《全話収録》 嘘と欲と素直な僕
6月22日 全話公開
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ご購入ありがとうございます。
この物語はノンフィクションです。妻と出会うまでの実話を小説にしました。
あらすじ
周りから呆れられる程の素直といわれる大川冬馬は、親にそろそろ結婚しなさいと言われ、しぶしぶ街コンへ参加する。
そこで出会ったのは…
(全話 約48000文字)
第1章 嘘と欲に塗れた世界で
僕は、周りから呆れられるほど素直だった。
フィッシング詐欺やショップ店員の誘い文句に簡単に引っかかる日々。
でも、そんな性格を気に入ってくれて、彼女が出来ることが多かった。
僕のこんな性格を気に入ってくれたことは嬉しかったし、何より「好き」って言ってくれると、心が満たされた。
大学生までは、彼女が途切れることがなかった。
心が澄んだ子もいたし、中には容姿は可愛いのに悪口しか言えない子もいた。
そんな僕は社会人になり、仕事が楽しくなった。
ドラッグストアの仕事は僕の性に合っていた。
元々接客が好きで、常に何かをしていないと落ち着かない性格も幸いした。
まるで、魚みたいだと自分でも思ったほどだ。
そんなこともあり、22歳から仕事人間になった。
彼女はというと、店舗のアルバイトと何人か付き合ったり、デートした。
でも、何故か時が経つと、相手が学校の都合やら、僕の素直さに飽きたと言われ、フラれることが多かった。
その度に、仕事熱は加速していった。
気付けば30歳手前。
両親から「彼女でも作れ」と言われる始末。
耳にタコが出来た。
でも、心の何処かで、彼女というオアシスを探したい気持ちがあったんだと思う。
僕は、街コンに参加することにした。
こういったものに参加したことがなかった。
何となく頭の中で「結婚は職場恋愛がいい」と思っていたからだ。
でも、そうも言ってられない年になった。
それに、店舗の異動が2年毎で、出会いの数が圧倒的に少ない。
だから、色んな人に短時間で会える街コンは、今の僕にとってベストな選択だった。
季節は1月。
選んだ服装は、お気に入りのBEAMSの白のニットにリーバイスの501、NANO universeの黒の西川ダウンを羽織り、新宿まで電車で向かった。
少しずつ少しずつ新宿に近付く度に、血液が急行へと切り替わる。
やがて新宿に到着し、街コン会場までの地図を見ながら、慣れない通りを歩く。
冷たい風が吹き抜ける。
セットした髪がくずれないか心配した。
僕の横を通り過ぎた人から、甘い香水の香りがした。
会場に到着した時には、スマホと高層ビルを交互に見ていたせいで、首が少し痛くなった。
会場は立派なビルだった。
全面ガラス張り。
高さはどれくらいだろうか…
20階ぐらいはありそうだ。
僕は、街コン会場のエントランスをくぐり、食事休憩から戻ったサラリーマンと一緒に、エレベーターに乗り込んだ。
軽くおしくらまんじゅう。
肘と肘がぶつかり、鋭い痛みが走る。
だけど、この先に素敵な女性が待っていると考えるるだけで、その痛みはすぐに消えた。
男は単純だ。
それに僕の素直さは、こんなところにまで作用していると思うと、我ながら尊敬した。
街コン会場には、既に多くの参加者で列を作っていた。
しまむらの服で固めたオタク系の人。
ナチュラルメイクで年相応な女性。
参加者の目の奥には、隠しきりようのない熱が宿っていた。
僕が品定めを始めた途端、視線を感じた肌が冷たくなった。
戦いはもう既に始まっているのだ。
そして、ここから嘘と欲に塗れた世界に足を踏み入れることになる。
僕は早速、受付に案内された通りに、席に座った。
会場内の席は、15席用意されており、ソファの背もたれは100cmほどの高さがあり、座った時に視界が遮られる。
周りの目が気にならない設計になっていた。
ムードな雰囲気を漂わせるために、会場内の照明は少し暗めだった。
席にはプロフィールシートが置いてあった。
名前やら趣味、年収。
プライベートは何をするか。
ありとあらゆる項目が、並べられていた。
軽い尋問だなとプロフィールシートを手に取り、表裏とひっくり返して眺めた。
書いてみせるか。
可愛い彼女をゲットするために。
とりあえず女の子にウケのいいことを書くことにした。
趣味は音楽鑑賞。
素晴らしい。
当たり障りない。
年収は350万円と書いた。
店長になれば、年収450万円になるから、まぁ「昇進前」と言えばOK。
プライベートはショッピング。
よく町田や新宿に洋服を買いに行くから、付き合ったらお互いの服を選びたい。
プロフィールを読み返した。
嘘がなく、我ながら関心と同時に呆れた。
少しでも自分を背伸びして書けば、いい女の子と付き合えるかもしれないのに、どうしても嘘がつけない。
まぁ、これが僕か。
でも、こんな僕を好きになってくれた人がいたんだ。
大丈夫。
僕は素直にいこう。
それでいい。
街コンが始まった。
形式はシンプルだ。
プロフィールシートを交換しあい、それを見ながらお互いに質問していく。
それを3分間。
そして、3分経ったら、別の席に男性が移動する。
僕は、「自分が中華料理店のテーブルにでもなりそうだなぁ」と、くだらないことを考えていた。
一人目は、元々隣に座っていた女性だ。
細身で白のワンピースに茶色の髪でショートヘアー。
清楚系だ。
なかなかのタイプ。
10分間くらい隣同士に座っていたから、少し緊張せず話すことが出来た。
「初めまして」
僕は男らしく、先に話し掛けた。
「初めまして」
女性はナチュラルメイクの中に結婚への決意を宿していた。
瞳は大きく、僕は目を逸らすことが出来なかった。
品定めは始まったんだ。
まるで、鑑定される品みたいな気分だ。
なるほど…
これが街コンか…
僕は負けじと、自分が書いたプロフィールシートを手渡した。
僕は、相手からプロフィールシートを受け取り、読んでいく。
僕は、橘愛美さんへ質問した。
「素敵なプロフィールですね!お仕事は何をされているんですか?」
すると、橘さんは、
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