シリーズ④ 第5話 時間差で押し寄せた感情――“冷静だったはず”の私に起きたこと
被害直後の私は、
自分では、
かなり冷静に動いているつもりでした。
相談先を探し、
必要な連絡をして、
これからの対応を考える。
もちろん不安はありました。
でも当時は、
「まずは現実的に動かなければ」
という感覚の方が強かったと思います。
だから私は、
自分がそこまで大きなダメージを受けているとは、
あまり思っていませんでした。
でも実際には、
感情の方が、
かなり遅れてやってきました。
ある程度、
手続きや対応が進み始めてからです。
ふとした瞬間に、
「ああ、本当に終わったんだな」
という感覚が急に押し寄せてくる。
仕事中や外出中は普通に過ごしていても、
一人になった瞬間、
急に現実感が強くなることがありました。
「どうしてあのとき」
という考えも、
何度も頭に浮かびました。
もっと早く止まれていたら。
違和感を無視しなければ。
誰かに相談していれば。
そういう“もし”を、
繰り返し考えてしまう。
でも同時に、
当時の自分を完全に責め切れない感覚も、
どこかにありました。
なぜなら、
あのときの私は、
本気で信じて、
本気で立て直そうとしていたからです。
騙されようと思っていたわけではない。
怠けていたわけでもない。
むしろ、
「どうにかしなければ」
と思っていたからこそ、
入り込まれてしまった部分もあった。
そのことを少しずつ整理できるようになるまでには、
時間がかかりました。
そして今思うのは、
詐欺被害のつらさは、
被害直後だけでは終わらないということです。
むしろ後になってから、
感情や現実が、
少しずつ追いついてくることもある。
私は、
その“時間差”を強く経験しました。
だからもし今、
「自分は意外と平気かもしれない」
と思っている人がいたとしても、
無理に気持ちを整理しようとしなくていいと思っています。
人によっては、
かなり後になってから、
ようやく実感が出てくることもあるからです。
当時の私は、
“動くこと”で精一杯で、
“感じること”は、
後回しになっていたのかもしれません。
次回は、
被害後に少しずつ見えてきた、
「なぜ自分は引っかかったのか」について書いていきます。
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