ティルの声なき語り② 〜サイドストーリー
こちらは「追憶のオリジン」第四章のサイドストーリーとなります。
※第四章のまとめは以下からどうぞ。
※本編マガジンはページ下部からどうぞ。
②聖痕の口づけ
そんな私の光、
私の全てである彼女が、
ある時、
冒険者と共に
氷山へ旅立つことを決めた
彼女がいなくなる…?
身が引きちぎられそうだ!
絶望に打ちひしがれる私を
彼女は初めて振り返り、
まっすぐに、この私を見つめて
言った
*
ティル、いつも見守っていてくれて、ありがとう。
ね、こっちへ来て、座って話しましょう。
こうして二人で話すのは、子どもの頃以来ね。
あなたはいつも、
私を助けようとしてくれていたわ。
どこへ行くにも、
守るためについてきてくれていたの、
知っていたのよ。
あなたが見ていてくれたから、
私はどこへでも行けた。
ね、私、この街を出て、
氷山を目指すの。
あそこに女王が眠っているらしいわ。
女王を目覚めさせて
この街を助けたいと思っているの。
街を救いたい、
それは、あなたも同じでしょう?
あなたなら、この街をまとめられるわ…。
ね、今まで考えたこと、
なかったでしょう?
でもね、あなたが、
この街のリーダーになるのよ。
あなたしかいないと、私は思ってる。
あなたなら、できるわ。
信じてる。
*
そう言うと、彼女は
静かに歌い始めた。
それは、この私だけに向けられた、
特別な歌だった。
〜
歩むものに 道ひらけ
まなこに見えずとも 真はあり
そなたの中に 種ありて
いまは眠れど 時 くれば芽吹かん
他が定むるを 力とせず
そは 己がうちより湧くものなり
されど忘るな
誇りとは 戦のためにあらず
ただ 己を欺かぬものなり
〜
気がつくと、
私は涙を流していた。
私のためだけに歌われた歌に、
肩が震え、腹の底から熱がわき上がった。
光に捨てられる深い恐怖と、
初めて自分の存在が認められ、重要な役割を与えられた歓喜だろうか。
私の頬を洗うように、
涙が溢れて止まらなかった。
彼女は、細く美しい指で
私の頬を伝う涙を拭うと、
その濡れた跡に、
微笑みながら
そっと優しく、口づけをした。
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