見出し画像

双子の木〜サイドストーリー

本編はこちら

■希望の塔のふもと町 ルミナリー周辺の森
〜本編から10年ほど前


タトは、よく木に登った。

木の上から何が見えるのか、知りたかったのだ。


冬は登ってはいけない、と大人たちは言った。

枝は凍って脆く、氷山からの氷の粒が風に乗って降ってくる。

ひとたび風が吹けば、降りることもできなくなる。


それでもある冬、タトはこっそり登った。

それが過信だったのか、反抗心だったのか――今となっては分からない。



上に行くほど、小刀は幹に刺さらず、
木の皮は手でつかむたびに、ボロボロと剥がれ落ちた。

手はかじかみ、上にも下にも動けなくなって――あの時は、本当に怖ろしい思いをした。



夏には、真っ直ぐ伸びた幹に小刀を突き立て、何度も登った。

どこまで高く登れるか、タトはいつも上を目指した。

それを見た大人たちは、ロープの使い方を教えてくれた。




タトには、お気に入りの木があった。

双子のように並んだ、登りやすい二本の木。


疲れたらロープをハンモックのように渡して休んだり、

ブランコのようにぶら下がったり、布を張って秘密基地にしたりした。


タトはその木を『双子の木』と呼んでいた。





だが、いつしかタトが成長し、森で遊ばなくなった頃、

双子の木は太い一本の幹になっていた。


この森では、瘴気のせいで木の成長が早いという。

伐採を怠れば、街が飲み込まれてしまう。



そして、ある日、
誰も気づかぬうちにその木は、他の木とともに伐採された。



後に知る。

あの木が、もともと芯を二つ持つ木だったことを。

根元で別れ、まるで双子のように伸びていた幹は、成長するうちに一つに重なった。

気づかれることもなく、森とともに伐られたその木を、
もう、タトも覚えていないだろう。


けれど年輪は語る。

ひとりでいながら、ふたりであったことを。

そしてそれが、かつて森にいた、あの子どもと、どこか似ていたことを。


――その意味が明らかになるのは、ずっと後のこと。




(おわり)

いいなと思ったら応援しよう!

望月むう(ムーン)🐾|物語と思考|物語に浸りたい ここまで読んでくれてありがとう♡