確かめる勇気はなかった
7月24日は、地蔵の縁日。坂の途中の地蔵は、いつからそこにいるのか誰も知らない。花だけは、誰かが替え続けている。
(

声に出したのは、癖のようなものだ。誰も聞いていない。地蔵も、たぶん聞いていない。そう思っていた。
活け終えて立ち上がる。夕方の風が坂を吹き上げてきて、前髪が持っていかれる。ふと顔を上げたとき、あれ、と思った。
地蔵の顔の向きが、さっきと違う気がする。
「……誰か、待ってた?」
口に出してから、少し馬鹿らしくなった。地蔵は何も答えない。私はそのまま坂を下りることにした。振り返らなかった。

歩き出して数歩、足元に小石が転がっているのに気づく。さっき通ったときにはなかった気がする。拾い上げると、少し温かい。日陰にあったにしては、妙に。
「……気のせい、気のせい」
そう自分に言い聞かせながら、坂を下り続けた。言い聞かせているということは、たぶんまだ納得していない。

夕焼けの道を歩きながら、何度も同じ言葉を繰り返している自分に気づく。「気のせい」を二回言うのは、もう気のせいじゃないと半分わかっているときだ。
やっぱり、確かめるべきだったのか。振り返れば、地蔵はまだあの坂にいる。
でも、確かめる勇気はなかった。
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