介護職って、こうやって自分を置いていく
「おはようございます」
「……」
返事が返ってこない。
微かに身体が青ざめた。
「今日、リーダー機嫌悪い?」
あやちゃんに聞く。
「そうそう、今日は稼働率のことで呼ばれたみたいなんだよね」
「あぁ…そっか。」
それじゃ仕方ないよね。
リーダーも大変だよね。
お説教とか、胃がキリキリしそう。
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そんなことを思いながら
業務に就いた。
あっ、これリーダーの仕事だ。
やったら少し楽になるかな。
朝も挨拶返ってこなかったし、
これやったら
「ありがとう」って言ってもらえて
空気和むかも。
そんな場面を想像したら、
少し気持ちが軽くなった。
リーダーが笑ってくれるかもしれない。
そう思ったら、
なんだか嬉しくなった。
わたし、
知らないふりをしながら
リーダーの「ありがとう」を待っていた。
あっ、リーダー来た。
ドキドキ。
……あれ?
素通りした。
胸がチクっとした。
でも、
リーダー、今かなり病んでるんだろうな。
そう思うことにした。
口腔ケアのコップを磨きながら
何故かモヤモヤした。
でも、
気のせいにした。
トイレ誘導でも、
いつもなら流せることにイライラした。
あれ?
なんか今日おかしい。
わたし、
こんなにイライラするタイプだっけ。
その時、
ふと気づいた。
始まりは、
朝の挨拶だった。
無視されて、
悲しかったんだ。
でもわたし、
その気持ちを飛ばして、
「リーダーも大変だよね」
って、
相手を理解しようとしてた。
本当は、
ちゃんと挨拶して欲しかった。
わたし……
淋しかった。
無視された瞬間、
自分の存在が
雑に扱われた気がして、
辛かった。
じゃあ、
リーダーの仕事をやった時は?
「ありがとう」が欲しかった。
受け取ってほしかった。
わたしだって、
別に好きでやったわけじゃない。
リーダーを思ったから、
空気悪くしたくなかったから、
やったのに。
そう思った瞬間、
奥歯に
グッと力が入ってることに気づいた。
あっ……
わたし、
悔しかったんだ。
気に入られたかったのかもしれない。
気に入られるために、
挨拶した。
気に入られるために、
リーダーの仕事をした。
だから、
受け取ってもらえなくて
苦しかったんだ。
わたし、
優しくしたかったんじゃない。
本当は、
「わたしを受け取ってほしかった」んだ。
淋しかったし
傷ついていた。
でもわたし、
相手を理解することで、
その気持ちを
なかったことにしようとしてた。
「リーダーも大変だよね」
って、
自分に言い聞かせながら。
だけど本当は、
ただ、
受け取ってほしかった。
そうやって、
やっと自分の気持ちに触れた時、
置いてけぼりだったわたしが、
少しだけ戻ってきた気がした。
ちゃんと、
「ここにいてよかったんだよ」
って言われたみたいに。
