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🌙ワンワン坊やはカゴを見ている

ワンワン坊やはカゴをみている。その視線の先には、スライムになろうとしている夫の給料があった。

 令和の女子が夢中な物、食べ物で言えば…それはグミ。シールで言えば、それはボンドロ。手のひらサイズで言えば、それはモチトロスクイーズのメロジョイ。

 でも、私はそこまで流行を追っていない。家庭をおさめなければならない。家計をおさめなければならない。夫が人生の時間を溶かして稼いできたちょっとしたお金は、いとも簡単に指の間からドロリと流れ落ちようとしてしまう。まるでそれは、ドロドロのスライムのよう。

 せめて、やわやわではあるがメロジョイぐらいの弾性があり、元の形を保ってくれたら大万歳なのに、固いコインたちはスクイーズにもなってはくれず、チャリンと音もたてずにどこかへ溶けて行ってしまう。

 今日はグミの話をしようと思う。
 もちろんスーパーで買った方が安いことは重々わかっているのだが、夕方遅くまで働いている私としては、ちょっとした用でスーパーまでグミをわざわざ買いに行く時間的余裕がないので、やはり家の目の前の「全家=ファミリーマート」を使うことになるのだ。それこそが、コインをスライムに変化させる最たる理由だというのに、コンビニは令和日本人のタイパに貢献し
スーパーの二割増しぐらいの値段で商品を陳列してくれている。

 だから、今日のようにOFFの日には、なるべくコンビニを使わずに、お得に買い物をしたい。とにかく長女が好きな「グミ」これをどのようにゲットするかが、主婦の腕の見せ所だと考えている。(グミ買いこそが無駄遣いだというのはよしておくれ)そこで、家の近くの朝9時にオープンするダイソーに行ってみる。

 100円お菓子コーナーをじろっと見回してみる。最近は韓国のちょっと珍しいグミも多い。皮がむけるだとか、長いだとか、目玉だとか、もう良くわからないが、グミはますます個性を際立たせている。

 しかし、私はそのような個性に目を向けない。
家計のためだ。先ず袋をつかんで、その重さを確認する。
「うん、重量あるじゃん」
と思ったら、袋を裏返して、内容量を確認するのだ。
一グラム当たり平均単価をパパっと計算して、できる限り安いものを探して4袋ぐらいチャチャっと買うのが良い。

 コンビニで買うと、35グラムぐらいで150円はする。でも、ダイソーでは、100円で倍量ぐらいのグミが売っている。それが、「すっぱい大作戦グミ」だ。レモン味で70グラムで100円。それが一番安いと、つい最近まで思っていた。

が、ここ最近、とんでもなく懐かしい坊やがダイソーにやってきてくれた!!

ワンワン坊やだ。決して、NHKの赤ちゃん界のスター、緑のたれ耳の“中の人が70代目前”の犬ではない。

 このワンワン坊やは、意味不明な顔をしている。のび太君風なのだが、大きな口を開けて笑っているのだが、アッカンベーをしているようにも見えるし、ただ口を大きく開けてニカっとしているようにも見えるが、目線は明後日の方向なのだ。一体彼は何を見ているのか。しかも、全身バージョンでは謎のタンクトップなのだ。令和では、タンクトップで幼児を道に散歩させていたら、ちょっと白い目で見られるのに。

 そうなのだ。ちょっと私達からみたら、違和感しかない坊やなのだ。これをワンワン坊やと言う。

 このワンワン坊やのグミは、さっきの「すっぱい大作戦」レモン味よりとてもお買い得だ。
 5連で一小袋あたり20グラム入っている。つまり、100円で100グラム。一グラムあたり1円なのだ。そしてオーソドックスにおいしい。歯ごたえも硬すぎないし、サイズも小さいので、子供が詰まらせる心配もない。安いし安全面も問題ない。グミの素材もぱっと見問題なさそう(ナチュラル系ママさんからは白い目で見られているでしょう)

 ということで、朝9:15、このワンワン坊やグミ三種類を一連ずつガシッと掴み、ついでに「すっぱい大作戦」にも手を伸ばした。そこでハッとした。「すっぱい大作戦」の黒い袋の左上に、小さく「ワンワン坊や」が佇んでいた。明後日の方向を見ながら、わたしをニタニタ笑っている。

「……僕の存在にようやく気付いたな。ひっひっひっ」



 私の背中は一瞬ぞわぞわとした。まるで毛虫が這っているかのような悍ましさであった。それはなぜか。私とこの坊やとの関係は第二部でお知らせしたいと思う。


話を元に戻す。今日の朝活:ダイソーグミパトはこのように冷や汗と共に終了しようとしていた。レジ台で、スキャナーの赤い光の前に商品のバーコードを照らそうと思った時に、あることに気が付いた。買い物カゴの中には、たくさんの商品がざわめいていたのだ。一体いつの間に買い物カゴが満員バスめいてきたのか。ワンワン坊やではない。紛れもなく私のせいである。



 ワンワン坊やのナゾの視線は、きっとわたしの買い物カゴの中身だったのだろう。多すぎるだろう、これじゃ相変わらず旺旺(ワンワン)できないよと。

こうして夫のちょっとした給料は、スライムになった。

🌙


▼第二部

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