息子の遊びがアナログからデジタルへ
真っ赤なフェラーリ
黒のポルシェ
青の軽トラ
白の軽トラ
フォークリフト
棚にずらりと並べられたお気に入りの大きめの車のおもちゃたち。
引き出しには、大量のトミカやさまざまな車のおもちゃがパンパンに詰まっている。
中でもスーパーカーは特別で引き出しとは別のボックスに入っている。
どこに行くにもトミカのお気に入りを何台も持って行った。
お風呂にだってトミカと毎晩一緒に入った。
最初は4台までと決めていたトミカも気がついたら20台以上のトミカと一緒に入っていて、お風呂トミカレースで夢中になって遊んだ。なかなかお風呂から出なくて大変だった。
歯の手術だって
予防接種だって
トミカで乗り越えた。
ふと見ると、お気に入りの車たちに埃がたまっていた。
もう随分トミカの引き出しを開けている姿を見ていない。
外出する時もトミカを連れて行かなくなった。
トミカのご褒美がなくても予防接種を乗り越えられた。
トミカと一緒にお風呂に入らなくなった。
プラレールも
積み木や磁石も
なんだか、静かだ。
リビングを秘密基地だと言って占拠された日も
滑り台だと言って階段を布団で埋め尽くされた日も
手作りの釣竿を作って家の中で釣りごっこをした日も
すでに懐かしい。
目の前の壁に飾ってある絵を眺めながら、思う。

絵もだいぶ描かなくなったなぁ。
常にB4サイズのお絵かき帳が6冊くらいストックしてあって、いつもあっという間になくなっていった。ストックを切らした時は、電チャリかっ飛ばして近くのお店に慌てて買いに行ったことも多々あった。
そのくらい息子が「絵を描くこと」を、私は大切に大切にしていた。
息子の描く絵が大好きで仕方ない。
同時に「絵を描くこと」は息子にとっても大切なことなんだと、勝手に思っていた。
次から次へとなくなっていったお絵描き帳も、気がついたら残り3冊のところでストップしている。
就寝前の絵の具要求もされなくなった。
お風呂上がりに早く工作がしたくて、裸でグルーガンを握っていた息子の姿が懐かしい。
どんどん作品を作っていくので、その勢いに私が追いつかなくて、溜まりゆく作品たちの置き場所に頭を抱えていたあの日々は、一体どこに行ってしまったんだろう。
作りかけの粘土作品は、完成されることもなく部屋の隅にひっそりと置かれたまま。
ついこの間まで
あんなに描いていたのに
あんなに作っていたのに
私の気持ちが追いつかない。
去年のクリスマスに我が家もSwitchを解禁した。
夫と話し合いを重ね、決めた。
マイクラ好きの息子はもちろん大喜び。
ずっとタブレットでやっていたマイクラを大きな画面でできるのだ。
ゲーム時間も今まで30分のところをかなり広げることにした。
憧れのSwitch
それからというもの、息子はデジタルの世界に夢中だ。
私に色々話してくるけど、全くゲームを知らない私にとっては何かの呪文にし聞こえない。
そう、私は根っからのアナログ人間。
正直何が面白いのかもさっぱりわからない。
でも、息子がものすごく楽しそうなのはわかる。
私の知らない世界で、息子はキラキラした目をしている。
「絵の具の準備してー」
「ペッドボトルの蓋に竹串刺してー」
「一緒に折り紙しよう」
「牛乳パックで電車作ろ」
一緒に何かしようって誘われると、いつも眠たくてめんどくさくてため息ばかりだったのに。
なかなか料理が進まなくてあんなにイライラしたのに。
ゲームに夢中な息子からは、その声はもう聞こえない。
寂しい。
「マイクラもデジタル版のものづくりだよ」
と夫は言う。
「よく見てごらん。めちゃくちゃ頭使うからあれ。彼、めっちゃ工夫して一生懸命作ってるよ」
仲良しの晴れパンさんの記事を読んだ。
正座して。
このままだと、置いていかれるぞ私。
ぶっ壊せ価値観。

私は、デジタルの世界を何も知ろうとしていないのだ。
夫は言う。
「そりゃ、変わっていくよ。成長だよ。僕も通ってきた道だからね。彼の気持ちもわかるよ」
アナログの世界からあっという間にデジタルの世界に行ってしまった。
ついこの間まで、グルーガン片手にダンボール作品を何時間もかけて作っていた彼の両手には、今、Switchが握られてる。

「お母さん!見てーー!すごい家を建てたよ!自画自賛!!!」
と、私を呼ぶ。
見ても、何がすごいんだかさっぱりわからない。
わからないけど、これだけ興奮しているんだからきっとものすごく頑張ったんだろうな。
息子は変わってしまったのか。
息子の顔を見てみる。
めちゃくちゃイキイキしてるじゃないか。
いい作品を作ったときに「お母さーーーん!!見てーーー!」と私を呼ぶ声は、何も変わってないじゃないか。
「今まで工作やってきたこと、活かされてるわーーー」
とか、言ってる。
完全に私を意識した発言に笑ってしまう。
長々と書いてきたけど
つまりは結局のところ
ただ
寂しいってだけ。
寂しい。
寂しいよ。
憧れているnoterさんが言った。
「寂しいと思うのは、今めちゃくちゃ幸せな時間を過ごしているから」だと。
「お母さーーん!見てーーーーー!」
見てもわかんないけど。
でも、この私を呼ぶ声だって、いつかきっと呼ばれなくなる。ついこの間までよく呼ばれてたのになぁ〜って、寂しく思うんだろうな。
世の先輩お母さんたちは、この寂しさ、みんな通ってきたんだろうなぁ。
めっちゃ寂しいですね、笑。
お正月に息子が突然「お母さん、お母さんの顔描いてあげようか」と言ってきた。
顔を描くのが苦手なのに。
カシャ。
私の写真を撮り、見ながら描く。
暫くすると「あーーここまでしか無理っ!すっごい手汗かいてる」と言って、顔以外描いたところでギブアップ。
手を触ると、しっとり汗をかいていた。
顔描くの苦手だもんね。
顔は、弟が描いてくれた。
8歳の長男ともうすぐ6歳の次男の共作。
2025年、私の顔。

やっぱり、私は息子たちの絵が好きだ。
今はまだSwitchデビューして1ヶ月。そりゃー夢中になるのは当たり前。
息子は文が読めないし書けないので度々私を呼びつける。
アナログの世界で寂しくていじけている私はいつもイライラする。
聞かれてもわからないし。
自分で読めるようになってほしい。
ゲームのこと私に聞かないで。
私は眉間に皺寄せながらそんなことを思ってしまうのだ。
まだゲーム時間も探り中で定まっていないので度々もめる。
息子と言い合いになり、ついに私はブチッと切れた。
もう気持ちがぐっちゃぐちゃになり泣きながら鬼の形相でお皿を洗っていた。
暫くして反省した息子が謝ってきた。
私はまだ怒りの中にいて受け止めることができなかった。
「工作するー!」
息子が久しぶりに工作グッズを漁り出した。
私は、その一言に鬼の仮面がパリンと割れ涙腺が崩壊した。
久しぶりに聞いたその言葉。
ついこの間まで毎日言っていた言葉なのに、その言葉が今は愛おしくてたまらない。
嬉しい。
嬉しい。
涙が止まらない。
「お母さん、できたよ。お母さんのために作ったよ」
私の手の平にのせてくれた瞬間、私は泣き崩れてしまった。
「嬉しい。『工作する』の言葉が嬉しくて嬉しくて。お母さん、◯くんが作るものが大好きで大好きで。だからものすごく嬉しい。ありがとう。本当にありがとう。嬉しい。大切にするね」
私は息子を抱きしめた。
小さな声で「うん」と言いながら、息子も私の背中をぎゅっとしてくれた。
私は、急にやってきた息子の成長にただひたすらに寂しかったのだ。
寂しくて
寂しくて
寂しくてたまらなかったんだ。
私は息子の作品が大好きだ。
息子はボードゲームやカードゲームなどのルール説明を聞くのが苦手だ。
だからなかなか取り入れられないのだけど、先日UNOで遊ぶ機会があり、その単純なルールに息子もどハマり。
我が家にもUNOを導入した。
エンドレスUNO。
私があまりに強いので、弟と手を組み「お母さんをぶっ倒す!」とハイタッチしていた。

しかし、私は強かった。

「デジタルのゲームは弱いけどアナログのゲームは強いんじゃーーー!」
と、大人気なく叫ぶ母の姿に苦笑いしていた息子。
ね。
そういうことだよね。
何でもみんなで楽しめばいい。
わかんないじゃなくて、デジタルな世界も一歩足を踏み込んでみたら景色が広がるかもしれない。わかんなくても、息子が夢中になる理由がちゃんとそこにはあって、それを知ろうとすることは大切なことだ。
「ゲームは悪だ」なんて、いつの時代の話だ。
息子の両手に握られたSwitch。
その先には息子のデジタルなものづくりの世界が広がっている。
アナログもデジタルもどっちもあっていい。
息子の想像力と創造力で生み出された世界
息子の手から作り出された世界
そこに変わりはないのだから。
おもしろくてワクワクする世界
もっともっと広げていこう。
母さんも、頑張って追っかけるよ。(たぶんね)

今回、くりすたるるさんの企画に参加させて
頂きました。
意識して書いてなかったのですが、書いていたら自然に「手」に繋がる記事になりました。
るるさん。素敵な企画、ありがとうございます!
