愛されることしか考えていなかった
今思えば、私の人生、
人から愛されることしか考えていなかった。
保育園の同級生の家に遊びに行ったとき、
オヤツに「いちごミルク」が出てきた。
初めて見るいちごの食べ方に戸惑い、
かかっていた砂糖の甘さに、溺れそうになった。
じっといちごミルクを眺めていたら、友達のお母さんに「どうしたの?」と聞かれた。
「これ、どうやって食べるの?」と尋ねると、
「一つずつスプーンの裏で潰して食べてね」と教えてくれた。
ミルクはみるみるうちに、淡いピンク色に染まっていった。
まるで幸せの象徴のように。
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小学校に上がってから、友達の家に遊びに行ったとき、
「一人にひとつ部屋がある」ことに驚いた。
彼女の部屋は、私の持っていないものであふれていて、
ベッドの枕カバーからはふわっと洗濯のいい香りがした。
そもそも、枕カバーを洗うということを私は知らなかった。
私の枕は、よだれのシミだらけで、いい匂いなんてしなかった。
ある夜、体調を崩して吐いてしまったとき、
母には「洗濯しなあかんやんか!」と激しく叱られた。
そのとき、数日だけはいい匂いの布団で眠れた。
今でも洗濯物の匂いが大好きだ。
あの頃の香りを探し続けているけれど、いまだに出会えていない。
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タオルといえば、幼稚園の頃、私はいつもタオルを握って匂いを嗅いでいた。
いわゆる「ライナスの毛布」。
タオルの端を鼻に当てて、親指を吸っていたおかげで、
今も前歯は立派な出っ歯。矯正すべきだったかな?
もっと若い頃に、今みたいに簡単に矯正できていたら、きっとやっていただろうな。
最近の若い子たちは100万円かけて矯正してるけど、ほんとうに顔が変わる。
歯ひとつで、人相ってあんなにも変わるんだなと思う。
もっと美人に生まれていたら、人生変わっていたのかな。
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何人かと付き合ってきたけれど、
どの人とも「愛されている」と感じられた時だけは、本当に幸せだった。
けれど、年月が経つと心からの愛を感じなくなってしまい、
そして、新しい愛を求めるようになる。
これって、私のわがままなのかな。
恋人や夫婦の関係に、マンネリはつきもの。
人は永遠に愛し合うことなんて、できないのかもしれない。
長く一緒にいると、相手の嫌なところが見えてくる。
愛があるうちは許せた小さなことも、
愛が冷めると、許せなくなってしまう。
たとえば——
トイレットペーパーを取り替えていない。
洗い物をそのままにして寝てしまった。
頼みごとをしても、すぐに動いてくれない。
本当に小さなことの積み重ねなのに、
「愛されてないからだ」なんて、極端な思考に陥ってしまう。
もしかしたら、病気に近いのかもしれない。
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私は、どんな愛が欲しかったのだろう。
ずっと一緒にいてくれる愛?
いつも愛情を言葉や態度で伝えてくれる愛?
お姫様のように大切にしてくれる愛?
優しく、穏やかに諭してくれる愛?
ともに成長できる愛?
愛されていると実感できる愛?
——そんな贅沢なすべての愛を、あなたは与えてくれた。
そう、あなたに出会えたことは、まさに奇跡。
私はとうとう「真の愛」を手に入れたのだ。
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動物好きな私のために、
ある日、あなたが子猫に出会ったとき、
元々動物に触れられなかったあなたが、
まるで研究者のように、毎日YouTubeで育て方を学び、
最後には私よりも子猫に懐かれていたよね。
私が不在の日に猫の薬をお願いしたら、
「急に飲み会に誘われた」と連絡が来たけど、
「ちゃんと一度帰ってあげたから大丈夫!温度調節もしておいたよ」って。
そんなふうに、なんでも丁寧に、まっすぐにやってくれる人。
本当に仏様のような人。
私もあなたのように、尊敬できる愛情深い人になりたい。
今までの人生を取り戻すように、愛に満ちた毎日を送りたい。
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そう思っていた矢先、
あなたは一瞬で、この世界から消えてしまった。
毎日がバラ色に見えていたこの世界が、
たった一瞬で、濁った、暗い世界に変わってしまった。
差し込んでいた淡い光も、ぼんやりと消えていった。
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あなたとなら、
お互いの嫌なところも補い合えた。
夢を一緒に追いかけられた。
何をしても、幸せだった。
世界が、バラ色に見えた。
なんでもできる気がしたのに——
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そして今。
私の心の「暗い部分」を作り上げてきた母も、
静かに命の終わりを迎えようとしている。
ここ数年、介護が必要なのに「家がいい」とわがままを言い続け、
妹も疲れ果てていた。
愛情のかけらも見せず、
「子どもが親を看るのは当たり前だ」と言い放ち、
「ありがとう」の一言も言わない。
「感謝くらい言ってよ」と言うと、
「そんなふうに育てられていない」と返された。
そんな母の最期を見ていると、
なぜか「かわいそう」としか思えなくなった。
あれほど憎んでいたのに。
あんなに大嫌いで、虐待されてきたのに。
痛い痛いと苦しそうに寝ている母を見ていると、
ただただ、不憫でしかない。
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あなたから教わった「慈悲深い愛」を、
母にも分けてあげよう。
きっと、母も本当は愛が欲しかったんだよね。
愛情不足は、体の栄養不足と同じで、
あちこちに不調をもたらす。
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やっぱり、どんな時も——
愛を感じて、愛されて、生きていきたい。
そのために、私は何をするべきだろうか。
