シリーズ④ 第6話 “欲があったから騙された”――本当にそれだけだったのか
被害後しばらくしてから、
私は何度も考えるようになりました。
「なぜ、自分は引っかかったんだろう」
投資詐欺のニュースや注意喚起は、
以前から見たことがありました。
だから正直、
自分はそこまで簡単には騙されないと思っていたんです。
怪しい話には気をつける。
簡単に信用しない。
うますぎる話は疑う。
そういう意識は、
一応持っていたつもりでした。
でも実際には、
引っかかってしまった。
そして今振り返ると、
私は最初から
“完全に信用していた”わけではなかったと思います。
むしろ途中途中で、
「少し変だな」
と思う瞬間はありました。
ただその一方で、
紹介者自身が、
先にその投資を実践しているように見えていました。
利益が出ている話も、
折に触れて聞いていましたし、
実際に、
投資のWeb画面や、
ネット銀行の入出金明細などを、
スマホで見せてもらったこともあります。
もちろん今なら、
“見せられる画面”だけで判断してはいけない、
と思います。
でも当時は、
そういうものを実際に見ることで、
「少なくとも、この人は本当にやっているんだ」
という感覚が強くなっていました。
だから私は、
違和感があっても、
完全には否定し切れなかったんだと思います。
もちろん、
将来への不安や、
「もう少し余裕のある生活をしたい」
という気持ちもありました。
私は当時、
単純に“楽して大金持ちになりたい”
と思っていたわけではありません。
むしろ、
「このままで大丈夫なのか」
という将来への不安の方が強かったと思います。
そして紹介者は、
その投資だけを続けるのではなく、
短期的に利益を出し、
その利益を別の投資へ回していく、
という話もしていました。
実際に、
株式投資や不動産投資の話も聞いていたので、
当時の私には、
それが“極端に怪しい話”には見えなかったんです。
ただ、私の場合は、
紹介者ほど大きな利益が出ていませんでした。
最初の入金額も違っていたため、
「自分はまだこれからなのかもしれない」
という感覚がありました。
だから私は、
短期で終えるというより、
“もう少し続ければ変わるかもしれない”
という気持ちで、
中長期に保持してしまっていた部分があります。
そして今思うのは、
詐欺というのは、
単純な「欲」だけでは説明できないということです。
不安。
期待。
焦り。
そして、
「ここまでやってきた」
という感覚。
そういう感情が重なった時、
人は普段とは違う判断をしてしまうことがある。
しかも詐欺は、
ただ商品や利益を見せるだけではありません。
人間関係や信頼感、
「途中で投げ出したくない」という心理まで、
少しずつ利用してくることがある。
当時の私は、
ちゃんと考えて、
自分で判断しているつもりでした。
でも実際には、
かなり心理的に誘導されていた部分があったんだと思います。
今なら、
少し分かります。
詐欺は、
“何も考えていない人”だけが遭うものではない。
むしろ、
真面目に考えて、
将来を良くしようとしている人ほど、
その不安や責任感を、
利用されてしまうこともある。
私は、そのことを身をもって知りました。
だから今は、
「自分は大丈夫」
と思っている時ほど、
一度立ち止まってほしいと思っています。
違和感は、
後から振り返ると、
意外と最初から出ていることがあるからです。
次回は、
被害後に少しずつ変わっていった、
“お金に対する感覚”について書いていきます。
いいなと思ったら応援しよう!
同じように苦しんでいる方へ届くことを願って書いています。今後の執筆活動の応援をいただけると励みになります。