ステーキ屋なのにサラダしか食べない男
「それじゃこれからサラダはどこで食べればいいんだよ!」
店内に突然声が響いた。
店員のすぐそばに立つその男性に周囲の目が集まった。
40代くらいの痩せ型でいつも一人ご飯で独身ぽかった。
さっきからサラダだけを食べていた。ステーキ屋なのに。
どうやらこの店が無くなるらしい。
レジの横のご案内に大元の会社が無くなると書いてあった。
私はそのとき、山盛りのサラダを食べていた。
駐車場に車を止めて降りたとき、ぷわぁ〜んとお肉の脂身が焼けている匂いが漂ってきたのを思い出す。
店に入るとお肉の焼けるじゅぅじゅぅという音がしていた。
大学生や家族連れ、一人で来ている男性客もいた。
そこのステーキ屋はオリジナルのステーキソースがあり、ほとんどの人がそのソースを選ぶほど美味しかった。
この店には人気のサラダバーがあった。
丼くらいあるボウルに好きな野菜を入れ好きなドレッシングをかける。私は決まって青じそだった。
元はお肉屋さんだったらしくお肉のたっぷり入ったカレーも人気だった。
私はサーロインの200gとサラダバー、ドリンクバーのセットを頼んでいた。
確かにこの店はいい店だった。
あの男性もこの店が好きでだいぶ通っていたのかもしれない。
今ではそこは更地になっている。
あの時、声をあげていたあの人は今ではどこでサラダを食べているのだろう。
