自伝的音楽エッセイ ローリングストーンズを聴き始めた頃
少し前のことだけど、ラジオからローリングストーンズの「アングリー」という曲が流れた。FMラジオでのヒットチャートの曲を紹介する番組であった。こんなに長いこと現役で活動しているロックグループはないと思う。それも楽曲も演奏もあまり変わらずで・・・何十年も。
ところで僕が中学生の時初めて買ったシングルレコードがそのストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」であった。何でそれを買ったかと言えば、その当時少し尖がっていたクラスメート達の影響である。そのレコードを買えばクラスで周りから一目置かれるということがあった。
そのような理由で買った「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は洋楽初心者の僕には、ブルースロック的な曲調がしばらく馴染めなかった。ただ、その頃から2,3年経ちロックに大分馴染んだころ彼らのライブアルバム「ゲット・ヤー・ヤー・ヤーズ・アウト」(ちなみにこのタイトルの意味は「ヤーヤーヤーの連中をつまみ出せ」というビートルズを意識したと思わせるものだ)のオープニングで演奏されるこの曲の有名なリフを聴いた時になんとかっこ良いのだとぼうっとした記憶がある。
次に聴いたストーンズのレコードはクラスメート達とのレコード物々交換で手に入れた「テル・ミー」である。この曲はストーンズのデビューアルバムに入っていて当時でも、すでにずいぶん昔の曲であったのだが洋楽好きの若者達によく聞かれたノリの良いミデアムテンポの曲だ。ちょっと切なく繰り返されるサビの”(You got to) tell me you're coming back to me. ~"の歌詞をつい口ずさんでしまうかっこよい曲なのだ。
この曲どれくらい若者に支持されていたかというと僕の身の回りでこんなエピソードがあった。一つ目は・・・ある時クラスメート達と新宿のデパートをぶらついたことがあった。デパートの少し広い休憩所みたいなところにたむろして時間つぶしをしていた。その休憩所には当然ながら大人の客たちもいた。中には大学生ぐらいの若者もいて中学生の僕らを「なんで子供がこんなとこで騒いでんだよ」と言わんばかりに横目でチラチラ見ていた。で、そこにジュークボックスが置いてあった。1曲10円であった。
僕たちはジュークボックスは初めての経験で少しどきどきしながら洋楽の曲を何曲かかけようと相談した。僕は周りが大人ばかりなので、ここは少しかっこを付けて昔のいかした曲をと考え、あの「Tell me」をかけた。印象的なギターのチャララララーというイントロ、そして低めに響かしたミックジャガーのボーカル、バックにタンバリンの音が聞こえていた。すると何という事か大学生たちが寄って来た。「良い曲知ってるじゃない」「僕たちどっから来たの?」と話しかけてきてジュークボックスに合わせてTell meを口ずさんだりしていた。僕たちは意識して素直っぽく「ええ、良い曲ですね」と受け答えした。実はちょっと嬉しかった。
もう一つのエピソード。通っていた中学校に美術大学から水色のジャケットをまとったかっこ良い男性の教育実習生が来た。洋楽なんかにも詳しく生徒に人気があった。実習がすべて終了した翌週の日曜日、僕はクラスメート達と一緒に電車に乗ってその人の家まで遊びに行った。そこにはその大学生の友達も数人集まっていて一緒にトランプなどをした。ちょっとアーティスティックないで立ちの人が僕らに聞いた。「音楽なんか好きなの?」僕はすかさず「ローリングストーンズのTell me」!と言った。するとそのお兄さんは何と”Tell me you're coming back to me.”と口ずさんだ。そのお兄さんと中学生達の合唱が始まった。
冒頭でも言ったように現在まで長い歴史を持つローリングストーンズ。たくさんの楽曲を発表し、僕が相当ふけるまで色々な時期に、時々生活に入り込んで来た。なので思い出もたくさんある。だけど最初の付き合いはこんな感じであった。
