タバコ6DAYS|第6話「次の時代の煙――加熱式・電子タバコと未来の社会」
「煙が出ない=安全」ではなかった
近年、街の喫煙所の風景は大きく変わりました。
手元のデバイスを取り出し、煙ではなく白い蒸気を吐く人たち。彼らが使っているのが「加熱式タバコ(HTP:Heated Tobacco Products)」です。
私もかつて紙巻から加熱式に切り替えました。「匂いも少なく、家族にも優しい」「火を使わないから安心」と思っていました。
しかし、その考えは今振り返れば“幻想”でした。
当時、たしかに煙は減り、室内での匂いも薄まりました。しかし一方で、頭痛や動悸を感じる日もあり、「これは本当に体にいいのか?」と不安になることも。
もちろん、それが加熱式の影響とは言い切れませんが、後に調べるうちに、加熱式の安全性はまだ確立されていないことを知りました。
加熱式タバコとは何か
加熱式タバコとは、葉タバコを燃やさず、200〜350℃程度で加熱してニコチンを含む蒸気(エアロゾル)を吸入する製品のことです。
火を使わない点が紙巻タバコとの最大の違いで、代表的な製品にはIQOS(フィリップモリス)、glo(BAT)、Ploom(JT)などがあります。
紙巻タバコ:燃焼(約800℃)により煙を発生
加熱式タバコ:加熱(200〜350℃)により蒸気を発生
燃焼しないため、一酸化炭素やタールなどの一部有害物質は少なくなる傾向があります。しかし「少ない=安全」とは言えません。
「安全」データの出どころに注意
2014〜2016年頃、メーカーから「有害物質が9割減」「紙巻より安全」とする研究結果が発表されました。
しかしその多くは製造企業(PMIやBATなど)自身が資金提供・実施した研究であり、独立した第三者による検証は不十分でした。
後年、欧米の公的機関や研究者による再分析で、
「メーカー系研究は肯定的な結論を導くよう設計されている傾向がある」
「独立系の実験では、減少の程度が小さいか、逆に特定の新しい有害物質が増えるケースもある」
ことが報告されています。
WHOは2020年に次のように発表しています:
加熱式タバコは紙巻より一部の有害化学物質の曝露を減らす可能性はあるが、安全性が確認された製品ではない。長期的な健康影響は不明であり、リスク評価には慎重さが必要である。
FDAの立場
アメリカ食品医薬品局(FDA)は2020年、IQOSを「曝露低減製品(Modified Exposure Product)」として承認しました。
ただしこれは「病気のリスクを下げる」ことを意味するものではありません。
FDAは声明で次のように明言しています:
IQOSは有害物質への曝露を減らす可能性があるが、疾病リスクの低減を証明するものではない。
つまり、「少しマシ」ではあっても、「安全」とは認められていないのです。
体への影響:現時点でわかっていること
ここからは、実際に医学的にわかっている“加熱式の影響”を整理してみます。

加熱式と電子タバコの違い

社会と喫煙のこれから
日本の成人喫煙率は2023年時点で男性25%、女性7%。
加熱式の普及により「紙巻は減ったが、全体のニコチン依存人口は大きく減っていない」とも言われています。
喫煙所はガラス張りの小部屋に閉じ込められ、街の「煙の風景」は確実に消えつつあります。
ただ、これは単なる規制強化ではなく、「血管を守る社会への進化」だと私は感じています。
煙の量が減った分、私たちの選択の重みが増した。
吸うか、吸わないか。
その先にあるのは、数字ではなく“体調”です。
「吸わない自由」を取り戻す
禁煙して3年。
コーヒーの香りを楽しんでも、もうポケットを探すことはありません。
吸っていた時間が空いた分、深呼吸が増えました。
血管も脳も、ようやく静かなリズムを取り戻した気がします。
タバコをやめることは、我慢ではなく「回復の選択」です。
煙のない未来は、息苦しさのない未来でもある。
それが、私にとっての「タバコ6DAYS」の終着点です。
参考・出典
WHO: Statement on Heated Tobacco Products (2020)
FDA: IQOS Modified Exposure Order (2020)
CDC: Heated Tobacco Products (2023 update)
国立国際医療研究センター:加熱式使用と代謝症候群リスク研究(2024)
Nature Scientific Reports (2023)
Tobacco Induced Diseases (2022)
