#4-2 深き森の亡霊②|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街
森の暗がりから、ゆらりと影が現れた。
それらは、3人を認識した途端、音もなくまっすぐに迫ってきた。
ミミが低く唸る。
「下がって!」
獅子の咆哮が響き、地鳴りのように森が揺れた。
「グワァオーーー!」
その威圧に、数体の影が弾けるように消し飛んだ。
だが――すべては止まらない。
ミミの腕に、炎が灯る。
彼女は跳ね、駆け、燃える軌跡を描いて、影を切り裂いた。
火の一撃に、黒い影が崩れる。
タトも鉈剣を抜き、迫る影を斬る。
だがそれは、霧を払うような、手応えのない感触だった。
「なんだ……!?倒しても、また立ち上がってくる!」
レイが分析し、叫ぶ。
「呪詛的な構造体か…?物理攻撃は意味がない!
ミミ!炎の陣を!」
ミミは歯を食いしばり、3人を中心に炎の円を描いた。
その瞬間、炎を越えようとした影たちは吹き飛び、辺りに沈黙が戻った。
しかし、しばらくすると同じ影がまた、木々の間からゆらりと現れた。
「人の形をしてるけど、人じゃない……」
タトは、息を呑んで立ちすくんだ。
「きりがない!火を灯して、このままヴァリスの街を目指そう」
レイが指示をだす。
3人は、闇の森をさまよい続けた。
ミミの炎だけが頼りだった。
迫りくる影を払い、かわしながら進む。
まるで終わらない夢の中にいるような、長い長い一夜だった。
やがて、空が白み始めた頃。
森が途切れ、開けた場所に出た。
昇ってきた朝日が辺りを広く照らし、黒い影たちは森を境にピタリと動きを止めた。
それらはまるで亡霊のように、こちらをじっと見つめていたが、日の光に触れると朝靄のようにスーッと消えていった。
三人はわけも分からぬまま、ごつごつした広場に座り込んだ。
*
不気味さと疲労でぐったりと視線を落とした先。
ふと、目を引くものがある。
崩れた石積み。
「これは――」
タトの言葉は、そこで止まった。
どの街も同じ設計だった。
だからこそ、分かる。
広場の形。崩れた落ちた壁と柱の配置、石階段。
それらは、街の中心、シンボルである教会塔と広場の──残骸だった。
「……自信の塔、ヴァリス……」
朝の光が答えるように、崩れた教会塔の跡を照らしていた。
石々には木の根が絡まり、草や苔に覆われていた。
3人は、一晩の疲れも忘れ、呆然と目の前の光景を見つめていた。
(つづく)
第2話 深き森の亡霊② - 追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜|不思議な六角柱の石が世界の謎へと導く冒険ファンタジー | Tales 物語・小説
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