🌙自分が猫になる一冊『ノラネコの研究』
今日は好きな本の紹介をしようと思います。
『ノラネコの研究』という、福音館書店の本です。
この『ノラネコの研究』という本は、福音館の月間定期購読絵本「たくさんのふしぎ」で刊行されました。その中でも特に人気のあった作品だけが、ハードカバーの『たくさんのふしぎ傑作集』として出版されます。そして、この「ノラネコの研究」も傑作集です。
幼稚園のころ、たくさんのふしぎシリーズを定期購読していて、毎月毎月読み漁っていた記憶があります。3年生ごろまで購読していたかな・・・自然科学・社会科学、人類文化学、いろんな事象を、素敵な写真やイラストで、わかりやすく解説しています。今でもたくさんのふしぎシリーズが大好きで図書館で物色してしまいます。
この「ノラネコの研究」の本の存在はずっと知りませんでした。そして、四年ほど前、本屋さんの片隅で埃をかぶっていたのを偶然見つけました。開いてみると、その内容の精緻さと、猫へのひたむきな愛情に私はいたく感動して、すぐに買いました。1300円でした。これはたくさんの不思議シリーズ傑作選の中でも、ひときわ輝いているなぁ!と胸に響きました。
この本は、猫の研究家である井澤さんが、どうやって野良猫の生態を追いかけるのかという話です。舞台は1980年代の九州の小さな港町。そこらかしこで野良猫が幅を利かせています。
描かれる町の様子は、さながらドラえもんの町のようで、子供たちが空き地でワーワー遊んでいたり、お母さんたちが買い物帰りに井戸端会議をしたりと、のどかな生活感で溢れています。でも、井澤さんは、そんな人間らしい普通の生活には目もくれず、必死に野良猫を追います。さすが、野良猫研究家です。井澤さんはこの町のすべての野良猫を見知っていて、名前もつけ、個体別のデータを収集しています。この絵本では、「なおすけ」という猫の一日を、井澤さんが追跡調査することになります。
野良猫の追跡は、ドラマチックな探偵業です。猫ですから、突然垣根の向こうへ行ってしまいますし、かと思えば何時間も寝てしまったりもします。それに、人が近づくと警戒されて逃げてしまうので、絶妙な距離を保ちながら、井澤さんはこっそりとなおすけを追跡します。時には、「なおすけ」とほかの野良猫たちとの喧嘩も発生しますが、井澤さんはどの猫がどんな性格なのか把握しているので、そんなひりひりハラハラの火花シーンも、何となく愛らしく思えてきます。
孤高の野良猫「なおすけ」には、お気に入りの昼寝場所があります。他にも、ランチタイムのゴミ箱、おやつをあさるゴミ箱、夜の寝床、嫌いな犬がいる家・・・この町のある一角で、「なおすけ」は自分のお気に入りの場所をいくつも抱えながら過ごしています。そんな「なおすけ」の一日を見ていると、その孤高さが、一人暮らしの若い男性のような気がしてきます。そして、しまいには、自分が猫になった気分で、この街の隅々まで理解していることに気づくのです。
この本を読んでから、家の周りに出没する野良猫の生態に俄然興味が出てきました。あの子はいつもどこでご飯を食べるのかな? どこで昼寝をするのかな? 秘密の抜け道はどこなのかな? と。
猫が好きな人はもちろん、動物園で働きたいなと思っているお子さん、動物の研究をしたいなと思っている人には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。動物の生態行動研究の基本が手に取るようにわかります。フィールドワークはとても大変だとは思うのですが、そこに辛さは全く感じず、読後感は「好奇心」しかありません。猫を研究していたはずなのに、まるで、自分が猫になっていたことに気づくそんな一冊です。
最後に、裏表紙の奥付を開きます。1991年発行。2016年第17刷。
2016年第17刷???
2016年第17刷???!!!
え?? たくさんの不思議の割には、結構刷っているのでは?
そう思って、福音館のHPを開きました。
たくさんの不思議傑作選のページを開いたら……
やっぱりありました。
「ノラネコの研究」はTOPに掲載されていました。
やっぱり人気があるんだなぁ。
私の感性は間違ってなかった!!
むふふ。なんだか嬉しいにゃおん。
🌙
追記:たくさんの不思議、もっと読みたいな。「ゾウの時間・ネズミの時間」も新書ベースで中学生のころ読んだけど、このたくさんの不思議シリーズでも読んでみたいなぁ。
