#5-3 塔の気配|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第3話 塔の気配
塔の中央には、石の心柱が立っている。
その内部は空洞で、光を通すための空の導管のように、崩壊した上空までまっすぐに貫かれていた。
「空洞の柱なのね…」
ルリはその、筒状の心柱を見上げながらつぶやいた。
「本来なら、ここにオリジア石の光が柱のように通っているんだ」
『タ』は、以前レイに聞いた仕組みを説明した。
「まあ…!さぞ綺麗でしょうね…」
ルリが目を輝かせてささやいた。
螺旋階段を上がると、周囲に部屋が続く。ノーレムの塔と酷似していたが、ここ、ラーフェの塔内は、どの部屋も棚すらなく、がらんどうで埃が積もっていた。
タトは冷たい石壁に触れた。
「ここは、愛の塔と呼ばれているんだよね?」
「ああ」
確信を持ってレイが応じる。
「それぞれの塔には、何か特別な役割があったんだろうか…」
タトはこれまで巡ってきた塔を、思い起こしていた。
タトの出身地、ルミナリー「希望の塔」
ミミの街、フェリサリア「友情の塔」
レイの街、ノーレム「知識の塔」
ルリの街、ヴァリス「自信の塔」
そしてここ、ラーフェ「愛の塔」
この世界には、女王の氷山を中心に、六つの塔が建っていた――はずだった。
これまでのどの塔も、崩れていた。
ここも例外ではない。
五階まで登ると、天井は完全に崩れ去っており、吹きさらしになっていた。
壁だけが残された空間から、街を見下ろす。
濃い霧の中、裏手の森を見つめていたレイが、訝しげに眉を寄せた。
「何か違うな…丘がある?」
「森でしょ?」
「いや…多少の起伏はあるにしても、山脈までは平野のはずだ。地形が少し違う。」
暗闇が迫るのを見て、タトが言った。
「今夜はここに泊まって、明日詳しく調べてみよう」
「…ヴァリスみたいに亡霊は出ない?」
ミミが小声で尋ねた。
「あれはかなり特殊だ。大丈夫なはずだ。」
レイは静かに答える。
「たとえいたとしても、私が癒すわ。」
ルリが微笑んだ。
レイは完全に暗くなるまで、黙々と塔を調べていた。
「何か、音がする。ミミ、来てくれ。聞こえないか?」
「ん?……そうだね。どこからだろう?あ…、もう聞こえない」
夜の冷気が、五人の背筋をゾクリと撫でた。
*
晴れた翌朝、街の全貌を確認しようと、皆は塔の上まで上った。
五階にたどり着いたとき、先頭のタトの足が凍り付いたように止まった。
「……!!」
崩れた壁の向こうに人影が一つ、ある。
背が高く、ガッシリとした肩。気配なく街を見下ろしている。銀色の長い髪だけが風に揺れていた。
まるで亡霊を見たかのように、五人は息を止めた。
昨晩は全員が塔下で寝ていたはずなのに、今そこにいるのは誰なのか…。
物音に気づいた彼がゆっくりと振り向いた。
その顔は、仮面に覆われ、金属的にキラリと光った。
誰も、声を出せなかった。
タトの一人が腕をつねり、痛みにハッとしたタトが恐る恐る声をかける。
「あ、あなたは、この塔の守り人ですか?」
声が少し震えた。
「守り人……」
彼の髪がゆらりと揺れる。
「いいえ、私は新たにここへ来たものです」
彼は抑揚のない低い声で答えた。
「今はこの塔と街を見回っています」
彼の全身がこちらを向くと、静かなその威圧感にタトは息を飲んだ。
(つづく)
◯本篇はこちら
◯設定・サイドストーリーはこちら
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでくれてありがとう♡