爪切りを探そう。
この山のどこかにあるはずだ。・・・どこだろうか。
そうして時が過ぎる。
私の登山は、やはり忙しい。
噛む方が早いかもしれない。

🌙




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