夏と、花火と、風船と、
花火大会の時期がきた。
あれは、私が幼稚園の頃。
大阪で万博が開かれていた年。
兄と父は、万博を見るため大阪へ。
私と母は、お留守番。
だけど、あの夜、母は私を花火大会へ連れて行ってくれた。
町にはまだ、路面電車が走っていた。
まだ小さな私は、夜空を彩る花火より、
夜空に浮かぶ赤い風船に、心惹かれた。
帰りのぎゅうぎゅうつめの路面電車の中で、しっかりと赤い風船を、握りしめていたことを、覚えている。
家に着いても、天井にくっつく風船の、糸を引っ張ったり、離したり。
家の中だと、風船は、逃げないから。
翌朝、風船と遊びたくて、天井を見た。
けど、そこには、いない。
赤い風船は、足元に、いた。
すごく悲しかった。
泣いて母に抱きついたことを、思い出す。
今なら、足元にいる理由もわかる。
あの頃の私は、悲しかったのである。
夏、花火大会の知らせを聞くと、懐かしさとともに、切なさがよぎる。
花火の夜空に、赤い風船は、よく似合う。
笑う門には福来る
