繊細息子、遠足へ行く
繊細息子にとって、運動会やら音楽会、さつまいも掘り田植えなどの学校行事は試練でしかない。
遠足も、また然り。
まぁ、学校に行っていないのであまりもう関係ないけど、その都度担任の先生からお伺いがくるわけで。
息子は現在小学2年生。去年の小学1年の時の遠足は動物園だった。
担任の先生と相談してなんとか行くように促したが、息子は行こうとしなかった。
とても落胆したのを覚えている。
今年は、一般級と個別級で2回も遠足に行くとの連絡がきた。どちらも水族館らしい。
私はもう頑張ることをやめたので、ふーん、って感じだった。一応息子にも伝える。息子もふーん、って感じで、親子揃って、ふーんだった。
駄菓子菓子
先生は熱かった。
現地集合でいいし、お母さんと一緒に回ってもいい。抜けたくなったら抜けていい。別行動でもいい。幼馴染のHちゃんと同じ班にしてくれるなど、息子が安心して遠足に来られるようにものすごく考えていてくれたのだ。
極め付けは、、
バックヤードツアーがあるよ?
とのこと。
これには、息子の好奇心がビビッと反応した。
「行く!」
先生のガッツポーズが見えた気がした。
それでも、当日「行かない」ってことは大いにあり得るので、私は「OK」とサラッとこたえ、念のため聞いてみる。
「お母さんは、、一緒に行った方がい、、」
「うん!」
語尾の「いい?」にかぶせ気味の即答。
ですよね。
付き添い遠足決定である。
まず最初は幼馴染のHちゃんのいる一般級の遠足。
富士山と江ノ島を一望できるところにある【新江ノ島水族館】だ。
私と息子は、現地集合。
学校から出るバスには乗らずに、2人で電車で向かう。
朝からとてもスムーズで、なんか拍子抜け。
こういう時もあるのだ。ものっすごく稀だけど。
久しぶりに息子と電車に乗る。

なんだか新鮮。
昔はよく電車に乗ってお出かけしてたなぁ。
スムーズすぎて、集合時間より早めに水族館に到着してしまった。
その時、先生から「渋滞していてかなり遅れそうなので、浜辺で遊んでてください」と、連絡が入る。
ちょいちょいちょーい!
浜辺で遊んでって、先生よぉぉぉ。
浜辺なんて息子にしたら
誘惑が多すぎる件
そして
江ノ島がすぐそこに見える件
いつ気が変わるかわかんないよ?
でも、水族館前は何んもないし、息子と浜辺で時間を潰すしかなさそうだ。
ひゃっほーぅ!
冬の海!
遠くには富士山!

なんか、ええやん。
冬の海。

息子が握っていた私の手をパッと離し、走り出した。
貝殻拾ったり
波打ち際で波と遊んだり
棒でなんか描いたり
砂でズッコケる1人コントしたり
遠くでその姿を見つめていると、ふと息子の動きが止まり、じーっと遠くを見つめている。
その目線の先を辿ると・・・・
やばいぞ。
やばいぞやばいぞ。
息子は、じーっと見つめていた。
江ノ島を!

ほらほらほらぁ!
言わんこっちゃない!
言い出すよ?
言い出すよ?
「お母さーん!」
ほら、くるよくるよ?
「江ノ島行きたくなってきたぁー!」
ほれみなはれ!
せっかくここまできたのにー!
繊細息子の気なんてほんの一瞬で180度変わっちまう。恐れていたことが起きてしまった。
とりあえず、
「そうなんだー!」
と、サラッと流す私。
早く!早く!一刻も早く来てくれ!
今なら今ならまだ間に合う!!
なぜ、なぜ、道は渋滞するんだ!
ブルル・・・とスマホが震える。
「すみません!!着きました!〇〇さん、だ、だ、大丈夫ですか?」
ああ!!!!助かった!
「○くーーーーーん!先生たち着いたって!!」
息子の気持ちが完全に「江ノ島」にシフトする前に到着してくれた。
ふぅ。
一般級の子供たちと先生たちと合流すると、Hちゃんがすぐに気がついてくれた。
「○くーーーん!」
チラッと息子を見ると、鼻の下が伸びていた。
「どうする?Hちゃんの後ろ行ってみる?」
と聞くと、コクっと小さく頷いた。
ぎゅっと私の手を握る力が強くなるのがわかった。
一般級は2クラスしかない。合わせて70人強くらいだ。それでも息子のとってはあまりにも多い。
Hちゃんの後ろに座る。私が。
息子は照れているのか、私の背中にべたっと張り付く。Hちゃんときゃっきゃっ女子トークに花咲かす母。息子そっちのけ。
もう小学2年生にもなると、グループごとの行動らしい。リーダーがいて、副リーダーがいて、時計係も。時間になったらイルカショーの場所に集合らしい。
え、もう子どもたちだけで行動するんだ、と少々驚いた。
「私がリーダーだから!◯くんとmikaさんは後ろね!ついてきてね!」
と、リーダーHちゃん。
しっかりしてんなぁ(お嫁にきてくんないかな)
そして、時計係がねぇ、私のツボに入ってしまった。もうね、数分ごとに「今、何時何分なんで」って、時計係に配布されたであろう腕時計をリーダーに見せに行く。「もうー!そんなに言ってこなくていいー!」ってHちゃんに言われていたTくん。
いいよ!いいよ!その責任感!
私は彼の仕事っぷりに心の中で拍手を送った。
この日は、他の小学校や幼稚園、中学校と団体客だらけで、館内は人人人で溢れかえっていた。もう、何が何だかわかんない。私ですらかなりのストレス。「ほら!次行くよ!」と、リーダーHちゃんが叫ぶ。全くゆっくり見られない。そのうちHちゃんとも逸れてしまう。
息子の表情はあっという間に引き攣り曇ってしまった。
「ねぇ、バックヤードツアーは?」
そうだ!それがあった!
人混みの中、何とか先生を見つけてバックヤードツアーのことを聞くと、なんてこった!それは個別級の方の遠足だったことが判明。
ガーンガーンガーン・・・
ごめんね、母の勘違い。
「もう帰りたい」
だよね。
完全にテンションが下がってしまった。
「ちょっともう一旦離れます」と伝え、イルカショーで合流することになり、息子と私は早々に集団から離脱した。
歩いていると、クラゲファンタジーホールが比較的空いていたのでそこのソファに2人で座った。
息子は、じーっとクラゲを見ていた。
何も喋らなかった。
背負っていたリュックを膝に乗せ、肩ベルトに結びつけていたみんなとお揃いの緑のバンダナを静かに外し、私に手渡した。
「疲れちゃったね」
「ラムネ、食べる?」
と差し出すと、ゆっくり袋を開けラムネを口の中に入れた。
ラムネを舐めながら天井を見上げて、
「ここは、落ち着く」

と、つぶやいた。
気がつくと、私たち2人だけしかいなくなっていた。
そうだね。
落ち着くね。
こんなに人が多くて、楽しみにしていたバックヤードツアーもなくて、以前だったらもう、激おこぷんぷん丸でそれはそれは大変なことになっていただろう。
でも、取り乱すこともなく、息子は静かに自分の落ち着く場所と時間を自分で探したことに、成長を感じた。
しばらく、ゆらゆらゆっくり動くクラゲを2人で見ていた。

イルカショーの時間になり、みんなと合流し、昼食。終わったらもう別行動がいいというので、そこで完全に離脱。
なんだかめちゃくちゃ疲れた。
なので近くの喫茶店で甘いものチャージ。

この感じでは、個別級の遠足は厳しいかもな・・・と、半ば諦めていた。
駄菓子菓子!
なんと息子は個別級の遠足に「行く」というのだ。バックヤードツアーが気になるらしい。
個別級の遠足は、【八景島シーパラダイス】というところで、白イルカちゃんがとても可愛くて超人気スポットだ。
当日。
やっぱりとてもスムーズだった。
個別級の遠足も現地集合。
現地に着くと、
「あら!◯くんじゃない!遠足来たのね!」
おお!そんなあなたは砂場のプリンセスじゃありませんか!
私は、奥深くに続く物語りを期待していたが、残念ながらプリンセスとは全く班が異なり、完全に別行動だった(世のプリンセスファンのため息が聞こえます)。
今回の水族館は敷地も広く、他の団体客がいてもさほど窮屈には感じられなかった。個別級も16人なので、一般級の時よりも気持ちゆったりしていた。
でも、息子は私の手を片時も離さず、ずっと、私の匂いをクンクン嗅いでいた。
みんな、親元離れて、ここまで来てるんだなぁ。と、前に並んで歩くみんなを眺めながら、ただ、その事実だけを思った。
クンクンクン・・・
クンクンクンクンクンクンクンクン
クンクンクンクンクンクンクンクン
クンクンクンクンクンクンクンクン
って、もうええわ!
あまりにクンクン私の匂いを嗅きながらまとわりつくので、一度だけ、えーい!離れんかぃ!っと嫌になってしまった瞬間があった。
でもこの時、みんなの声が聞こえてくる気がした。
みんなとは、同じ境遇で今、一緒に支え合っている仲間のことだ。
いつも、私たちを見守ってくれている人たちのことだ。
「きっと心細いんだね」「緊張してるんだね」「お母さんの匂いって安心するよね」「ここまで来れただけでもはなまるだよね」
みんななら、こう言ってくれる気がした。
私の一瞬感じたその感情は、その声によってすぐに上書きされ、優しく息子の頭を撫でることができた。
私は、1人じゃない。
心強いエールを確かにその時感じて、みんなに感謝した。


水族館って、いいよね。
個性があるね。
息子はじっくり見たい派だけど、遠足なんでね、次々進んでいかなくちゃいけない。
先生が「すみません、ゆっくり見させてあげられなくて」と気遣ってくれる。
でも、息子は不平不満を漏らすことなく、淡々とみんなの後に着いて行った。
もちろん、私の手をぎゅっと繋いで。
待ちに待ったバックヤードツアーの時がきた。
息子のワクワクが繋いだ手のひらから伝わってくる。
バックヤードツアーは普段は見ることのできない水族館の裏側を解説付きで見られるという何とも魅力的なツアーだ。
クラゲを飼育していたり
ショーの出番前のイルカやペンギンを見られたり
食事中のセイウチを間近で見られたり
30分のツアーだったが、とても興味深かった。
普段見ることができないその「特別感」が息子の好奇心をくすぐってくれた。
そのあとは、イルカショーをみんなと見て、帰る時間だ。
帰るのは別行動がいいというので、そこでみんなと別れたが、結局個別級の遠足は最後まで一緒に回ることできた。
終始私の手を握り、クンクンずっと匂いを嗅いでいたけれど、いろんなタイミングで息子の成長を感じることできた。
遠足に行けて良かった。
突き動かすは、好奇心だ。
え、何、おもしろそう!
行ってみたい
やってみたい
ワクワクする!
その好奇心こそが、息子の背中を押してくれる。
遠足が息子の中で、よほど楽しい記憶としてインプットされたのでしょう。
さっそく、アウトプットしてました。

やっぱり、クラゲが好きなのね。
