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『ロードス島戦記 灰色の魔女』を読んで

 ちょっと前にロードス島戦記の新装版を読んだ。ファンタジー小説といえばロードス島というイメージもあったし、学生の頃は何度か図書館で目にしたこともあったけれど、ここまで実際に読むことはしなかった。
正直、印象が悪かったのだ。昔のファンタジー小説といえば、妙に重苦しいイラストに重苦しい文体。その世界独特の専門的な用語や回りくどい表現で重厚にその世界が描かれており、読むのに疲れるという勝手な印象が私にはあった。だから、目にすることはあっても実際に手にとって読もうという気持にはどうしてもなれなかった。
 これは指輪物語が私に大きな影響を与えていたのだと思う。中学生も半ばごろだっただろうか、ドラクエやファイナルファンタジーといった名作テレビゲームにはまり、ファンタジーの世界に魅了されていた私は、指輪物語が面白いという情報を耳に挟んだ。のちにロードオブザリングの名前で映画化されるこの作品は、エルフ・ドワーフ・ホビットなど多様な種族が手を取り合い、悪とされる存在に果敢に立ち向かうファンタジー作品で、世界の作り込みが半端じゃない。当時理解しようと読み進める中でその世界にどっぷりとはまってしまったことは覚えているし、満足感も他では得難いものをもらった。感動という言葉では生ぬるい何かを覚えたし、私の心の中に残る名作だといってもいいだろう。……でも、読んだあとの疲れも半端じゃなかった。読んでいる最中に何度も諦めそうになったし、読み終えた後も「しばらく活字はいいか」と本を手に取ることもなった。
 この思い出が、不思議なことに私の中のロードス島戦記像として勝手に刷り込まれていたのだと思う。だから、今まで読むことはなかった。そのことをちょっと後悔している。
 実際読んでみると、物語がサクサクと進む。決して内容が薄いわけではないのに、読むのが止まらない。登場人物は個性的なのに、それぞれが作品の邪魔をしていない。でもしっかりと際立っている。彼らの冒険はとても刺激的で、一冊はあっという間に終わってしまった。非常に面白かった。読み終えてぱっと気になったのは主人公のパーンと、もう一人ウッドチャックという存在である。
 ウッドチャックの名前を見たとき、ダンジョン飯のチルチャックがすぐに思い浮んだ。同じ盗賊であることも大きかったと思う。だが、性格はそこまで似ていない。チルチャックは軽快で面倒見がいい。対してウッドチャックは、狡猾だ。ゲームの中でも盗賊が仲間になることはしばしばあるし、有用な職業であることも多い。でも、その存在が仲間になる必然性はそこまでないことが多いと思える。いままでは自然とそういうものだと受け取ってきた。でも、ウッドチャックは違う。彼には彼の理由や野心があり、その胸の内に秘めたものが彼を突き動かしていく。彼は共に旅をする目的が明確にあり、その仲間は今回の冒険の仲間でないといけない。冒険の中で見せる彼の思考や行動は実に人間らしい。物語の人物というよりは、そこに生身の人らしさがあった。だから私は彼の存在がとても好きになった。
 ロードス島戦記はとにかく、人物がありありと、そこに生きているように感じられることが私にとっての魅力なのかもしれない。だ一巻しか読んでいないし、今後どうなるのか分からないけれど、ウッドチャックは作品で私の思う人間らしさを発揮するだろう。今後の作品でも彼やその周囲の人物に注目していきたい。
 あと6冊で物語は完結する。パーンたちがどんな冒険を重ね、どんな結末を迎えるのか、楽しみでたまらない。

追記
今回の表紙はAIで作っているようです。人間が作ったのかAIがつくったのか、その区別は必要なのかと思うときがあります。こういうった抽象的な作品も作れるんだと不思議とうれしくなりました。素敵な作品と出会えて感謝です。

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