見出し画像

#3-5 知識の塔|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜

←前のはなし   |   次のはなし→

第三章 
第5話 知識の塔



「やっと、ついたねぇ……」


ノーレムの街の入り口で、
ミミが隣りで腰を下ろし、マントを脱ぎながら、しっぽと髪をふるわせた。

タトもフードをとり、ゆっくりと空を見上げる。


「ノーレムって、こんなに広かったんだ……」


「人がいっぱいだね。なんかきれい! おいしそうな匂いがする!」

ミミは鼻をクンクンとさせた。


その街並みは、ルミナリーやフェリサリアにどこか似ていながらも、はるかに活気に満ちていた。

屋根瓦は白く、壁は漆喰で丁寧に塗り直され手入れが行き届いていた。水路は整備され、道の端には花の鉢が並んでいる。

荷を背負った職人、食品袋を手にした女性、会話を交わしながら行き交う人々の姿。

広場の方からは、香ばしい肉の匂いや果物の甘い香りが風に乗って漂ってきて、ミミは目を輝かせた。


そして――


途中から色の変わった高い尖塔を、タトは見やった。


それはまぎれもなく「塔」であり、この街の象徴なのだと、すぐにわかった。


「あれが、“知識の塔”…。ボクたち、本当に着いたんだ」

タトの声は少し震えていた。

けれどそれは、疲れではなく、胸を打つ感動と、武者震いだった。


(この街なら……) 


タトは、日差しに照らされて光る塔を見つめた。

その先端は、氷山を映すような白い光を放っている。


しばらく街を眺めていたふたりだったが、やがてゆっくりと歩き出し、教会の水場で体を丁寧に清めた。


そして、教会塔の扉の前に立った。

重い金属の装飾が、日を鈍く反射している。

その扉は、どこか見覚えがあり、遠く離れた故郷とのつながりを感じさせた。


ここまでの道のりを思い返すと、胸がいっぱいになる。

けれど、隣にミミがいることが何よりも心強く、タトの一歩を支えていた。


「タト、大丈夫……?」


「うん。行こう、ミミ」


タトはひとつ息を吐き、扉に手をかけた。


新しい出会いの、その入口を。





(つづく)


←前のはなし   |   次のはなし→

いいなと思ったら応援しよう!

望月むう(ムーン)🐾|物語と思考|物語に浸りたい ここまで読んでくれてありがとう♡

この記事が参加している募集