息子の送迎と付き添いの日々を私は語る
勘弁してくれ。
私の父が、断りもなく勝手に1000ピースのジグソーパズルを持ってきた。
しかも、雪山の風景画。可愛さの欠片もないやつ。
「うわぁぁぁありがとう!!」
貰えるものはなんでも貰っちゃう息子。
「今すぐやりたい!」
はい。そうなりますよね。当たり前です。子どもは「今」を生きているんです。
「オッケー!!!やってみよう!」
なーんて、私が言うとでも?
1000ピースだよ?それなりの大きさになるよ?どこでやるの?最後までやり遂げる自信はあるの?しかもテンションが上がるような絵じゃないよ?仮に完成したとしてもそれどうするの?どこに置くの?リビングはもうあなたの物だらけで置くところなんて1ミリもないよ?
と本当は質問攻めにしたいくらいだけど、とりあえずお口チャックで様子を見る。
私の勘では恐らく彼は、、、、途中で飽きる。
リビングでやるしかないからきっとここで広げることになるだろう。
想像しただけで、、、邪の魔である。
なんとか上手いこと言って、ひとまず我慢してもらった。
クローゼットにしまって、このまま忘れて頂こうという作戦。
駄菓子菓子、彼はいつまでも覚えていた。
ふむ。ここまでしつこいということは、本気でやりたいのかもな、、、。
できるだけ息子の「やりたい」は叶えてあげたい。現在不登校の息子の「やりたい」に「きっかけ」が隠されているかもしれない。
問題は、、、場所である。
やらせてあげたいけどリビングはやはり厳しい。私が悩んでいると、
「居場所でやるのはどお?」
息子がナイスアイデアを出してきた。
さっそく息子が通う居場所のパーマ先生に聞くと快く息子の「やりたい」を承諾して下さった。息子はテンションぶち上がり小躍り状態である。次の日居場所にルンルンで向かうことができた。やはり「やりたい」は大きな力になる。
ジグソーパズルを持っていくと、パーマ先生がさっそくパズル用の板を用意しておいてくれた。
「○さん!じゃあ目標を決めようか!!!」
パーマ先生が張り切って声をかけるが、この手の提案には塩対応を貫く息子。
「じゃあ・・・【最後までやり遂げる!】っていうのはどうだい?!」
ホワイトボードにパーマ先生が目標を書いてくれたが、息子はチラッと見てどこかへ行ってしまった。
おいっ!
とツッコミを入れてくれるパーマ先生。いいコンビである。
そんなわけで、晴れてジグソーパズルを居場所でやることになった。
意外にも1000ピースのジグソーパズルは居場所の大人気アイテムとなり、毎回居場所に行く度にいろんな子どもたちや先生、ボランティアの方たちが代わる代わるパズルを囲み真剣な眼差しで取り組んでいた。
気になる。
気になる。
息子がそこにいない!
初日にパーマ先生と取り組んでいたのを見たのが最後。それ以降全く息子がパズルをしているのを見かけない。
先生に聞いてみた。
「○さんは、総監督として我々を見守ってくれています!!!!」
息子はまさかの総監督になっていた。
総監督って何よ。
ある日。
息子が居場所に着いてすぐに「もう帰りたい」「そばにいて」「やることない」「つまんない」と連呼してきた。
珍しい。
最近はジグソーパズル効果もあってスッと離れられていたので、私は送迎送迎送迎の日々を送ることができていた。
今日はなかなか離れてくれない。
付き添いコースか?
いやだなぁ・・帰りたい・・・。
「おっ!パズル結構できてきたねー!」
私はしれっと話題を逸らし、ジグソーパズルに取り掛かる。
何これ。
全っ然わかんない。
父が断りもなく勝手に持ってきたジグソーパズルは、空と雪山と川が描かれていて、これと言って特徴がない。
めっちゃ難しい。
1つもピースがはまらない。
私がパズルを始めると、息子も隣でやり出した。
しめしめ・・・導入成功。
これでノリノリになったところで、先生とバトンタッチをしてスッと離れよう。
これが私の描いたシナリオだ。
タイミングをミスるんじゃないぞmika!
どこに地雷があるかわからない。
地雷踏んだらこのまま付き添いコースになるぞ!
気を引き締めて見極めるのだ!
しかし、ムズイな。
全っ然はまらない。
雪山、全部白やん。
空、全部青やん。
特徴ないやん。
可愛くないからテンション上がらんわー。
あー・・脳みそピリピリする。
何で1000ピースパズルやってんの私。
こんなのやりたかねぇよぉ。
帰りたいよぉ。
帰りたいよぉ。
仲間のみんなぁぁぁ、あたし、あたし、何か1000ピースパズルやってるよぉ。
全っ然はまらねぇ。
チッ
脳みそピリピリする。
何なん、親父め断りもなく勝手にこんなの持ってきてからにぃ。
腹立つわー。
全っ然わかんない。
ん!?
あっ!はまった!!!やったやったやった!!!
私は「はまったよ!!!」と鼻息荒く満面の笑顔で息子を見た。
え、たかしくん(仮名)。

そこにいたのは、笑顔が可愛いたかしくんだった。
息子は!息子はどこ行った!!!
部屋の中を見回すと、息子は遠くの方で先生とボールで遊んでいた。
待て待て待て待てぇぇーーーいっ!
私はエア突っ込みを入れた。
え、わっけわからん。
いつの間にボールで楽しそうに遊んでるん。
何で私たかしくんとパズルやってるん。
暫くすると、たかしくんもどこかに行ってしまい・・・
私は1000ピースのパズルを前に、1人になった。

はっはぁ〜〜ん。なんで私と離れることを渋ったかわかったぞ。
さてはお主・・・もうパズル飽きたな?
「やること」「やりたいこと」がなくなったからだな?
息子はそれがないと、居られない。
でも、今、先生ときゃっきゃ楽しそうに遊んでいる。
「居る意味」見つかったよね?
お母さん帰っていいよね?
私はサラッと息子に声をかけ、逃げるように居場所を後にした。
今日も無事に離れられたので、今日はめでたく送迎dayになった。
ふぅ。時刻は既に11:30。
家に帰宅したけど、2時間後にはもうお迎えだ。
1000ピースパズルで脳みそがショートしてしまった。
疲れた。
とそこへチロリンとLINEが届く。
米粉ちゃんからだった。
『塩麹マジで美味しい!あんたに食べさせたいわぁ』
と美味しそうなお昼ごはんの写真が送られてきた。

彼女は最近塩麹にはまっている。
疲れきった私にその写真は癒しになった。
米粉よ、ありがとう。
あっという間にお迎えの時間だ。
感覚的には、瞬きしたくらいでその時間が来てしまった。
とほほ。
迎えに行くと、息子はとてもいい顔をしていた。
その表情で楽しい時間を過ごせたことがわかり、ホッとした。
パズルがだいぶ進んでいた。
息子はちょっとでもやったのだろうか。
「○さんは総監督としてしっかり見守ってくれていますよ!」
とパーマ先生。
だから総監督って何なのよ。
ホワイトボードに書いた目標が目に入り、私は苦笑いをする。
さて、次は弟を迎えに幼稚園に向かう。
時刻は14:00。
息子はいつも車の中でアマプラ見ながら昼ごはんを食べる。
私の愛情たっぷりサンドウィッチだ。
「今日は・・・ダメ?」
まぁ、楽しく過ごせたしね。
「いいよ!」
幼稚園に向かう途中で寄ったのはセブンイレブンだ。
これを買うために。

セブンのスムージー。
ブルーベリーがお気に入りだ。
これがあるから頑張れたりする。
ご褒美って、力になるんだよね。
必要なんだよね、ご褒美。

ついでに私もご褒美。

半分食べられる。

幼稚園に着き、弟を教室に迎えに行く。
おふざけしながら出てくる。
全くこの子は愛おしい。
園庭では元気に子どもたちが走り回っている。
もちろん息子たちも遊び出す。
時刻は14:30。
私はベンチに座る。
よっこらせ。
「ここあーこーちーぴあすみだ」
近くの木のところで大声でこう叫び振り向く女の子。
このかけ声で始まるこの遊び、ご存知だろうか。
我が家でも絶賛流行中だ。
韓国の大人気ドラマ「イカゲーム」に出てくる日本版の「だるまさんがころんだ」である。
息子たちはドラマは見ていないものの、YouTubeで覚えたらしい。
これがどうやら幼稚園全体で流行っているようなのだ。
時代は変わったなぁ〜・・・天を仰ぐ私。
「お母さん、だるまさんがころんだやろー!」
1人天を仰ぐ母に駆け寄ってくる息子たち。
あの女の子が叫んでいるのを見ていたのだ。
嫌な予感しかしない。
「ここあーこーちーぴあすみだって言ってぇ」
言えますかいな。
私の鋼の羞恥心、ナメてもらっちゃ困りますよ。
なんやかんや誤魔化して昭和の時代を生きてきた私は、だるまさんを貫いた。
「だーるまさんがこーろんだ」
全力だるまさんがころんだ開幕。

ピタッと止まり、くすくす笑っちゃう息子たちが愛おしい。
私にタッチをして、きゃー!と逃げる。
全力で追っかける母。
うはははははははは待て待て待て待てーぃ!!
お母さんを侮るなかれ!
まずは兄からだ!
園庭を逃げ回る兄を全速力で追っかける。
そのあまりのド迫力にビビったのか、逃げるのを諦める兄。
ガシッ確保ー!
あとは、弟だ。
どこだ!どこ行った!
私は映画『シャイニング』の主人公ジャックの如く、園庭を探して回る。
遠くの滑り台のところからニヤニヤ笑ってこちらを見ている可愛い子発見。
うはははははははは見つけたぞー!!
私は全力ダッシュで弟を確保しに向かった。
やはり弟もそんな母の姿にビビったのかその場から逃げるのを諦め捕まえられるのを待っていた。
ガシッ確保ー!
はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・
張り切りすぎた。
時刻は15:30を過ぎていた。
さぁ、帰ろう。

今年の節分は、居場所でも豆まきがあった。
パーマ先生が鬼になるらしい。それだけで面白そうだ。
「豆まきだから、帰らないでそばにいてね」
息子はいつもと違うことを極度に嫌がる。それが例え楽しみなことでも。
今日は付き添いdayに決定だ。

居場所近くの公園で豆まきすることになった。
パーマ先生は既にスタンバイしているらしい。息子のドキドキが伝わってくる。
公園に着くと、遠くの木の陰からこちらをチラチラ見ている怪しい人発見。
「あー!!!いたー!!!」
子どもたちがゲラゲラ笑いながら走って行く。
息子は暫く様子を伺っている。
慎重な男だ。
「わるいごはいねぇがぁ〜」
オレンジ色のド派手なハッピを着て、顔に鬼の仮面、頭には手作りの角を2つ付けたパーマ鬼が登場した。子どもたちはキャーキャー言いながら豆を投げる。
暫く様子を見ていた息子も参戦する。
パーマ鬼は「やられたぁぁぁ」と叫びながら地面に倒れる。
容赦なしに豆を投げつける子どもたち。
先生、体張ってるなぁ。
その姿に泣けてくる。
ゲラゲラ笑う子どもたち。
みんなみんな楽しそうだ。
ここにいる子どもたちは何かしらの問題を抱えていて学校に行っていない子どもたちばかり。でも、今私の目の前でパーマ鬼を追っかけ回している子どもたちは本当にキラッキラ笑っている。
それでいいじゃないか。
この子どもたちの自然な笑顔を引き出せるパーマ先生は本当に素晴らし教育者だと思う。
私がジーンと感動していると、さとるくん(仮名)がパーマ鬼の背後からそ〜っと近づき・・
股間を蹴った。
「股間はダメよ!股間はダメ!」
ボランティアの方が叫ぶ。
息子が振り向き私を見る。
私は静かに首を振った。
股間は、あかんで。
息子がだいぶ豆まきに慣れてきたようだ。
パーマ鬼の頭から角を奪い取り・・・
破壊している。

さて。
そろそろいいかな。
「○くん、じゃあお母さんちょっと買い物行ってくるね」
と声をかけると、あっさり「うん」と言ってくれた。
パーマ鬼を追っかけるのに夢中なのだ。
私はホッとして近くのカフェでランチすることにした。
見守るには寒すぎて、骨の髄まで冷え切ってしまった。
時刻は11:30。
温かいコーヒーでも飲みながら、あと2時間ここで時間をつぶそう。

息子と全力でだるまさんがころんだなんて、今だけ。
息子とたっぷり時間を共に過ごせるのも、今だけ。
今だけ。
今だけ。
今だけ。
こんな経験なかなかできない。
貴重だ。
貴重だ。
貴重だ。
前向きな言葉をいくら並べてみても、
何やってんだろ・・・
私にだってやりたいことがある。
働きにだって出られたかもしれない。
何やってんだろ・・・
そんな思いが脳裏に浮かんでくる。
送迎と付き添いで毎日が過ぎていく。
どちらでもなくて自宅で過ごす時もある。
今日という日がどれになるかも、朝になってみないとわからない。決めたと思ったら次の瞬間にもう気持ちが変わっていたりする。
お昼ごはんに用意したおにぎりも準備した荷物も必要なくなる。おにぎり食べたくないと言われて、私が食べる。
しんどいなぁ、って思う。
でも、こんな日々もいつかきっとかけがえのない宝物になる。
信じている自分と言い聞かせてる自分がいる。
大丈夫って思える日もあれば
しんどくて泣きたくなる日もある。
その繰り返しだ。
繰り返しながらも少しずつ前進してる。
そう信じて、明日も明後日も送迎と付き添い人生を送るのだ。
語らせてくれて、ありがとうございました。
