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正義」は誰が作るのか?教科書問題に切り込んだ、『御上先生』第4話

はじめに

毎週、放送されたドラマの感想をまとめて書いていますが、今回も『御上先生』第4話の感想を単独記事にしました。
なぜなら……今回もあまりにも濃密で、語るべきことが多すぎたからです。
前回の第3話でも同じ現象が起こり、結局1話ごとに記事を分ける流れになっています。

『御上先生』は、文科省のエリート官僚・御上が高校教師となり、教育現場で改革を試みる物語。
第4話では、彼が生徒たちとともに日本の教育制度の根幹にある「教科書問題」に更に切り込みます。
教科書を検定することや、その教科書に使用義務があることを知らない人も多い。教科書検定をしている国が少ないということも知られていない。
国によってはもちろん、教科書によっても書かれていることは違う。
生徒たちはそれを「自分たちのもの」として受け取るのか、それとも受け身のまま学ぶのか——。

本当に考えさせられる内容でした。そして、このドラマの最大の魅力は、視聴者に「自分ならどう思うか?」を問い続けること。
今回は、文化祭の展示をめぐる議論のシーンが特に印象的で、「教科書検定とは何か」「正義とは何か」を生徒たち自身が考え、議論する姿に胸が熱くなりました。

また、第4話では「それぞれの正義」というテーマが色濃く描かれていました。何が正しいのかは、立場や視点によって異なる。
特に、日本の教科書とアメリカの教科書で異なる「原爆投下」の扱いは、その象徴的な例でした。
この議論の中で、生徒たちは「教科書に書かれた歴史がすべてではない」ことを学び、深く考えます。

今回は、そんな第4話の名シーンを振り返りながら、脚本の素晴らしさ、セリフの鋭さ、そして御上先生と生徒たちが繰り広げたディベートの奥深さについて徹底的に語っていきます。
どうぞ最後までお付き合いください!

▼過去の記事はこちら


ドラマ「御上先生」について

TBS 日曜夜9時
文科省のエリート官僚が高3の担任教師に!
“官僚教師”が行う独自の授業とは!?
令和の18歳と共に日本教育に蔓延る腐った権力へ立ち向かう大逆転教育再生ストーリー!

主演:松坂桃李
出演:吉岡里帆、岡田将生、迫田孝也、臼田あさ美、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば


第4話振り返り

あらすじとざっくり振り返り

第4話 対決
冴島(常盤貴子)と国家公務員採用総合職試験会場で起こった殺人事件の関係が公になり、神崎(奥平大兼)は責任を感じ冴島のパート先を訪れるが、すでに辞めた後だった。そんな中、教室では御上の提案で、生徒たちは議論を始める。また、隣徳学院に届いたヤマトタケルを名乗る人物からの一枚のFAX、是枝(吉岡里帆)は自分なりの答えに辿り着き――。

「それぞれの正義」と「日本教育への問題提起」

第4話も痺れる展開でした。
このドラマのテーマはきっと、「それぞれの正義」と「日本教育への問題提起」なんですね。

それぞれの立場から見た「正義」は違っていて、見方によっては正義にも悪にもなる。両方の視点から見なければいけない。
そしてそれは、教科書にも反映されている。原爆投下に関しても、日本の教科書とアメリカの教科書では、立場によって見解が変わる。
しかも日本において、教科書は、国によって定められた物を使わなければならない。
(国定歴史教科書を採用している国はタイ、マレーシア、イラン、ミャンマー、ロシア、トルコ、キューバ、リビア、北朝鮮など、意外と少ない)
自国にとっての「正義」の基準で、教育を受ける。それが日本の教育。
みんなが似たような教育を受けて、同じような価値観を植え付けられる懸念がある、それが日本の教育。


御上先生&生徒たち、文部科学省に物申す

サブタイトルに「対決」とある通り、「日本教育」(文部科学省)に対して、御上先生、喧嘩を売りましたね!
これから戦っていくんだ、という強い姿勢が見えました。
表面的に喧嘩腰ではなく、あくまで「自分は内容までは知らないくて」という、官僚上がりということもあり<永田町文学>的な手法で攻めておりました。
実質、内容を決めたのは生徒たちなので、御上先生は導いただけではありますが。そこも攻め方としてとても上手いです。
さすが官僚。真っ向勝負ではなく、攻め方がスマート。


とにかく脚本(セリフ)がすごい

このドラマは、脚本(セリフ)がずっと凄くて、片手間に見ることができません。
「集中してみるぞ!」という覚悟を持って観るドラマです。間違いなく、今期一番集中して観ているドラマです。
「心に残ったセリフをメモしよう」と思いながら観ると、気付くとほとんど全てメモしています。
すごすぎます。「伝えたい」「視聴者に訴えかけたい」という思いがヒシヒシと伝わってきます。
このドラマがどうやって企画されたのかが、すごく気になります。


ざっくり振り返りがすでに長いですが、つづいて心に残ったセリフです。(ほぼ全部)


日本とアメリカの教科書で異なる「原爆投下」教育

文化祭で、教科書検定についての展示をしたい、という東雲温。
センシティブな提案ということで、御上先生はアメリカで生まれ育った帰国子女、倉吉に問いかけます。

御上「アメリカでは、原爆投下のことどう教わった?」
倉吉
「アメリカでは、原爆投下は仕方なかったと教えられます。アメリカ側はこれ以上日本が戦争を続けるようなら、壊滅させるような攻撃、つまり原爆を落とすって通達してるの。教科書には、当時のアメリカ大統領の発言がこう書いてある。このまま戦争を続ければ本土決戦は避けられない。アメリカの若者の犠牲をこれ以上増やさないためにも、原爆投下は仕方なかったって。
ただ、こうも書いてあった。大統領の意見は正しかったと思いますが、あなたの意見と根拠を述べなさい。」
「なんて答えたんだよ?」
倉吉
「……答えられなかった。今みたいにみんな私のこと見てた。大した知識もない、しかもアメリカ育ちの私の意見が日本人全体の意見になっちゃうんだなーって思って、怖くて答えられなかった。」「今ならもうちょっとマシに答えられると思う。」
「なんて答える?」
倉吉
「日本はもっと早く戦争をやめるべきだったし、アメリカはそれでも原爆を落としちゃいけなかった。つまり、どっちも間違いだった。」
「それはどうして?」
倉吉
「沖縄では民間の人も含めてたくさんの人が亡くなりました。それは日本が自分の判断で戦争をやめなきゃいけないくらいの数だったんです。」
「じゃあアメリカは?」
倉吉
「原爆は一瞬でたくさんの命を奪ったから許されないってみんな言います。でも、人数の問題だけなのかなってぐるぐるして、すごく悩みました。だけどやっぱり、細胞を破壊して、何十年も続く健康被害をもたらす、そんな爆弾は、どう考えても使っちゃいけなかった。だからこそ、これからの授業ではどっちも間違いでしたって、伝えて欲しいです。」
東雲「何が言いたいんですか?倉吉にこんなことまで言わせて。トラウマほじくり返して。」
御上「分かってる?これ結構センシティブなテーマだってこと。」
東雲「もちろんです。」
御上
「倉吉さんの話聞いてたよね。原爆を肯定する言葉が載っている教科書がある。なぜならそれはその国の正義だからだ。同じように人や国の数だけ正義があるんだ。自分の正義だけが通ると信じていたら、誰とも話はできないよ。」
東雲「じゃあどうしろって言うんですか。」
御上「僕に指示出されたい?嫌だよね。」
倉吉「温、あのね、トラウマじゃないよ。トラウマになりそうだったから、一生懸命勉強したし、帰国することが決まった時、同級生とちゃんと話した。私言ったよ。私大好きなみんなと、戦争絶対にしたくないって。」
「みんななんて答えたの?」
倉吉「(倉吉)由芽夢の言う通りだね。僕たちはなにがあっても核のボタンを押しちゃいけない。」「だから答えた。私も、日本が核兵器を保有しない原則絶対に守るって。ちゃんと話した。だから、トラウマじゃない。なのに、日本帰ってきたら、できない話になっちゃった。そっちの方が苦しかった。だから、温にありがとうって気持ち。」

御上先生は、生徒に対して、常に「どう思う?」「どうしたい?」「考えてみて」と、答えを言わずに考えて自分の意見をいうことを促します。
生徒もそれに対して、考えて自分の考えを述べます。
時には「まだ答えられないので時間をください」と言って、考えます。
この先生が教える、生徒が教わるという、学園ドラマの典型的な図式を崩しているのが素晴らしいです。


「教科書法」に関しての生徒たちのディベート

御上先生は、教科書法の展示に賛成(立案者ですしね)派の東雲を反対派として、反対派(だった?)の櫻井を賛成派として指名します。
櫻井は展示に反対しつつも、自分で教科書法についてめちゃくちゃ調べていた。それに御上先生は気付いていたから、指名しました。

御上「教室の使用許可、このままだと取り消されるかもしれない。」
「理由は?」
御上「政治性の強い物は、高校生の文化祭にふさわしくない。」
「出たよ、じゃあなんで18歳に選挙権くれるんですかって話でしょ。」
「でもおかしいよね。一回許可降りたのに。」
「取り消されるの当たり前だよ。そもそも最初許可降りた時点で耳疑った。」
御上「みんなどう思う?」
「最初は有志だけだからいっかって思ってたけど、正直しんどいです。昼休み、自習したくても居場所ないし。」
「私は、お前もやらないんだっけ?って何度か聞かれてつらかったです。」
「分かる。やらない人のこと余裕ねえなぁってバカにしてる気がする。」
御上
「じゃあホームルーム始まるけど、ひとつ僕から提案がある。ディベートをしてみよう。テーマは文化祭で教科書についての展示を行うことについて賛成か反対か。」
〜賛成派の東雲を反対派として、反対派の櫻井を賛成派として指名〜
御上
「ディベートは自分の本当の意見を言う場ではないんだよね。あくまで賛成派は賛成派として、反対派は反対派としてその理由を示せばいい。じゃぁ賛成派から。」
櫻井
「そもそも、教科書を検定することや、その教科書に使用義務があることを知らない人も多いと思うし、教科書検定をしている国が少ないということも知られていないと思います。自分たちの学習の基礎となるものの成り立ちを知ることは有意義なことです。なので展示に賛成です。」
東雲
「そもそも、3年が文化祭をやらないのは、受験に集中するための配慮なのに、クラスの合意も得ないで勝手に進めることで、勉強に集中したい人たちの権利を奪っていることになるのではないでしょうか。なので私は反対です。」
櫻井
「これは、学校教育法第34条の1項です。文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。しかし、1番新しい学習指導要領では、個別最適化、つまり生徒それぞれの理解に合わせた教育が大切な柱となっており、共通の教科書で進めることに矛盾していると思います。それを考える機会として、展示するべきではないでしょうか。賛成です。」
「そんな調べてたんだ。すげぇ。」
東雲
「学校教育法は、教育の基本となるべき法律です。そこに疑いを持ったら、教育の根本が破綻します。反対です。」
櫻井
「東雲さんのお父さんのクラスの状況を調べました。多くの人がハイレベルな高校に進学しています。新聞記事によると、豊かな授業で、勉学の楽しみを教わったと、卒業生を含めてかばう声が多かったです。そのような教師が、学習指導要領違反で職を失ったことは、教育において大きな損失です。考える意義があるのではないでしょうか。企画は、やるべきだと思います。」
東雲
「櫻井さんの言葉にこたえるような意見が、私の中にはありません。父と母は離婚して3年。私は何もしませんでした。父は学校で何を言っていたのか、知ろうともしなかった。御上先生に対して、怒りをぶつける権利はないんだと思います。私はそんな人間がリーダーをやる企画には、価値がないと思う。なので、反対です。」
御上
「賛成派は、企画の意義という点で賛成し、反対派は学習をしたい人への配慮のなさや、参加しない人たちが感じる疎外感を理由に反対していた。やるべきことは見えたんじゃないか?そうだ、今日内内で知らせがあった。文化祭に、文科省の滝沢副大臣、つまり政治家が視察に来る。」
「教科書検定に踏み込んだ展示をしたということが政治や行政に知られたら困る、だから横槍が入った?」
御上「そうだね。どうする?」
東雲「一番観てもらうべき人が来るってことですよね。やりたいです。」
御上「じゃああとはみんなで話して。」

櫻井さんが勉強していたシーン映ったけど、一眼見て「教科書法についてだ!」って分かるような説明的なシーンではありませんでした。
観ている方は、「勉強してるな」って分かる程度のシーン。
それを観てから、櫻井さんの教科書法に対しての知識があまりにも豊富で、そのシーンが「教科書法について勉強していたシーンだったのね!」と後から気付くような、そんな些細なシーンでした。
御上先生からの「勉強していたよね」とか、そういう一言もありません。
あるのは、ディベートの際の櫻井知識の豊富さ。そして、他の生徒の「そんな調べてたんだ。すげぇ。」という感嘆の声。

つまり、櫻井さんが勉強していたよということは、あまり説明されていないいんです。これは、ながら見を許さない、という製作陣の意気込みを感じます。
とても映画的だなと思い、説明的なシーンもセリフもないのがお見事でした………。だから集中して観ざるを得ないのですよ………。

共通の教科書、しかも国がOKを出した教科書のみというのは「個別最適化」とは完全に矛盾しています。

前回の冨永もそうだし、今回の倉吉・櫻井もそうだけれど、<知識がなくて答えられない。だから徹底的に調べた上で、自分の考えを述べる>という姿勢が生徒たちは持っているのが爽快です。
そんな自走力がある生徒たちだからこそ、御上先生も生徒に託して「あとはみんなで考えて」って、生徒たちに託せるのでしょう。


倭建命からのFAXに対しての是枝先生の見解

是枝
「倭建命が蝦夷の襲来に備えて作った関所があるんです。それがあったのが、霞ヶ関。つまり、倭建命は官僚って意味じゃないかなって。倭建命、御上先生ですか?」
御上「違います。」
是枝
「でも。この平川門。これは、霞ヶ関の桜田門のちょうど反対側にあるんです。江戸城の裏門と言われています。つまり、隣徳に裏口から入った人が多数いる。そして、<隣徳はくにのまほろば>これはヤマトタケルの辞世の句のパロディです。元々は、<大和はくにのまほろば>。つまり、大和はとても良い国ですっていう意味で、このまほろば、漢字で書くと、<真秀ろば>気付いてらっしゃいましたか?古代理事長の名前。この字を書いて、<まさひで>と読む。

是枝先生も、さすが、何とも鋭い見解です。
倭建命=御上なのか?
第4話の最後には、またしてもFAXが届きました。


テーマはそこに立ち返るために作る

学校にはダミーの企画書を出し、ダミーの展示でOKを出させて、強行突破します。
副大臣に展示を見てもらうことも成功。

東雲「先生、ダミーの企画書に、正式の許可が出ました。」
御上「そう。良かった。東雲さん、クラス全員と一人ずつ話したんだって?どうだった?」
東雲
「参加しない人たちは、やる人の自由を認めるって言ってくれました。それに、新たに参加してくれる人も何人か。これが、実際にやる方の企画書です。」
御上「良いテーマだね。<教科書から世界を見渡す>」
東雲
「気に入ってます。倉吉に言われて、ハッとしました。日本人は、テーマをすぐぶらしちゃうって。テーマって、何度でもそこに立ち返るために作るのになぁって。学習指導要領の柱にするなら、中身を全とっかえしなきゃいけないくらい、重たい言葉です。なのに、つぎはぎして、なんとかしようとしてるから、ブレブレになっちゃう。だから、そうならないように頑張ります。」

「テーマは何度でもそこに立ち返るために作る。」という言葉。
デザインにおかえる「コンセプト」と一緒だなぁと思いました。
どちらが良いんだろう?と迷った時の道標になる。時には全とっかえすることも必要。
仕事においても、本業のコンセプト自体をガラッと変更する方向で動いている今の自分にとても刺さりました。
ブレブレにならないように、テーマやコンセプトに立ち返って進まねば。


パーソナルポリティカル、個人的なことは政治的なこと

東雲
「先生、私、分かった気がします。パーソナルポリティカル。個人的なことは、政治的なこと。」
御上
「そうだね。だから学習指導要領は、家庭の平和も守らなきゃいけないのかもしれないね。」

「パーソナルポリティカル」という言葉。
このドラマでは繰り返し発せられる言葉です。
個人的なことは、政治的なこと。

私はこのドラマを観て、初めて知った言葉でした。
「政治」と聞くとどうしても身構えてしまうし、「難しくて分からない」と思ってしまいがちです。
でも、個人に起こることは社会の問題でもあり、それは政治からきていることでもあると、このドラマを観て痛感しつつあります。
個人的なことはとっても些細で小さなことかもしれないけれど、それを辿っていけば政治的で大きな問題が潜んでいる。
このドラマはきっと、その大きな問題に導いていくのでしょう。

「御上よりやべぇ」と言われていた兄が出した声明文の内容は?
冴島先生(女教師)だけ辞めた(辞めさせられた)本当の理由は?
冴島先生の娘が殺人を犯した理由は?
倭建命の目的は?
御上先生の目的は?
まだまだ明かされていない謎は多いです。

「どう思う?」「考えてみて」
私もこのドラマを通して、御上先生からたくさん問いかけられている気がします。
あなたはどのように思いましたか?


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