ふつう
午前5時。外で何かが唸っている。厚着して外に出る。目の前の駐車場で、不思議な機械が雪を噴き出している。その機械は、おじいさんが運転している。朝から大変そう。しかし、私は知っている。ああいうのは、楽しいのだ。いくら渋い顔をしたところでだめだ。楽しいに決まっている。
歩道と車道の間に雪の壁。どこまでも白い道の先にぼんやりと赤い空。角を曲がると、その先にローソンが青白く光る。まだ夢の中にいるような景色。ガラナとビールを買って、ホテルに戻る。レジ袋の重さの分だけ、現実。
ネトフリでウェンズデーの第2シーズンを見始める。とてもいい。このパパのようにありたい。のけものであること。醜さを誇ること。ハッピーであること。
午前11時、人と会うために出かける。数少ない友人。
彼女はふわふわの心臓。脈圧が弱く、心臓がギュッとしないそう。うねる血管のなかを微弱に流れる血液を想う。温かくて静かなプール。
細い食事。酸味が苦手とは知らなかった。
喫煙所。ハイライトメンソール。
地図の話、建築の専門書の話、ルノワールの話、身内の話、ちんちんぶらぶらソーセージの話。
日没。本屋のスターバックス。
駅で別れる。その前にもう一度喫煙所。
そして別れる。
前回の北海道は、彼女の慰めで幾分ラクになった。
今回と同じように、たくさん歩いた。
今日は、普通に会えた。
夕食はスーパーで寿司を買って、ホテルで済ませた。妻と息子と通話。絵本の読み聞かせを一緒に聞く。それはパンツじゃなくて、まわしだよ。
きっとまた、もうすぐ、眠る。
普通に、眠る。
(了)
