行政に人的資本経営のエッセンスを②:ハラスメント防止の仕組みは必須
近年、社会問題として深刻化しているハラスメント事案。その根底には、互いの価値観の違いを理解しようとする意識がそもそも不足している現状があると思います。ハラスメント防止は、単なる法令遵守や罰則ではなく、多様性を受け入れ、より良いコミュニケーションを築ける環境づくりであることから人的資本経営導入にむけては必須です。
流山市議会におけるハラスメント防止に向けた活動
坂巻儀一議長は議長に立候補する際、「ハラスメント防止」を公約に掲げ、副議長である私もサポートしてきました(所属会派のメンバーもです)。しかし、流山市議会では1年半の間、ハラスメント条例の制定はもちろん、政治倫理条例にハラスメントの規定を入れることすら全会一致にならず、残念ながら進んでいない状況です。
主な反対意見としては「ハラスメントの基準が曖昧」で「ハラスメントだと言われたら、それが認定されてしまうのでは?」「議員の権限が制限される可能性があるのでは?」といった点があげられています。
人的資本経営を導入するには、行政職員の心理的安全性を担保することは必須であることから、議会での取り組みを発信します。
ハラスメント防止はお互いの価値観の違いを知り、よりよいコミュニケーションを築くことに価値がある
議会は、さまざまな世代や異なる人生経験を持つ議員の集合であるため、「当然」「普通」だと思っていることが全く違うことがあり、共通ルールづくりの合意は並大抵のことではありません。
しかし、ハラスメントの問題は「被害」と感じる側と、「そんなつもりじゃなかった」と思う側のズレを放置すると関係は悪化していきます。最終的には議会全体の信用を損ねることにもなりかねないので、のんびりしていられません。
本来は、ハラスメントの疑いが発生したときに、指摘された側が自分の価値観を見直し、相手の価値観を理解できるようにすることのほうが大切なので、むしろ、相手を理解するためのプロセスに設計すべきです。
互いが一方的な主張をするだけでは、対立を助長し、最悪は政争の道具になる危険性もあります。多様性を活かせる仕組みづくりは、政治が信頼を得ていくためにも、必要なしくみづくりではないでしょうか。
ハラスメント研修会を開催
そこで、1月23日、正副議長の活動として、千葉県第4ブロック(我孫子、柏、流山、野田、鎌ヶ谷、松戸、市川、浦安)の市議会議員が集まる合同研修会を、流山市が当番市として開催、(株)廣瀬行政研究所 代表取締役の廣瀬和彦先生を講師に迎え、「議会におけるハラスメント等について」をテーマにお話しいただきました。
ハラスメントの定義や法的整理、訴訟事例について学ぶことで、議員の理解を深める機会にしたいと考えたのです。

議員・職員・市民間の関係とハラスメントの問題
議員間だけでなく、議員と職員、職員と市民との関係における法律解釈や判例も共有されました。特に、議員と職員の関係については以下のような整理がなされました。
議長と議会事務局職員:議長は議会事務局職員の任免権および指揮命令権を持つ(地方自治法第138条第5項・7項)。
議員と議会事務局職員:議員には指揮命令権はなく、職員が調査依頼に応じる義務もない。
議員と執行機関職員:執行機関職員の任命権者は市長なので、議員に従う義務はない。
判例も共有されました。議員は話が長くなりがちなので、長時間の拘束もハラスメントと見なされる可能性があること、無断録音された場合でもハラスメントの証拠になるケースがあることが紹介されました。自戒の姿勢が必要です。
【判例】
①業務上の必要性あるかどうか(大阪地裁平成24.3.30判決)
②人格非難か行動に対するアドバイスか(福岡高判平成20.8.25判決)
③見せしめ的な対応がなされていないか(東京高判平成17.4.20判決)
④相手の属性(新入社員)や心身の状況を理解した上での指導か(仙台高
判平成26.6.27判決)
⑤長時間・繰り返しになっていないか(仙台高判平成26.6.27判決)

ハラスメント防止に向けた対応策
議会としてハラスメントを防ぐために、以下のような取り組みが有効とのこと。1については議長が実施、4は今回実施していますので、2,3が課題です。
トップの明確なメッセージ
ルールの明確化
アンケートなどを通じた実態把握
定期的な研修の実施
継続的な周知・啓発
議員は言ったもん勝ちであってはいけない
昨今、流山市議会では、議員の権限を超えているのではないか?と心配する状況が散見されていたため、研修では、会派メンバーから「第3セクターに対する議会の質問権の範囲」について質問がでました。
議会の役割と権限範囲を正しく理解した上で、議会を適切に運営することが大切です。今後の議会運営を注視していきます。
(質問)第3セクター、公社などに市が負担金を支出している場合があるが、一般質問や議案質疑に際し、当該公社などの業務内容に議員の質問権、質疑権は、どの程度まで及ぶのか。執行部も聞かれた以上は答弁せざるを得なく、本来の業務の範疇を超え、過大な対応を求められているのではないかと推察する。地方自治法や会議規則に明確な基準もなく、議会としてどのように対応すべきか。
(回答)流山市議会会議規則62条1項にあるが、議員は市政の一般事務の範囲で質問することができる。第3セクターは一般事務ではなことから一般質問で原則取り上げることはできない。第3セクターに市からの財政援助がある場合、報告義務があるので、その報告内容について質問することは出来るが、それを超えることはできない。仮に第3セクターの取締役会などで知り得た情報を元に質問すれば、情報漏洩として問題となり、訴えられる可能性がある。言ったもん勝ちにせず、議長の議事裁量権で止めなければならない。
研修会後もコツコツ進める①議員の所感を聞きたい
今回の研修会では、市職員にも傍聴を推奨し、終了後に議長要望としてグループウェアを活用し、無記名での所感(感想)の提出をお願いすることにしました(議会で多くの合意を得ているわけではないため、アンケート調査は権限の範囲を超える可能性があり、今回は感想のみ)。2月20日の代表者会議では結果を会派代表者、傍聴者に共有しました。後に議員に感想をいただくつもりです。
残念ながら、研修会に全議員が参加することは叶いませんでしたが、事務局を通じて資料を共有し、議員間での意見交換を諦めずに進めていきます。議員一人ひとりがハラスメントへの認識を深め、よりよい議会運営につなげていくことを諦めなことが大切です。
研修会後もコツコツ進める②札幌市のカスタマーハラスメント防止啓発の取り組みを提案
議員は住民代表なので、昨今の社会通念と住民の意識が乖離していると改善しません。そこで市に札幌市のカスタマーハラスメントの取り組みについて採用いただけるよう所属会派から要望いたしました。価値観が違うことで対立が激化し、優秀な職員が辞めてしまうことがないよう環境づくりは大切です。
・カスタマーハラスメントの防止啓発ポスターを作成し、市民の声を聞く課で掲示
・官公庁に限らず、様々な業種でお使いいただけるよう、内容啓発ポスターをオープンデータ化
・このような行為の予防を目的とした通話の録音を試行

副議長として:自らも反省すべき行動があった
研修会の最後に、副議長としてご挨拶をしました。大変緊張しました。私自身、熱い思いを持って活動している中で、反省すべき行動もありました。これまで多くの同僚や先輩から率直な意見をいただいたことを感謝いたしました。今後もより良い議会運営を目指して努力していきたいと思います。

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