検査値に影響を与えるくすり1:ANRI(エンレスト)
皆様こんにちは
臨床検査技師と薬剤師のお隣連携をめざす精神科病院薬剤師メザシです!
今回は臨床検査値に影響を与える可能性のある薬を💊考察してみたいと思います
初回は今話題の心不全治療薬、エンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタン)のお話です
まず、エンレストは言わずと知れた心不全/高血圧症の薬です

心臓の負荷を🫀減らし、心保護作用があるお薬です

とても素晴らしいお薬ですが、この作用に基づく臨床検査値への影響が知られています
「腎機能・電解質」+「神経体液性因子」+「心不全マーカー」がポイントとなります
いちばん有名なのは…
1.心不全マーカー(BNPとNT-proBNP)への影響
ここが最も注意が必要なポイントです。
前回の症例ではBNPを使用してましたが…
エンレストを使うとこのBNPに影響があるのです💦
BNP:数値が上昇する
成分の一つ「サクビトリル」が、BNPを分解する酵素(ネプリライシン)を阻害するため、血中のBNP濃度は
薬の効果とは関係なく上昇
NT-proBNP:数値が低下する
NT-proBNPはネプリライシンによって分解されないため、薬の効果(心負荷の軽減)を正しく反映して低下します。
それぞれが心不全マーカーに対して逆の反応を示すのです
そのため、ANRI服用中の心不全管理には、BNPではなくNT-proBNPを用いるのが一般的です。

2.腎機能(Cr・eGFR)
導入初期
Crは上昇(軽度〜中等度)
eGFRは低下
尿素窒素 (BUN)は上昇
理由
バルサルタンによる輸出細動脈拡張
糸球体内圧低下
→ ACEi/ARBと同様の機序
ここで重要なのは…
「トレンド」です!
30%以内のCr上昇は許容範囲
進行性なら脱水・NSAIDs併用・腎動脈狭窄など鑑別
単発値ではなく、導入前後の変化率を評価することが大切です!
尿素窒素 (BUN)は上昇
理由
腎灌流圧の変化や利尿作用に伴い、上昇する場合あり
3.電解質
①カリウム(K)
カリウムは上昇する
理由
RAAS抑制によるアルドステロン低下
特にリスク高いのは
CKD
MRA併用例
高齢者
脱水 など
②Na(ナトリウム)
基本は大きく変動しないが注意が必要な場合があり
利尿薬調整や心不全改善による希釈性低Na改善
などで変動することあり
低Na改善は予後改善サインのことも
4.尿酸値
軽度低下することがある
理由
ARBの尿酸排泄促進作用のため
高尿酸血症の薬(尿酸降下薬)の使用を減らす効果が期待できる
5.その他の臨床検査値
肝機能(AST/ALT):上昇の報告あり
血糖値:上昇の可能性
CK(クレアチンキナーゼ):上昇の報告あり
🎯 一番のポイント
ARNIは
「検査値の意味を変える薬」
だからこそ、
検査値を出す人と
薬を調整する人が
並んでいないとも危険!!
つまり…
🎯薬剤師×臨床検査技師の連携が重要となる!
でも、これだけじゃ面白く無いので…
利尿剤を併用したパターンを考察してみました(よろしくAI!)
💊ARNIに利尿薬(特にループ利尿薬)を併用
ARNIに利尿薬(特にループ利尿薬)を併用すると、検査値の動きはかなり「心不全+RAAS阻害+体液量変化」が混ざるので、単純なパターンにならないのが特徴です
「体液量変化による変動」か「腎機能悪化」かの見極めがポイントになります
① 腎機能
🔹よくあるパターン
Cr軽度上昇 / eGFR低下
理由は2つの重なり
1️⃣ ARNI(RAAS抑制)
→ 輸出細動脈拡張
→ 糸球体内圧低下
2️⃣ 利尿薬
→ 循環血漿量低下
→ 腎血流低下
つまり
機能的腎機能低下(hemodynamic change)
ARNIも利尿剤も血圧を下げ、腎臓への血流(灌流圧)に影響を与えます
両剤の併用により脱水傾向になったり、腎臓の血管収縮・拡張のバランスが変わることで、数値が上がりやすくなります。特に飲み始めや増量時は注意が必要です

②K(カリウム)
ループ利尿剤(ラシックスなど)との併用: ループ利尿剤はカリウムを排泄し、ARNI(のバルサルタン成分)はカリウムを保持するため、互いに相殺しあって安定することがあります
カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトンなど)との併用: どちらもカリウムを上げる方向に働くため、高カリウム血症のリスクが著しく高まります
③ Na
心不全の低NaはADH上昇、水貯留による希釈性低Naのため利尿+心不全改善でNaは上昇する
ただし利尿過多の場合は低Na悪化となる
④ BNP / NT-proBNP
NT-proBNP:さらに低下する 利尿剤の併用で体液管理がスムーズに進むと、心臓への負担がより軽減されるため、NT-proBNPはより顕著に低下することが期待される
BNP: 前述の通り、ARNIの影響で分解が抑制されているため、心不全が改善していても数値は高いまま(あるいは上昇したまま)になることが多く、指標としては不向き
⑤脱水の指標(尿酸値、ヘマトクリット)
利尿作用が強まることで、体内の水分量が減り、相対的に以下の数値が上昇することがあります。
尿酸値 (UA):上昇しやすい 利尿剤によって尿酸の排泄が抑制され、数値が上がることがあります
ヘマトクリット (Ht) / ヘモグロビン (Hb):上昇 血液が濃縮されるため、見かけ上の数値が上がることがあります
🎯🎉注意すべきサイン
併用時は以下の点に注意し、数値の変化をモニタリングします
急激なクレアチニンの上昇(腎機能の悪化)
高カリウム血症(特にMRAと呼ばれるスピロノラクトン等との併用時)
過度な血圧低下(ふらつきや立ちくらみ)
「クレアチニンが急に上がった」「カリウムが高い」などの具体的な数値の変化があれば、それに合わせた対策(減量や塩分摂取の調整など)が必要となりますす
最後に!
ファンタスティック4での変化をAIに予測してもらいました!
心不全の “ファンタスティック4”
(ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬)を併用した場合、検査値は各薬剤の作用が打ち消し合ったり補強されたりして、ある程度「典型的な動き」が見えてきます
① Cr / eGFR(腎機能) 🧪
🔹初期
eGFR軽度低下 / Cr軽度上昇
理由
ARNI → 輸出細動脈拡張
SGLT2 → 輸入細動脈収縮(TGF)
→ 糸球体内圧低下
つまり
“hemodynamic dip”
よくある範囲
eGFR 10〜20%低下
🔹中長期
腎機能保護
糸球体過剰濾過改善
糖尿病性腎症進行抑制
👉 SGLT2の影響が強い
② K(カリウム) ⚡
ここがファンタスティック4の面白いところ
血清カリウム (K)は上昇傾向
ARNIとMRA(スピロノラクトン等)が共にカリウムを保持するため、高カリウム血症のリスクが最も高まります
一方で、SGLT2阻害薬にはわずかにカリウムを下げる報告もあり、わずかに相殺されます
👉 高Kリスクはあるが、単純なRAAS2剤より少ない
③ Na(ナトリウム) 💧
改善することが多い
理由
SGLT2 → 浸透圧利尿
ARNI → 心不全改善
利尿薬減量可能
結果
👉 希釈性低Naが改善
ただし
利尿薬多い
高齢
だと低Naもあり得る
④ BNP / NT-proBNP 🫀
▪️NT-proBNP:顕著な低下 4剤併用により心負荷が劇的に軽減されるため、数ヶ月かけて大幅に数値が下がることが予想されます。
▪️BNP:高止まり・解釈不能 前述の通り、ARNI(サクビトリル)がBNPの分解をブロックするため、心不全が改善していても数値は高いまま、あるいは上昇します
「BNP 200 / NT-proBNP 400」のように、乖離が激しくなるのがファンタスティック4使用時の典型的なパターンです
⑤体液管理・代謝系の変化
SGLT2阻害薬と利尿作用のある薬剤が重なるため、血液濃縮が起こります
尿酸値 (UA):低下または横ばい
SGLT2阻害薬には尿酸排泄促進作用があるため、ARNIやMRAによる上昇リスクを打ち消し、全体として低下させることが期待されます
▪️ヘマトクリット (Ht) / ヘモグロビン (Hb):上:昇
SGLT2阻害剤による造血刺激作用と、各薬剤の利尿作用による血液濃縮で、数値が上がります。これは心不全患者の予後改善に関連する良い兆候とされます
尿糖:陽性 (3+以上など)
SGLT2阻害薬の影響で、糖尿病がなくても尿糖は強陽性になります。これは異常ではありません
🧪 検査技師がコメントするとしたら
例えばこんな感じ。
「ARNI導入によりBNPは上昇する可能性があります。心不全評価にはNT-proBNPを推奨します。またCr上昇はSGLT2/RAAS阻害薬による糸球体内圧低下の可能性があります。」
(いや、初めからNT-proBNPで提出される気がしますが…)
こんな風に
臨床検査値🧪と薬💊は常に傍にある!
つまり…
🎯薬剤師×臨床検査技師の連携が重要となる!
臨床検査値の動きが複雑であるほど、薬剤師と臨床検査技師との連携がカギ🔑🗝となってくるのです!
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