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【第16回】アンマッチが起きない採用方法―ヘヴィメタルのバンドから学ぶ「人を採る」ということ―

一番避けたい採用アンマッチ…

「人が採れない」
障害福祉の現場では、今や珍しい話ではありません。

求人を出しても応募が来ない。
面接をしても採用できない。
ようやく採用できても、数か月で退職してしまう。
そして、また求人を出す。

この繰り返しです。
でも、私は採用について考るとき、もう一つの問題を重視しています。

それが・・・「アンマッチ」です。


その人が悪いのか?

採用した職員が、思ったように活躍してくれない。

チームに馴染まない。
仕事の進め方が合わない。
数か月で退職してしまう。

そんなとき、会社側はつい「本人の問題だった」と考えてしまいます。

もちろん、本当に本人に原因があるケースもあります。
しかし、すべてを本人の問題にしてしまうのは危険です。

なぜなら「採用する側が、そもそも合わない人を採用していなかったか?」という視点が抜けてしまうからです。

ここで、私はヘヴィ・メタル バンドを思い浮かべます。


バンドは「上手い人」を集めればいいのか?

例えば、あるバンドがメンバーを募集しているとします。

ギターが必要だから「ギターがめちゃくちゃ上手い人を採用しよう」となる。

一見、正しそうです。でも、本当にそれだけでいいでしょうか?

どれだけギターが上手くても、バンドの音楽性と合わない。
楽曲の方向性と合わない。
他のメンバーと音が噛み合わない。
本人がやりたい音楽と、バンドが目指している音楽が違う。

これでは、長続きしません。

つまり「能力が高い人=自分たちに合う人」ではない。
ここが非常に重要です。


「上手い人」ではなく「合う人」

ヘヴィメタルには、さまざまなスタイルがあります。

正統派メタル
スラッシュメタル
デスメタル
メタルコア
パワーメタル
そして、日本には日本独自のジャパニーズ・メタルがあります。

同じ「ヘヴィメタル」というカテゴリーでも、音は全然違います。
だからこそ「どんな音を出したいバンドなのか?」が先にある。

そのうえで「その音を一緒につくれるメンバーは誰なのか?」を考える。
採用も同じです。


福祉の採用も「どんな組織をつくりたいか」が先

採用活動になると、
「人が足りない」
 →「求人を出そう」
  →「応募が来た」
   →「条件が合えば採用しよう」
という流れになりがちです。

でも、本来は逆です。
まず「どんな組織をつくりたいのか?」を決める。

例えば…
・利用者主体の支援を大切にする
・チームで支援する
・職員同士が意見を言える
・ルールを守る
・変化を恐れない
・自分で考えて行動する
・専門性を高める
こうした組織の「音」を決める。

そのうえで「この音を一緒につくってくれる人はどんな人なのか?」を考える。

これが採用です。


採用で最初に作るべきもの

私は、採用活動を始める前に「求める人物像」を明確にすることが重要だと考えています。

ただし
「明るい人」
「優しい人」
「コミュニケーション能力が高い人」
では少し弱い。

もっと具体的にします。
例えば…
・私たちの組織に合う人
・利用者の変化に気づける
・チームで仕事ができる
・指示待ちではなく、自分で考えられる
・決められたルールを守れる
・分からないことを質問できる
・失敗したときに報告できる
・他人の意見を尊重できる
・新しいことに挑戦できる
ここまで明確にする。

逆に…
・合わない可能性が高い人
・自分のやり方を変えたくない
・チームより個人プレーを好む
・ルールより経験や勘を優先する
・問題を抱えても相談しない
・変化を極端に嫌う
こうした部分も明確にする。


「こんな人は向いていません」も書く

ここが、採用では意外と重要です。

求人広告では、「未経験歓迎!」「アットホームな職場!」
「やりがいがあります!」
と、良いことばかり書きたくなります。

でも、それだけではアンマッチを防げません。
むしろ「こんな仕事です」を正直に伝える。

例えばグループホームなら、
・夜勤があります
・記録業務があります
・利用者とのトラブル対応があります
・家族や関係機関との連携があります
・職員同士の情報共有が必要です
・急な予定変更が発生することがあります

こうした「リアル」を見せる。

そして「それでも、この仕事をやりたい」という人に応募してもらう。これが大切です。


バンドだって「加入してから違った」では遅い

バンド活動でも「この人なら一緒にやれそう」と思って加入してもらった。

ところが、活動を始めたら、
「俺はもっと激しい音楽がやりたい」
「いや、俺はポップな方向に行きたい」
「ライブよりレコーディングを重視したい」
となれば、当然ズレが生まれます。

問題は、加入した後に方向性を確認したこと。

本来は加入する前に「自分たちは何を目指しているのか」を共有しておく
必要があります。

組織もまったく同じです。


面接では「正解」を聞かない

面接で「あなたの長所は何ですか?」「なぜ当社を志望したのですか?」
という質問だけでは、その人の本質はなかなか見えません。

私は「この人は実際の現場でどう行動するのか?」を見る質問が必要だと
思っています。

例えば…
「利用者さんから強い言葉を言われたら、どう対応しますか?」
「自分の考えと上司の指示が違ったらどうしますか?」
「同僚がルールを守っていなかったらどうしますか?」
「忙しいときに予定外の仕事を頼まれたらどうしますか?」
「自分がミスをしたことに気づいたらどうしますか?」

こうした質問には、その人の価値観が出ます。


そして「会社も見られている」

ここを忘れてはいけません。

面接は、会社が応募者を見る場。
同時に、応募者が会社を見る場です。

「この会社は自分に合うのか?」
「ここで成長できるのか?」
「職員同士の関係はどうなのか?」
「本当にこの仕事を続けられるのか?」
応募者も見ています。

だからこそ、「何か質問はありますか?」だけで終わらせない。

むしろ「気になることは何でも聞いてください」と伝える。

給与でもいい。
休日でもいい。
夜勤でもいい。
人間関係でもいい。
残業でもいい。
聞きにくいことほど、聞いてもらう。

なぜなら、入社してから「思っていたのと違った」と辞められるより、入社前に「自分には合わない」と判断してもらう方が、お互いに幸せだからです。


「優秀な人」を採る必要はない

採用では、つい「優秀な人」を探してしまいます。

でも、本当に必要なのは、「自分たちの組織に合う人」です。
どれだけ能力が高くても、組織の方向性と合わなければ長続きしません。

ヘヴィメタルのバンドだって同じです。
超絶技巧のギタリストだからといって、どんなバンドにも合うわけではない。

大切なのは自分の音を出しながら、バンドの音もつくれること。
組織も同じです。

個人の能力だけを見るのではなく「この人は、私たちと一緒にどんな音を奏でてくれるのか?」
そこを見る。

採用で大切なのは、「優秀かどうか」ではなく「合うかどうか」。

私は、ここがアンマッチを防ぐ大きなポイントだと思っています。


採用は「メンバー選び」である

採用とは、空いているポジションを埋めることではありません。

これから一緒に組織をつくるメンバーを選ぶこと。
だからこそ、「人が足りないから誰か採ろう」ではなく、「どんな組織をつくりたいから、誰を迎えるのか?」

この順番が大切です。


アンマッチを防ぐ5つのポイント

難しく考える必要はありません。

① 自分たちの「音」を決める

どんな組織をつくりたいのか。まず、ここを明確にする。

② 「合う人」を言語化する

「優しい人」ではなく、「自分で考えて動ける」「チームで仕事ができる」など、具体的な行動まで落とし込む。

③ リアルを見せる

良いことだけを伝えない。
大変なことも、正直に伝える。
「それでも働きたい」という人と出会うためです。

④ 面接で「行動」を見る

志望動機だけではなく、「こういう状況なら、あなたはどうしますか?」と聞いてみる。
その人の価値観や行動特性が見えてきます。

⑤ 最後は「お互いに選ぶ」

会社が応募者を選ぶだけではありません。
応募者も会社を選んでいます。

だからこそ「本当にここで働きたいですか?」を、お互いに確認する。


「採用数」だけを追わない

採用では「今月3人採用する」という目標を立てがちです。

でも、本当に見るべきなのはその先。
3か月後、6か月後、1年後に残っているか。

採用数が多くても、早期退職が続いているなら、「採用できている」とは言えません。

見るべきなのは、採用数ではなく、定着まで含めた採用の質。
ここです。


人手不足だからこそ、妥協しない

「人が足りないから、とりあえず採用する」
この気持ちは、現場を預かる側ならよく分かります。

でも、一人の採用ミスが、既存職員の負担を増やし、チームの雰囲気を変え、さらに退職者を生むことがあります。

だからこそ、人手不足のときほど、誰を入れるかが重要です。


バンドは「音」でつながる

ヘヴィメタルのバンドを見ていると、メンバーはみんな違います。
ギターも違う。
ベースも違う。
ドラムも違う。
個性も違う。

でも、目指す音が同じだから、一つのバンドになる。

組織も同じです。
全員が同じ人間である必要はありません。
むしろ、違うからこそ強い。

大切なのは、違う個性を、一つの方向に向けられること。


採用とは「未来の音」をつくること

新しい人が一人入れば、組織の音は変わります。
だから、「誰でもいい」ではいけない。

自分たちがこれから奏でたい音に合う人を探す。
そして、その人自身にも、「このバンドで音を出したい」
と思ってもらう。

これが理想の採用です。


最後に

採用は、欠員を埋める作業ではありません。
未来の組織をつくる仲間を選ぶ仕事です。

「優秀だから採る」のではない。
「人が足りないから採る」のでもない。
「この人と一緒に、どんな組織をつくっていけるのか?」
そこを見る。

ヘヴィメタルのバンドも同じです。
ただ楽器が上手い人を集めても、良いバンドにはなりません。

違う個性が、それぞれの音を出しながら、一つの音楽をつくる。
組織も同じ。

採用とは、人を集めることではない。未来の音をつくる仲間を選ぶこと。

そして、「思っていたのと違った」を、お互いに減らすこと。

それが、アンマッチが起きない採用につながるのだと思います。

今日も、自分たちらしい音を。

LOUD & PROUD🤘


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