公立幼稚園は必要か――継続審査を受けて、流政会の立場とこれからの論点
議決の24日から4日が経とうとしています。振り返り
1.継続審査という結果をどう受け止めるか
今定例会において、流山市幼児教育支援センター附属幼稚園の廃園に関する議案は、教育福祉委員会での否決を経た後、本会議で「継続審査」となりました。異例の展開です。
現場に足を運び、多角的な調査を重ねてきた私たちからすれば、率直に言って複雑な思いがあります。しかし、これが今回の現実です。
2.現場が示していたこと
①要配慮児と向き合う私立幼稚園の実践
2年半前にも行った私立幼稚園へのヒアリングを踏まえると、現場が抱える課題の本質はほぼ変わっていません。それにもかかわらず、当面の間は事態が前進しない状況となってしまわないか、心配しております。
現在、私立幼稚園でも要配慮の子どもを数十人単位で受け入れています。そもそも幼稚園は義務教育機関ではなく、建学の精神をベースに運営していることから、希望の幼稚園に必ず入れる施設ではありません。にもかかわらず「その子にとって最善の場所を選んでほしい」という信念のもと、何度もコミュニケーションを重ね、場合によっては児童発達支援センターへとつなぐ判断もされていました。
なかには、支援が必要な子どもたちのために億単位の費用を自費で投じて連携施設をつくり、3年が経過した園もあります。最初は支援が必要な子どもを受け入れることに抵抗を感じていた先生もいたそうですが、「目の前の子どもを拒否してはいけない」というポリシーから踏み出し、地域の「つて」を頼って看護師や保育士をかき集め、一人ひとりの育ちを観察しながら実践を積み重ねてこられています。最初は反対していた先生も、子どもの育ちを見て「やってよかった!」と言ってくれるようになったそうです。子どもの成長の場は、唯一無二の答えがない場づくりであることを思い知らされます。
2年前の視察記事はこちら
②インクルーシブ教育が生む、子どもたちの育ち
集団の中に要配慮児がいることは、本人が同年代に助けられる経験になるだけでなく、定型発達の子どもたちにも「自然と手を差し伸べよう」というコミュニケーションの土台を育みそうです。発表会(園のイベント)などでは、大人が指示しなくても子どもたちがさりげなく友達の背中を押す姿があり、「私たち(園の先生)も驚かされる」という言葉が印象に残っています。
それでも、現場が抱える課題がないわけではありません。クラスに要配慮児の割合が多すぎる状況になっては「カリキュラムをベースにしたクラス運営が成り立たないのでは?」という声も聞こえてきます。子どもの特性と園側の環境のミスマッチがありすぎてはいけません。一人ひとりにとってよりよい環境を見出す、答えのない伴走支援については、公的な機関がしっかり機能することが大切であり、今後も継続的にチェックしていく必要があります。
③経営の現実と、公私のコスト格差
一方で、経営面の厳しい声も聞きました。ヒアリングした園は園児200人超で、1人あたり約75万円(うち約3分の1が補助金)で運営され、人件費が9割近くを占める中、残りで建物の維持・減価償却も賄っています。そこへ「来年は1人あたりが5倍にもなる約417万円」という公立の構造を見たとき、定員割れの中でもやりくりしている私立との公平性は、考えざるを得ません。また、1クラスの適正規模とされる20〜31人にも満たない中で、モデル園としての役割が本当に果たせるのか、という疑問もあります。
「教育はお金ではない」という主張も理解できます。しかしだからこそ、公の機関としての大義を整理し、教育環境への投資の妥当性を審議することが重要です。経済合理性を欠く事業は持続しないからです。
今回の教育福祉委員会での審議では、流山市全体の幼児教育の方向性や「血税の分配」の議論が乏しかったように思います。
3.この2年半で前進したこと
①教育委員会が積み上げてきた取り組み
2年半前と大きく異なるのは、現場の声と課題を多くの議員に共有・説明できた点です。
教育委員会がこの間に積み上げてきた取り組みは評価すべきものがあります。就園相談体制の整備、幼保小連携の強化、幼児教育アドバイザーの派遣、架け橋期カリキュラムの作成。令和7年度には、私立幼稚園等11園・要配慮児童165人の受け入れに対して約8,770万円の補助金が交付されました。
②市民・保護者・議会の声が動かしたもの
こうした前進は、保護者・市民・議会の声があったからこそ実現したものです。このきっかけをくださった、公立幼児教育施設の存続を求める皆様には、心から感謝申し上げます。
また、私立幼稚園側からは「公立であれば定員・人員配置・経費を公開すべき」という主張が以前にも増して強くなっています。今後は、私立幼稚園が直面している課題に、議員各位が真摯に向き合ってくださるものと信じています。
これらの成果については、教育の専門家による評価が必要だと私たちも考えています。
4.なぜ流政会は廃園賛成としたのか
「継続審査」とは、審議に必要な情報がまだ出そろっていないという議会の判断です。であれば、何の情報があれば審議できるのか。その論点を議会側から提示していかなければ、これまでと同様に時間だけが過ぎてしまいます。ここでは私たちが廃園賛成とした理由と、これからの論点を記載します。廃園反対の方も、ぜひご一読いただけますと幸いです。
①公立幼稚園に期待されてきた役割
この3年間、流山市の状況において、公立幼稚園に他が代替できない固有の役割があるかどうかを整理してきました。これまで公立幼稚園に期待されてきた役割は、主に以下の3点です。
① インクルーシブ教育の実践・モデル提示
② 要配慮児の受け皿
③ 私立への幼児教育の質的牽引
②存続が妥当になる条件とは何か
しかし現状を見ると、それぞれについて以下のことが言えます。
要配慮児支援については、私立幼稚園等要配慮児童受入支援補助金(令和7年度・約8,770万円、11園・165人)により、私立が担う市のサポート体制が整いつつあります。3年前から私立の児童発達支援センターも2園開園しています。
質の牽引については、幼児教育アドバイザー派遣・架け橋期カリキュラム・幼保小連携の日(流政会が提案・実現)により、センター機能として分離可能な状況です。
実践モデルについては、ヒアリングした幼稚園がすでに高度な実践(インクルーシブ・療育連携)を行っています。
つまり「実践園として公立幼稚園が必要か」と「幼児教育支援センターが必要か」は、切り分けて考えられる状況になっています。存続が妥当になる条件を逆算すると、以下の通りです。

②「行政の責任」はセンター機能で果たせるか
市は2年半前、この件があって私立幼稚園にかなり強く受け入れ体制を求めました。しかし、建学の精神がある私立に「要配慮児を必ず入れよ」というのはなじまない部分が私たちはあると考えています。
一方で、「行政が幼児教育に責任を持つ姿勢を公立という形で示す必要があるのではないか」という問いも残っています。私たちの現在の立場は、その責任はセンター機能(相談・調整・伴走支援)に集約することで果たせる、というものです。
「公立幼稚園の存続」が妥当になる条件は、センター機能では補えない、どの私立にも行けない子どもが一定数存在し続ける場合です。現在の流山市は、補助金・相談体制・児童発達支援センターの整備で「入園先を見つけられないお子さん」をゼロに近づける仕組みを構築しつつあります。その仕組みが機能するかを見届け、必要な追加支援が必要であれば行っていくことが、私たちが賛成とした条件であり、議案可決の際には以下の附帯決議を準備していました。
議案第37号「流山市幼児教育支援センター及び附属幼稚園の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定について」に対する附帯決議案
こどもたちの育ちを第一に考えるならば、附属幼稚園という一施設の存廃のみならず、市内全体の幼児教育・保育・療育の質をいかに高め、特別な配慮を必要とするこどもを含め、すべての子どもが適切な環境で育つことができる体制をどのように構築するかが重要である。
よって、市においては、本条例の施行及び附属幼稚園の廃園に当たり、次の事項について誠実に対応することを強く求める。
記
1 今後、幼児教育、保育、療育その他子こどもの育ちに重大な影響を及ぼす政策変更を行う場合には、市民及び議会に対して分かりやすく情報提供を行い、説明責任を十分に果たすこと。
2 附属幼稚園の廃園に至るまでの間、在園児及び保護者に対し、教育環境、進級、卒園、相談支援等について、丁寧な対応を行い、不安の解消に努めること。
3 特別な配慮を必要とするこども達の相談や受入調整、私立幼稚園等への支援を確実に行うとともに、各施設における要配慮児童の受入れ状況や課題等を継続的に把握し、必要に応じた制度改善や財政的支援の拡充を図ること。
5.継続審査を受けて――これからの論点
①幼児教育の標準性・先進性は誰が担保するのか
私たち議員は、血税の分配について説明責任を負っています。公立幼稚園が担うべきパブリックサービスの機能とは何か。以下を論点として、より良い着地点を探ります。
「私立より数倍かかる運営費を継続してねん出することの合理性はあるか」「給食設備や4年保育を整えた私立幼稚園でも定員割れが生じている現状で、公立へのさらなる設備投資はどこまで妥当か」。この問いを軸に置いた上で、「公立幼稚園がなくなった後、流山市の幼児教育の標準性・先進性はいかに担保されるのか」が、廃園賛成の私たちも重要な論点だと考えています。
2年前、私たちが調査した内容。習志野市の公立の認定こども園から、公立が私立(わたくしりつ)の費用についても参考していただけますと幸いです。
②そこで、教育実践者・研究者の参考人招致を求める
継続審査では、具体的には以下の3点について、教育実践者・教育研究者の参考人招致を行い、確認していく必要があると考えています。
① 幼児教育支援センターは「実践を伴わない」形で、市内私立各園に対して指導・助言する権限と実効性を持ち続けられるのか。
② 国・県が新たな幼児教育施策(例:インクルーシブ教育の深化、こども誰でも通園制度の拡充等)を推進する際に、公立実践園なしでモデル実装できる体制があるのか。
③ 将来的に私立園の経営悪化や撤退が生じた場合、行政はどのように幼児教育の質と量を確保するのか。そのセーフティネットの設計はあるのか。
③議会側も透明性を問われている
今議案では、議員各位が行政の説明責任と透明性を問題視しています。しかし、それは議会側にも同様に求められることです。各議員の自主的な発信のみならず、委員会も公開の場で議論が進むよう、私たちも責任をもって働きかけてまいります。
6.かみ合わなかった議論についての見解
①公立幼稚園の入園PRはどこまで許されるのか
保護者らの訴えでは、公立幼稚園の入園PRを阻まれたという問題提起がなされましたが、共働きニーズの増加により私立幼稚園でも定員割れが起きている中、公立幼稚園の入園PRをどこまで行うべきか、という議論もありますが、私の見解は以下です。この背景を市がしっかり説明した上で、各議員から踏み込んだ求めがあれば、今後は可能になるかもしれません。
(私の見解)
民業圧迫の観点から、行政が積極的にPRすることは難しいと考えます。流山市は子ども計画(流山市子ども計画・令和7年度〜)において、保育園・幼稚園の量の見込みと確保方策を定めています。これは、民間園も含めて子どもたちの通園先が失われないようにするためです。
しかし「幼稚園及び認定こども園の入園児童数」を見ると、公立・私立ともに定員充足数は右肩下がりです。少ないリソースで必死に募集している民間がある中、財源を多く充当している公立幼稚園を行政が積極的にPRすることは、難しいように思います。

②定員・コストの公開は当然ではないか
「公立である以上、定員・人員配置・コストは公開されるべき」という声も届いています。私立幼稚園や保育園には開示の努力義務が求められているにもかかわらず、公立だけが開示しないのは許されない、という指摘は理解できます。客観的なデータが公開されてこそ、感情論を超えた建設的な議論が可能になります。この点についても、引き続き求めてまいります。
7.子どもの育ちを中心に、立場を超えた議論を
「流山市の幼児教育の標準性・先進性を牽引する役割は公立でなければ担保できない」という声も(廃園反対派の私の支援者の方から)引き続きいただいています。
政治交渉や選挙を意識した動きではなく、子どもたちの育ちを中心に据えた議論を、立場を異にする議員の皆様とともに積み上げていきたいと思います。客観的なデータと実践者・研究者の知見が共有されてはじめて、感情論を超えた建設的な議論が生まれます。議会は多様性を活かす組織です。そのための場づくりを、引き続き求めてまいります。
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