不可能なき旅路〜その頃の二人(ルリとイオ)【番外編】|追憶のオリジン
こちらは「追憶のオリジン」第六〜七章のサイドストーリーとなります。
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【番外編】不可能なき旅路〜その頃の2人(ルリとイオ)
「わあ!雪キツネのマフラー!」
ルリは明るい声を上げた。
「イオって本当に何でもできるのね!」
先日は油がなくなった、と言うと、すぐにトナカイの油を用意してくれた。
そして、「寒いわね」とぼやいたら数日で、トナカイの毛皮に雪キツネのマフラーだ。
まるで魔法のように出てくる。
油を使い、肌の手入れをするルリ。
イオとの旅は、言えば言っただけ快適になる。
この冬場に、食料の調達、保存食の加工、防寒具の準備、設営。
どれだけの仕事があるだろう。
それをイオは当然のようにこなしてくれる。
(これは、ますます良い拾い物だったわ。無愛想も使いようね♡)
少し前までは、胸襟を開かないイオに不満も覚えたが、気にしないことにした。
行動で示してくれれば十分だ。
「それにしても、イオはいつ食べているの?お茶も飲まないし…」
「私は必要な時に必要なものを得ているので問題ありません」
「ふうん。
でもこれじゃあ保存食が増えるばかりだわ。あなたが持つのも限界があるわよ」
「その通りですね。調整します」
おかげで驚くほどスムーズな移動だったが、ルリの依頼を受けるために、寄り道や滞在を伸ばす時間も多かった。
*
やがて二人は、大きく焼けた地点に辿り着いた。
「これは、ミミの火柱の跡じゃない?すごい範囲ね…。イオ、周辺を調査して情報を集めて」
「分かりました。しかし、魔攻撃の危険があります。離れて大丈夫ですか?」
「さっき攻撃をかわしたばかりよ。少しくらい平気だわ」
数分で戻ったイオは報告をする。
「約一週間前に起きた模様。状況からしてミミさんの暴発と見て間違いないでしょう。数百メートル以上に渡り、木々が炭化しています。
周辺に人影なし。生存者の気配はありません。この先に奇妙な野営跡を発見しました」
「そう……みんな無事のようね。このまま跡を追いましょう」
「彼らの経路は大きく迂回しています」
「では、最短距離で空白の塔へ」
「御意」
ルリはトウヒで香り付けした油をもう一度肌に塗り込むと、ソリに荷物を積込み移動の準備を始めた。
その腰には美しい鴨の羽根と、指先にダウンを詰めたミトンがあった。
先日の鴨肉の味がまだ、忘れられない。
今日はどんな食事になるだろう。
それを思うとつい、鼻歌が出てしまうルリだった。
一方のイオにとって、ルリの言動はシンプルでストレスがなかった。
「不可能」と告げればさっと切り替えて、別の指示をくれる。タトのように不明瞭で推測が必要な言動がないのだ。
その点で二人は相性が良かった。
鼻歌まじりに身支度を整えるルリと、無言でソリの紐を締め直すイオ。
薄暗い森の中、雪を踏む足音に重なるようにソリが滑る。
イオはルリの半歩後ろを歩く。
二人の影は、長く伸びた冬の日差しをチラチラと反射しながら、その先にある空白の塔へと向かっていった。
(おわり)

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