シリーズ③ 第7話 すべてを失ったと気づいたとき、私はまだ信じようとしていた
「おかしい」
そう思ったのは、
画面を何度も見返したあとでした。
数字が、合わない。
いや――
合わないどころか、“あるはずのものが消えていた”んです。
最初は、見間違いだと思いました。
何度もログインし直して、
画面を更新して、
別の時間にも確認してみる。
でも結果は同じでした。
本来あるはずの残高が、
そこには表示されていなかった。
「そんなはずはない」
頭ではそう思いながらも、
心のどこかでは理解していました。
何かがおかしい。
すぐに相手に連絡を取りました。
返信は、来ました。
ただ――
どこか曖昧で、
核心には触れない内容でした。
「システムの都合で一時的に反映されていない可能性があります」
「現在確認中ですので、少しお待ちください」
その言葉を見て、
私は一瞬、安心してしまいました。
“まだ大丈夫かもしれない”
でも同時に、
・説明がはっきりしない
・具体的な解決策が提示されない
・質問に対する答えがずれている
そんな違和感も、確かにありました。
時間が経っても、状況は変わりませんでした。
再度連絡をしても、
返ってくるのは似たような言葉ばかり。
そして、ある時を境に――
返信が途絶えました。
その瞬間、
頭の中で何かが崩れました。
「もしかして」
ではなく、
「やっぱり」
という感覚でした。
信じたくなかった結論を、
ついに認めざるを得なくなったんです。
これまでのやり取り。
積み重ねてきた時間。
そして、お金。
すべてが、
一気に現実として押し寄せてきました。
それでも私は、しばらくの間、
「何かの間違いかもしれない」
「まだ戻る可能性があるかもしれない」
そう思い続けていました。
完全に理解してしまうには、
あまりにも大きすぎる出来事だったからです。
詐欺に遭ったとき、人はすぐには現実を受け入れられません。
むしろ、
「まだ大丈夫かもしれない」と考えてしまう時間が生まれます。
それは弱さではなく、
心が自分を守ろうとする反応です。
でも同時に、その時間が――
次の行動を遅らせてしまうこともある。
あのときの私は、
すべてを失った現実を前にしてもなお、
完全には受け止めきれていませんでした。
次回、
「崩れたあとの現実と、最初にやったこと」
私はようやく、動き出すことになります。
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