もしもそばかすに老子の『七分くらいが丁度いい』を加えたら?
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✅ 【七分くらいで満足するのがいい】
持して之を盈すは其の己むに如かず。
端えて之を鋭くすれば長く保つ可からず。
金玉堂に満つれば之を能く守る莫し。(運夷第九)
あと少しと欲張ると、人は不自由になる。七分くらいで満足するのがいい。
【恐らくこうなる】
我慢しなきゃ。
我慢しなきゃ。
けど、出来ない。
つい欲張っちゃう。
欲望のまま突っ走る。
いつもそう。
好きな男の子を前にした時も。
目の前に焼き鳥が富士山のように盛られた時も。
推しのグッズを10万円と突きつけられた時も。
部屋の洗面台の鏡。
私は、呆然としていた。
肩より下にある赤い髪。
愛嬌のある垂れ目。
欲望と反比例するかのような小さな胸。
そして、鼻には星のように散りばめられたそばかす。
鼻に右手を当てて、軽く擦る。
私の心は、おだやかではない。
そばかすを消す化粧水を大量に塗りすぎて、鼻が赤くなったからだ。
「まずい…明日デートなのに……」
気合いを入れ過ぎて塗り過ぎてしまった。
その代償は計り知れない。
とりあえずリビングの椅子に腰掛けた。
椅子を引くガタンという音が、やけに騒がしく聞こえた。
iPhone16Proで、「鼻 赤い 治す方法」と調べてみた。
ダメだ…
やはり病院に行くしかない…
それは無理。
だって、30分後にデートの約束をしてるから。
欲をかきすぎるからいつもこうなる。
これじゃあ、死ぬまでお腹ぺこぺこ…
とりあえず、パジャマから着替えることにした。
お気に入りのクリーム色のワンピースに袖を通す。
全身鏡で、一切の隙のない身なりに感心した。
また鼻の赤みが気になりだした。
これさえなければ、完璧なのに。
街を歩く。
人とすれ違う。
その度に(クスクス)と笑い声が聞こえた。
(みんな…私の鼻を見て笑ってるのかな…?)
そんな被害妄想を続けながら、駅前のマックを通り、マツモトキヨシを左に曲がる。
ビルケンシュトックの店舗を真っ直ぐ行ったところに、彼が立っていた。
私は赤いヒールをカツカツと鳴らしながら小走りした。
高いビルの間で、ヒールの音が反響する。
「お待たせ。待った?」
私が浩史に尋ねた。
「ううん、今来たところ」
浩史は、青いパーカーにブルージーンズ。
そして、右手にはIQOSを持っていた。
IQOSを充電器に戻し、左ポケットにしまうと、私の右手を握ってくれた。
「あれ?鼻赤いけどどうしたの?」
私は顔をふいっと背けた。
adidasのショップ店員と目が合った。
浩史に視線を戻す。
「なんでもないの!ちょっとね…」
私は恥ずかしくて視線を落とした。
こういうちょっかいをされるの、好き。
「可愛いよ。杏」
「えっ?」
「杏のそういうところ、好きだな」
浩史の真顔が男らしかった。
胸がドキドキする。
「私は欲張りだし、あんまり可愛くないよ」
浩史は私の顔をじっと見た後、赤くなった鼻にキスをした。
鼻から唇を離し、浩史は私の目を真っ直ぐ見てこう言った。
「そんなところも、可愛い」
私の頬は、鼻よりも真っ赤になった。
満ち足りていた。
愛も、このそばかすも、今日のために選んだ洋服も。
身の丈に合わない欲よりも今あるこの幸せを大切にしたい。
私は、浩史の右手をギュッと握り締め、高層ビルが立ち並ぶ街中へと歩き始めた。
🅿️欲は七分くらいで満足するのが丁度いいです。
あんまり欲をかきすぎると、自分が自分でいられなくなります。
生きていれば欲はそばかすのように散らばる。
「七分くらいが丁度いい」
この言葉こそ、満ち足りて生きる魔法の言葉。
もしもそばかすに老子の『七分くらいが丁度いい』を加えたら、恐らくこうなる。
参考文献
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