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【自己啓発ポエム】母の音、僕の火。

たったひとり
たったひとりで
湖の上に立っているみたいだ

足元には
魚が何匹も泳いでいる

いいな
仲間がいて

いいな
羨ましいよ

僕にはそんなやついない
目が昔から見えないから
友達の顔さえ分からない

だから目が見えないことを恨んだりもした

真っ暗な視界の中、水の音を頼りに歩いていた
音が大きくなったところで
右手で水を掬おうしゃがんだ

でも、間違えて湖にある石で指を切った
指から流れた血が
赤い糸のように引いていて
それをアジサシが静かに眺める

なんかもうどうでもよくなった
もうどうにでもなれ

僕は顔を湖の中に沈めた
もうどうにでもなれ
どうにでもなれ

どちらにしろ真っ暗な視界のまま
だから怖くない
ちっとも怖くなんかない

「隆」
天国から声が聞こえた

「お母さん?」

何年も前、デトロイトのある学校の女先生が、授業中に逃げた実験用のネズミを、スティーヴィー・モリスという少年に頼んで、探し出してもらった。

この先生がスティーヴィーにそれを頼んだのは、彼が、目は不自由だが、その代わりに、素晴らしく鋭敏な耳を天から与えられていることを知っていたからである。

素晴らしい耳の持ち主だと認められたのは、スティーヴィーとしては、生まれてはじめてのことだった。

スティーヴィーの言葉によれば、実にその時ー自分の持つ能力を先生が認めてくれたその時に、新しい人生がはじまった。

それ以来、彼は、天から与えられた素晴らしい聴力を生かして、ついには「スティーヴィー・ワンダー」の名で、一九七〇年代有数の偉大な歌手となったのである。

引用: 人を動かす 新装版/出版社: ‎創元社; 新装版/著: デール カーネギー/著: Dale Carnegie/著: 山口 博

「隆にはすごい才能がある。
だから諦めないで」

僕は思いっきり湖から顔を上げた

その場に尻もちをつき、
肩が激しく上下に動かし
酸素を全身に送る

頬を触ると水じゃなく
それが涙だと分かった

僕が水の中で泣いてたことに気付いたんだ
お母さんは

そうだ
お母さんだけは
音を聞き分ける僕の才能を信じてくれていた

ありがとう
お母さん

目を覚ました時、僕は自宅のベッドにいた

僕はお母さんから誕生日にもらった
ピアニカを大事そうに抱えていた

僕はそのままピアニカの鍵盤に10本の指を乗せる
To Feel The Fire
お母さんがよく聞いていた曲を弾いた

多分、今
僕のコンサート会場の最前列に
お母さんが座っている

きっと笑顔で聴いていてくれているはずだ

そのピアニカが
僕の心に火を灯してくれた

「認めているよ」という火を

ありがとう、お母さん。
僕、頑張って生きていくから

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