【実体験】第1話「脳卒中は突然やってきた」
「ある夏の日、僕の血管が破れた」
2022年7月初頭――
夏の暑さが本格的になってきた頃、まさか自分の血管が破れるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
前日は、仕事終わりに同僚と軽く飲みに行っていた。ごく普通の夜。
いつもと変わらない、平凡で穏やかな日常だった。
その翌日。仕事は休みだった。
少し遅めに起きて、体を動かしにジムへ向かった。ストレッチを軽く済ませて、さあ今日は何をやろうかとマシンに手をかけたとき――
身体に、妙な感覚が走った。
頭の後ろ――ちょうど後頭部あたりに、ズン、と鈍い違和感。
よく言われる「激痛」とか「衝撃」ではない。言葉で説明しづらい、はっきりとした痛みの輪郭がない。けれど、明らかに「いつもと違う」と体が訴えていた。
違和感はすぐに消えた。
「気のせいだったのかな」と思い直し、マシンの前に立つ。
でも――体が、動かない。
動かそうとしても、腕も足も、言うことを聞いてくれない。
まるで体の奥から、「やめておけ」と誰かに制止されているような感覚。
物理的に動けないわけじゃない。でも、体が本能的に拒んでいた。
このとき、僕はまだ気づいていなかった。体が自分を守ろうとしていたことに。
その日はトレーニングをあきらめて、ジムの休憩スペースで横になった。
なんとなく、だるい。少し、頭が重い。
しばらくすると、後頭部にまたズキリと鈍い痛みが走った。
僕は頭痛持ちじゃない。でも、「まあこのくらいなら大丈夫だろう」と思っていた。
寝れば治る。いつもそうだったから。
――でも、今回は違っていた。
翌日も頭痛は続いた。
「あれ、風邪かな?」程度にしか思っていなかった。
念のため市販の頭痛薬を飲んでみる。確かに効く。でも、効果が切れるとまた痛くなる。
気づけば、薬の回数が1日1回から、2回、3回と増えていった。
それでも僕は、大ごととは思わなかった。
――まさか脳の血管が破れているなんて、誰が想像するだろう。
「脳神経内科という言葉を、初めて知った日」
発症から10日ほど経ったある日。
さすがにおかしいと感じた僕は、ようやく病院を探し始めた。
「内科?でも頭痛だから…何科なんだ?」
調べて初めて、「脳神経内科」という科があることを知った。
なんとなく不安だったけど、「軽く診てもらうだけ」と思って、近くの病院へ。
受付を済ませるとすぐにMRIを撮ることになり、「まあ念のためだろう」と軽い気持ちで検査を受けた。
検査が終わると、待つ間もなくすぐに診察室に呼ばれた。
医師の口から出た言葉に、僕は一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「脳の血管の一部が破れています。椎骨動脈解離です。大きな病院での精密検査が必要です。状況からして即入院になります」
――まるで、映画のセリフみたいだった。
そんなに深刻な状態だったのか?
痛みはあるけど、今こうして話してるし、立ってるし、普通に見えるはずなのに。
頭がついていかない。
「なぜ自分が?」「なんでこんなことに?」
思考がグルグル回る。
聞いたこともない病名。
命の危険?
自分が一番縁遠いと思っていた「病気」と、初めて真正面から向き合うことになった瞬間だった。
【次回予告】
あの日を境に、僕の生活も心の在り方も大きく変わりました。
次回は、精密検査から療養生活について、静かに綴っていきたいと思います。
