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ティルの声なき語り② 〜サイドストーリー

こちらは「追憶のオリジン」第四章のサイドストーリーとなります。
※第四章のまとめは以下からどうぞ。
※本編マガジンはページ下部からどうぞ。

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②聖痕の口づけ


そんな私の光、
私の全てである彼女が、
ある時、
冒険者と共に
氷山へ旅立つことを決めた


彼女がいなくなる…?
身が引きちぎられそうだ!


絶望に打ちひしがれる私を
彼女は初めて振り返り、

まっすぐに、この私を見つめて
言った


ティル、いつも見守っていてくれて、ありがとう。
ね、こっちへ来て、座って話しましょう。

こうして二人で話すのは、子どもの頃以来ね。


あなたはいつも、
私を助けようとしてくれていたわ。
どこへ行くにも、
守るためについてきてくれていたの、
知っていたのよ。

あなたが見ていてくれたから、
私はどこへでも行けた。


ね、私、この街を出て、
氷山を目指すの。
あそこに女王が眠っているらしいわ。

女王を目覚めさせて
この街を助けたいと思っているの。

街を救いたい、
それは、あなたも同じでしょう?


あなたなら、この街をまとめられるわ…。


ね、今まで考えたこと、
なかったでしょう?

でもね、あなたが、
この街のリーダーになるのよ。

あなたしかいないと、私は思ってる。
あなたなら、できるわ。

信じてる。



そう言うと、彼女は
静かに歌い始めた。

それは、この私だけに向けられた、
特別な歌だった。


歩むものに 道ひらけ
まなこに見えずとも 真はあり

そなたの中に 種ありて
いまは眠れど 時 くれば芽吹かん

他が定むるを 力とせず
そは 己がうちより湧くものなり

されど忘るな
誇りとは 戦のためにあらず

ただ 己を欺かぬものなり


気がつくと、
私は涙を流していた。

私のためだけに歌われた歌に、
肩が震え、腹の底から熱がわき上がった。

光に捨てられる深い恐怖と、
初めて自分の存在が認められ、重要な役割を与えられた歓喜だろうか。

私の頬を洗うように、
涙が溢れて止まらなかった。


彼女は、細く美しい指で
私の頬を伝う涙を拭うと、

その濡れた跡に、

微笑みながら
そっと優しく、口づけをした。




(③へつづく)→


☆本編はこちら


☆設定サイドストーリーなど


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